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2020年3月27日

「環境カフェ」取り組みの広がり

研究をめぐって

2015年より始めた「環境カフェ」の開催は、4年後には東京やつくばなど国内はもとより、
アメリカやイギリス、ロシアなど海外でも広がっています。
学生が主体となって取り組んでおり、今後の継続が望まれます。

 

世界では

 アメリカのCentre Collegeの留学生(鈴嶋さん)らにより、学内のJapanese ClubやResidence Hallの学生同士の交流を目的とする集会において、2019年2月より「環境」「里山」「もったいない」「片付け」などのテーマで、日本人留学生有志によりKankyo Caféが開催されています。アメリカ以外にもアジアやロシア、ヨーロッパなどからの留学生も参加することで、多様な価値観を共有する機会となっています。

 さらに、同年9月には、それぞれ「地球の未来─文化と文明を考える」と「カーソンの『沈黙の春』を通してSDGsを考える」をテーマに開催されました(写真2)。日本の縄文文化と現代の科学文明の比較に始まり、田中正造の「真の文明」の言説と『沈黙の春』の「べつの道」の言説からSDGsの持続可能性との関連について、参加者の理解が深まるとともに共感が得られました。開催後のアンケートでは、同様な対話イベントの継続が望まれました。

 また、「『センス・オブ・ワンダー』へのまなざし─レイチェル・カーソンの感性」をテーマにCentre CollegeのコミュニティガーデンでGarden clubの学生らと、Central Kentucky Wildlife Refugeの自然保護区敷地内でビジターセンターの職員らとともにそれぞれKankyo Caféが開催されました(写真2)。自然保護区では、今後はビジターを対象に同様なテーマでの開催が計画されています。

 2019年3月には、イギリスのエディンバラ大学の留学生(謝さん)らにより、学内で「地球の未来─『環境』を考える」をテーマにKankyo Caféが開催されました。学生だけでなく、環境に関わる市民や教授を招いてこの活動を続けることが重要であり、さまざまな文化や教育の背景からのさまざまな意見を共有できることで、教育研究に貢献するものと考えられました。

 また、2019年8月には、ロシアのモスクワ国際関係大学において、日露学生会議の田中さんはじめ日本とロシアの学生9名により、SDGsのゴール13、14、15など環境に関連するテーマでKankyo Caféが開催されました。開催後には、SDGsへの関心の有無にかかわらず、それを日常生活に結びつけることができたことで高く評価されました。なお、その前年の2018年8月には、国立環境研究所で日露学生会議の学生らにより、「『環境』とSDGsの関わり─安全確保社会に向けて」をテーマにKankyo Caféが開催されました。

アメリカでのkankyo Cafeの開催写真
写真2 アメリカでのKankyo Caféの開催
「カーソンの『沈黙の春』を通してSDGsを考える」をテーマにCentre Collegeの学生らによりResidence Hall(左上)でKankyo Caféが開催されました(2019年9月19日)。
左下:「地球の未来─文化と文明を考える」をテーマにCentre CollegeのJapanese Clubの学生らによりKankyo Caféが開催されました(2019年9月20日)。
右下:「センス・オブ・ワンダーへのまなざし─レイチェル・カーソンの感性」をテーマにCentral Kentucky Wildlife Refugeの自然保護区敷地内でKankyo Caféが開催されました(2019年9月21日)。

日本では

 「自然共生」や「生物多様性」、「SDGs」、「環境倫理」、「センス・オブ・ワンダー」などに関連するテーマで東京やつくばをはじめ、横浜や京都など各地の大学キャンパスや公共のカフェにおいて、2015年4月から2019年3月までに合計72回、延べ396人(平均5.5人/回)の参加で開催し、それらの成果は日本環境教育学会の自主課題研究などで報告されています。なお、2017年10月からはKankyo Caféを筑波大学Biological Scienceの謝さんはじめ留学生を対象に英語で開催しています。開催時には、それぞれの国(中国やアメリカ、インド、マレーシア、バングラデシュなど)の意識や文化の違いなどがよく反映されており、環境や環境問題に対する認識や理解が深まるとともに共感の場になっています。

 2017年度から開設された九大環境コミュニケーションサークル(代表:田中さん)では、大学生主体による「環境カフェ」が開催され、勉強会なども行われています(写真3)。また、同サークルの協力により「環境カフェ」を取りいれた総合科目「水から学ぶSDGs」の講義と高校生や中学生への出前授業が行われています。同サークルは、「環境カフェ」の実施による学会発表やNGO(国際学生会議所UNISC International)と連携して国(日本)と国連に向けて海洋プラスチックごみ排出抑制のための政策を提言しています。また、2019年11月に北九州市で開催した第21回日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM21)のユースフォーラムでは、「環境カフェ」の手法(環境対話)は若者が個人で環境保全活動をする上で有効であると報告され、三カ国の大臣らに向けた政策提言に環境対話が盛り込まれました。

日本での環境カフェの開催写真
写真3 日本での「環境カフェ」の開催
左上:「環境カフェ─テーマと展望」をテーマに「第6回環境カフェ本郷」(東京大学赤門総合研究棟、2017年4月8日)を開催しました(右奥、鈴嶋さん)。
右上:九大環境コミュニケーションサークルで、「『自然共生を考える』─生物多様性の主流化」をテーマに開催しました(九州大学中央図書館、2017年6月24日)(右手前、田中さん)。
左下:「『環境』とSDGsのかかわり」をテーマに「第7回環境カフェつくば」(つくば総合インフォメーションセンター交流サロン、2018年6月23日)を開催しました。
右下:インターンシップ生(左奥、藤川さん)とともに「『環境』とSDGsのかかわり─『自然共生を考える』」をテーマに国立環境研究所内で「環境カフェ」を開催しました(2019年8月27日)。

国立環境研究所では

 2018年と2019年4月の「春の環境講座」において、複数の研究者が対応して「環境カフェ」を開催しました。2018年は「サトウキビ」「森林破壊」「生殖」「環境問題」を問いかけ、研究者が専門的な内容ばかりでなく自身の経験を交えて対話し、参加者の理解を深めることができました。2019年は「環境とSDGsのかかわり」をテーマに、研究者の環境研究にかかわる「問いかけ」について、SDGsと関連づけながら、考えたことや、感じたことなどをたずねあい、グループ内でじっくり話し合いました。

 一方、2019年8月に5日間高校生を対象にして実施されたインターンシップでは、1.研究者と市民の社会対話の必要性など「環境カフェ」の理論 2.「環境カフェ」実践のための演習(スライド作成など) 3.「環境カフェ」の実践(自然共生や生物多様性、SDGsなどのキーワードに関連するテーマ)の内容で行い、最終日には「『環境』とSDGsのかかわり─『循環』を考える」をテーマにインターンシップ生(藤川真智子さん)による「環境カフェ」を研究所内で開催しました。