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研究者に聞く!!

Interview

田村憲治の写真
田村憲治
環境健康研究領域 主任研究員

 中国はグローバル経済に多大な影響を持つような目覚ましい経済発展を遂げてきましたが、今、資源や環境保全にも考慮した発展を目指す「環境経済」システムの構築に取り組んでいます。『中国における都市大気汚染による健康影響と予防対策に関する国際共同研究』を推進した田村さんに、中国における大気汚染の状況や健康被害について、お聞きしました。

児童の肺機能への影響はどうなっているか
今なお深刻な中国の石炭燃料による大気汚染

1: 集中暖房が行われている地域を調査対象に

  • Q: まず最初に田村さんが環境の健康影響の研究に入られたきっかけをお聞かせください。
    田村: そもそもは人の健康に寄与できる仕事をしたいという思いがありました。また学生時代、実験は苦手だったけれど外に出てデータを集めるのが好きでしたので、工場の健康管理とか農作業に伴う皮膚アレルギーをテーマに、フィールド調査をしていました。それでこの研究を開始したわけですが、国立環境研究所に入所してもう20年以上経ってしまいました。これまでは農薬による健康被害や沿道の大気汚染影響など、ずっとフィールド調査研究をしてきました。その途中で、3年半ほど熊本県の水俣市にある国立水俣病総合研究センターに籍を置きましたが、そこでも患者さんや様々な立場の関係者の方々から聞き取り調査をずいぶん行いました。海外での調査ということでは、この研究の前に中国でのフッ素汚染調査と、タイのバンコクの大気汚染をテーマに、交通警察官の個人曝露調査の経験があります。
  • Q: この研究を始められた理由はなんでしょうか。
    田村: 国立環境研究所では国際共同研究を推進しており、中国でも様々なテーマで現在も研究が続けられています。私が以前に参加したフッ素中毒の共同研究は、高濃度のフッ素を含む石炭を室内で燃やしている四川省や貴州省の農山村がフィールドでした。中国には大気汚染が著しくて衛星写真に撮れない都市があるなど、都市の大気汚染レベルはひどいと聞いていましたので、研究者としてはその健康影響にはずっと関心を持っていました。

    それでこの研究を開始したわけですが、フッ素汚染調査の時とはフィールドも方法も全く違いますので、中国側の共同研究代表者も急いで探すことになりました。さいわい、筑波大学に留学のご経験があり、国立環境研究所での研究経験もある中国医科大学の孫貴範先生が瀋陽にいらしたので、その先生にお願いすることにしました。
  • Q: 一口に「中国の大気汚染」といっても、広大な国土で、地域によっても違いが大きいと思いますが、今回のテーマはどのような観点で取り組まれたのですか。
    田村: 中国の都市の大気汚染といった場合、エリアによって経済発展の状況がかなり異なり、また沿海部と内陸部でも社会基盤の整備の状況が異なっています。近年は自動車排気ガスの影響も関心が出ていますが、同様に現在でも、国民生活に密着な冬場の集中暖房のボイラーから排出される粉じんが、問題になっています。この粉じんによる大気汚染を主な研究テーマにし、とくに大気中の微小粒子が都市生活者や子供の健康にどのような影響を与えているのかを調査研究しました。冬場の寒気が厳しい中国の東北地方では、1年のうち5カ月ぐらいは暖房を使用する生活を強いられていますので、生活者の健康に与える影響も少なからずあるのではないかと考えました。
テレビ塔から観た降雪後の瀋陽市街地の写真
テレビ塔から観た降雪後の瀋陽市街地。遠方にうっすら大気汚染の層が確認できる(2006年2月撮影)。
  • Q: 調査研究の対象地域はどのように選定されていったのですか。
    田村: 中国の東北地方といっても広い面積がありますので、冬場に集中暖房を使用する瀋陽市、撫順市、鉄嶺市の3都市内に大気汚染の高濃度地域、中濃度地域、低濃度地域と想定される3地域を選定し、1年間に4期ほど粒子の大きさを分けた大気粉じん(PM10、PM2.5など。コラム参照)のサンプリングを1都市ずつ4年間実施しました。瀋陽市はかつての重工業都市ですが、現在は商業都市に生まれ変わっています。鉄嶺市はごく一般的な都市として選定しました。また、撫順市は広大な露天掘り炭坑で有名で、対象とした望花区には石油化学の工場などもあり、工場ばい煙による影響も考えられる都市として選定したものです。
  • Q: 中国の都市における集中暖房ってどんな様子なのですか。
    田村: 今回調査対象になった瀋陽市などは東北地方のなかでは南に位置しているのですが、それでも冬場の最低気温はマイナス25℃、最高気温でもマイナス10℃を下回る気象条件になります。一般の住宅では基本的に電気エネルギーの暖房はありませんから、石炭を使う集中暖房のボイラーが唯一の暖房手段ということになります。

