公開シンポジウム報告
研究所行事紹介
掛山 正心
国立環境研究所2004年度公開シンポジウムが,さる6月23日(東京メルパルクホール:港区芝公園)および30日(ぱるるプラザ京都:京都市下京区東塩小路町)に開催されました。国立環境研究所の研究内容と成果を幅広く社会に知って頂くことを目的としたこの行事も,これで第7回目を迎えました。4回目以降,所外の著名人を招へいせず,あえて国環研の研究者を講演者として自前で行ってきました。特に今年は研究所設立30周年にあたります。そこでシンポジウムのメインテーマを「国立環境研究所の30年」として,所内各研究分野における30年前との対比や変化・推移,そして未来についてのストーリーを共通テーマに理事長の基調講演を含む7つの講演,19のポスター発表を行いました。東京会場では921名,京都会場では222名の方の参加を得ることができました(関係者を除いた集計)。京都開催時には静岡県内の大雨で新幹線がストップしてしまうというトラブルがありましたが,関西地方は天気に恵まれ,とどこおりなく開催することができました。
今回のシンポジウムのサブテーマである「天・地・人と向きあって」には,自然から人事にいたるまであらゆるものに向きあうというスタンスをあらわしており,環境研究所が30年間行ってきたことであると同時に,「これからも取り組んでいく」という意味も込められています。わかりやすく,かつ研究の第一線の内容であり,様々なバックグラウンドをもった聴衆にできるだけ満足していただけることがねらいです。講演発表はまず「環境研究-これから何が問題か-」と題した理事長の基調講演で始まりました。そして霞ヶ浦の長期モニタリング,大気汚染の航空機観測,ごみ処理と循環型社会,バイオアッセイ法開発,地球温暖化研究,黄砂研究と,環境研究所の研究テーマの広がりも意識させる講演が続きました。
昼からの2時間は19題のポスターセッションを行い,研究者本人が直接説明・回答しました。また本年度も東京会場だけでなく京都会場にもポスター発表者が参加し,終始活発な質疑応答が行われました。筆者もポスター発表者の一人として参加しましたが,中高生から年配の方までまさに老若男女という言葉にふさわしい,本当にたくさんの色々な方と学術的なお話しをすることができたのは得難い経験であり,非常に刺激になりました。
東京・京都両会場でたくさんのアンケート回答をいただき,その大半がシンポジウムの開催と内容に好意的なご意見でした。発表者もすべて研究所スタッフでしたが,運営についても研究系・事務系の全部門からスタッフが集結し,また司会も所内の若手を起用するなど,運営についても自分たちの発表を自分たちで行うというスタンスが,研究所としての一体感を強く意識させ,シンポジウムを成功させた最大の理由だと思う次第です。公開シンポジウムには毎回1,000人規模の参加者があります。研究所のシンポジウムで,これだけ多くの方に参加いただけるものは国内のみならず国外でも,あまり例がありません。私たちの研究所の仕事とその成果に対して,自信を持ち,今後もアピールをしていくことが大事と考えています。
これまでと同様,講演およびポスターに用いた図表,ならびにアンケートで寄せられた質問に対する回答を,国立環境研究所のホームページに掲載しています。
執筆者プロフィール:
環境庁では環境政策の企画・立案を,新潟県では公害行政の現場を,世界銀行では開発援助の実務を経験しました。 15年10月から現職につきました。読書は上から4番目の趣味です。