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バイオアッセイによって環境をはかる
- 持続可能な生態系を目指して

環境儀 NO.38

鑪迫典久
 国内で使用される化学物質は年々増えており、個別に管理することが難しくなっています。排水等の環境水の生態影響の大きさを、生物を使って直接測定し、改善目標と手法を提案して、市民が安心して暮らせる環境づくりに貢献したいと考えています。

 私たちの周りには、3000万種を超える膨大な化学物質が存在しており、人々の生活向上に役立つ反面で、健康に有害な影響をおよぼすものもあります。有害な汚染物質については「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」「農薬取締法」「ダイオキシン類対策特別措置法」などによって、規制措置が講じられていますが、新しく輸入や製造される化学物質の量は飛躍的に増大しています。さらに、1990年代になって、野生動物種の性器異常や生殖異常を引き起こす、内分泌かく乱化学物質の存在が明らかになりました。環境省の生物試験では、ノニフェノール、オクチルフェノール、ビスフェノール、DDTがメダカに対して内分泌かく乱作用があると推察されていますが、原因物質の究明、検査方法の妥当性、現象と原因物質の因果関係、ヒト健康への影響など、科学的に解明しなければならない問題が山積しています。

 国立環境研究所では、2002年、化審法に水生生物試験が導入されたことに前後して、「環境ホルモンプロジェクト」の中で、メダカを用いた内分泌かく乱物質の評価法、ミジンコを用いた無脊椎動物の内分泌かく乱作用検出法などの研究を行っています。さらに、近年では、未同定および複合汚染物質の検出に、米国で既に採用されている、事業所排水等の環境に放流される水をそのままバイオアッセイで検査する方法(WET)を日本でも導入するための基準作りにも取り組んでいます。

 今回はこの生物を使った環境リスク問題に最初から手がけられてる鑪迫典久さんに現状と課題、これからの見通しなどについておうかがいしました。