    ラフなイメージを持っていただくとしたら、6階から9階建ての大規模な団地群のなかに大きな煙突のボイラーが設置されていて、石炭をエネルギー源とする集中暖房が行われています。これによって、熱湯か蒸気を団地の各戸に供給して冬場の暖をとるというのが、ごく一般的な中国の都市における暖房風景です。暖房に使う石炭には硫黄分が多く、独特の臭いが漂っているような状況です。
  • Q: 日本の温泉街のような感じですか?
    田村: 残念ながらずいぶん違います(笑)。
調査対象の3都市の地図
調査対象の3都市

2: 室内、室外を問わず高濃度だった粉じん

  • Q: 具体的な調査方法を教えてください。
    田村: まず室内外の粉じん濃度や個人曝露調査に関しては、瀋陽の中国医科大学の公共衛生学院と、日本の保健所に相当する疾病予防控制中心(CDC)という機関の協力を得て、各都市で調査対象地域とした3地域でそれぞれ住民10人=10戸を選定しました。室内でタバコを吸う人がいると大気汚染どころの粉塵濃度ではなくなってしまいますので、本人と同居家族に喫煙者がいないことが条件です。大気中の浮遊粒子は粒径によって有害となる成分が異なりますし、呼吸器への沈着部位や影響も異なります。

    そこで、特注した粒径別捕集器を日本から持ち込み、各戸ごとに3台ずつ配置しました。室内の測定では寝室や居間などに測定器を設置し、屋外はベランダなどに測定器を置いて空気の吸引口を外に出します。3台目は、住民が実際に吸っている空気に出来るだけ近い空気を採取するために、携帯用のケースに入れました。この調査を個人曝露調査といいますが、外出時なども常に携行してもらって、粉じんの粒子を捕集していったのです(写真1〜5)。

     調査は暖房期と非暖房期にそれぞれの家について7日間ずつ行いました。フィルターは基本的に24時間ごとに交換しなければなりませんので、毎日午前中にCDCのスタッフが、調査協力してくれた住戸を訪問して、フィルターを交換しました。フィルターは、捕集の前後に室温と湿度を一定に管理している天秤室に24時間以上放置し、秤量には最小表示単位が0.1μgの電子天秤を使用しました。このような計測施設は瀋陽にはありませんので、捕集したフィルターの計測や分析はすべて国立環境研究所で行いました。
個人曝露調査の協力者にサンプラーの取り付け野写真 (クリックで拡大画像がポップアップします)
写真1
個人曝露調査の協力者にサンプラーの取り付け
窓際においた防音箱の写真 (クリックで拡大画像がポップアップします)
写真2
窓際においた防音箱には吸引ポンプが入っており、チューブの先には捕集フィルターの入ったホルダーに繋がる
窓の内側に置かれたフィルター・ホルダーの写真 (クリックで拡大画像がポップアップします)
写真3
窓の内側に置かれたフィルター・ホルダー
窓の隙間から外に垂らしたフィルター・ホルダーの写真 (クリックで拡大画像がポップアップします)
写真4
窓の隙間から外に垂らしたフィルター・ホルダー
調査対象とした典型な住宅団地の写真 (クリックで拡大画像がポップアップします)
写真5
調査対象とした典型な住宅団地(ベランダ部分をガラス窓で覆っている)
  • Q: 捕集器はどのような機器なのですか。
    田村: 小さな吸引ポンプの先に捕集ろ紙を入れたホルダーを付けたものですが、ポンプの音を小さくするために工具箱のようなケースに入れて使いました。重量は全部あわせて1.5kgぐらいでしょうか。室内と屋外の機器は家庭用電源で稼働させて、個人曝露用は家の中でもしょっちゅう移動させますので電池で稼働させます。個人で携帯する場合はケースごとでは重くなるので、捕集器だけ携帯ということを考えましたが、初回の瀋陽において騒音が原因で個人曝露調査を拒否されてしまったため、ウエストポーチのなかにウレタンフォームを詰めてポンプの音を小さくするようにしました。
  • Q: 調査は順調に進行したのですか。
    田村: 中国側の研究パートナーの協力で、おおむね順調に進行しましたが、ひとつだけ想定外の出来事が起こりました。中国はあまり電気事情がよくないとは聞いていましたが、停電が頻繁にあったのです。捕集器には一応非常用の電池がセットされているので停電時にはすぐに電池に切り替わるのですが、電池寿命はわずか12時間、途中で運転が停止してしまうケースが続出して困ったこともありました。

  • Q: 捕集したフィルターの分析結果は、どのようなものだったのですか。
    田村: 3都市の調査結果を見るかぎりでは、いずれの都市においても暖房期の屋外濃度は非常に高濃度になっていることが判明しました。現在、中国の環境保護総局が公表している高濃度大気汚染の実態が、このような石炭燃焼のボイラーに頼る都市住民の住宅内の環境でも実際に起きているんだということがわかりました。非常に厳しい寒さですから家の窓は閉め切っているのですが、それなのに屋外と室内の濃度にそれほど顕著な差がないのは意外でしたね。
  • Q: どうしてだとお考えですか。
    田村: 外気は、窓を閉めていても小さな隙間があれば入ってきます。微小な粒子は長い時間ただよっているのでこのような結果になったのではないでしょうか。
  • Q: このような高濃度の粉じんによる大気汚染は、実際、健康にどのような影響を与えると考えられているのですか。
    田村: 大気汚染による健康影響としては、喘息(ぜんそく)や気管支炎がまずあげられます。四日市や川崎などの工場地帯でたいへん問題になりました。近年、肺ガンの死亡率が世界の主要国で増加傾向にありますが、その理由として喫煙とともに、粉じんによる大気汚染も重要な要因として考えられています。
  • Q: 中国の都市住民にも粉じんによる肺ガンの増加が心配されるわけですね。
    大気中には数万種類の化合物が存在しますが、そのなかには主に石炭や石油などの化石燃料の燃焼や有機物の熱分解などによって生じ、発ガン性物質と認められているものがいくつもあります。粉じんにはこのような物質が含まれていることが多いのです。
  • Q: 各戸別調査の他にはどのような調査が行われたのでしょうか。
    田村: 大気汚染が児童の健康に与える影響を調べるために、同じ3都市の高濃度地域にある小学校、中濃度地域にある小学校、低濃度地域にある小学校の3校の協力を得て、同一児童を対象に冬の暖房期を含めて年間4回の肺機能検査を実施しました。対象生徒は7歳から13歳の男女でした。
中国側研究スタッフによる小学校に設置したサンプラーの交換作業の様子 (クリックで拡大画像がポップアップします)
写真6
中国側研究スタッフによる小学校に設置したサンプラーの交換作業
肺機能検査前の児童へのオリエンテーションの様子 (クリックで拡大画像がポップアップします)
写真7
肺機能検査前の児童へのオリエンテーション
肺機能検査前の児童へのオリエンテーションの様子 その2 (クリックで拡大画像がポップアップします)
  • Q: 児童への健康被害はどうだったのですか。
    田村: 調査した3都市では、石炭暖房をすることで冬場の大気汚染濃度が高くなり、それに応じて児童の肺機能が低下していた実態が明らかになりました。また、粉じんの粒径が小さいほど肺機能に与える影響が大きいようです。

    現状で観察された粉じんの影響はまだまだ小さいレベルですが、これらの影響が短期的な要因によるものなのか、それとも長期的な要因によるものなのかは、これから継続的な調査分析を経てみないと結論は出せません。深刻な影響が心配される児童の成長に与える健康被害は、さらに長期的にわたるフォローアップが必要だと考えています。
児童たちの肺機能検査の様子
肺機能検査は児童たちにとって初めての体験。真剣そのものです。

3: 地域の差よりも季節の違いが大きい大気汚染濃度

  • Q: 一般環境大気の汚染の状況は、いかがだったのでしょうか。
    田村: 都市における大気汚染は、都市ごとに先ほど申し上げた3地域内の小学校に粒径別に粉じんを捕集する測定器を設置して、季節ごとに2、3週間の測定を実施しました。
  • Q: 測定結果はどうだったのですか。
    田村: 瀋陽市、鉄嶺市、撫順市の3市においては、いずれもの測定地点で比較的粗大な粒子の濃度が高いという結果になりました(図1)。当初、各都市における濃度には差があると思われていましたが、特に暖房期ではどの地域においても粉じん濃度が増加するので、地域による差はなくなっていました。また、非暖房期であっても、瀋陽市や撫順市では粗大粒子濃度が特に高くなる日があり、これは黄砂の飛散が原因だと確認されました。黄砂については本誌No.8でもとりあげており、国立環境研究所のホームページで参照できます。さらに撫順市では、工場から排出されるばい煙の影響も確認されました。
  • Q: 最後に中国における大気汚染の状況をまとめてください。
    田村: 中国東北地方の3都市における調査結果は、いずれの都市においても高濃度の大気汚染が確認されました。この高濃度汚染は屋外環境だけではなく、地域住民の室内濃度と個人曝露に反映しており、とくに冬場の曝露が高くなっています。

    児童においても、年間4回行った継続的な肺機能検査では、わずかではありますが、暖房期に肺呼吸機能の低下が観察されています。さらに今後は石炭燃焼の粉じんだけではなく、急増している自動車からの排気ガスの影響も心配されますので、大気環境の改善を推進する必要性は、年々高まっていると考えられます。

コラム

  • 日本の大気汚染と中国
    現代中国の大気汚染は60年代の日本に匹敵
     日本の大気汚染は、戦後の急速な工業化が進められた1960年代が全国的なピークでした。大都市の上空はスモッグで覆われ、四日市の工業地帯など重化学コンビナートではばい煙や排ガスを避けるために、子供たちはマスクをして登校しました。現在、日本の二酸化硫黄の環境基準は日平均濃度で0.04ppm(年平均濃度で約0.02ppmに相当するとされる)と決められていますが、60年代の四日市や川崎市では最高で約0.08〜0.12ppmに達し、当時の大気汚染が基準を大きく超えていたことがわかります。

     日本の大気汚染は1970年代に入ってから、工場における脱硫装置の導入などが急速に進んだ結果、大幅に改善されていきましたが、その後、自動車の排気ガスなどを主因とする窒素酸化物や粒子状物質による汚染が全国的に増え続け、今なお解決されない大きな問題となっています。

     一方、中国で発表されている大都市における二酸化硫黄の年平均濃度を日本の基準と比較すると、ほとんどの都市が基準を上回り、とくに太原をはじめいくつかの都市では日本の工業都市の大気汚染が激しかった時代に匹敵する濃度であることが示されています。

     また中国では、フッ素含有量が多い石炭を使っている地方が広く分布しています。こうした地域の農山村では、暖房や炊事などで使用する石炭のばいじんが室内で乾燥させているトウモロコシやトウガラシに付着し、これを食べることでフッ素が体内に吸入され、歯牙フッ素症や皮膚ガンのような健康被害を起していました。現在の中国における大気汚染は、工場のばい煙、石炭による都市暖房、自動車排気ガスなどの原因により、二酸化硫黄や二酸化窒素、粒子状物質などの問題が深刻化しているのです。
日本の大都市における大気汚染のグラフ

日本の大都市における大気汚染(1970年前後の二酸化硫黄濃度)


中国の大都市における大気汚染のグラフ

中国の大都市における大気汚染(最近10年間の二酸化硫黄濃度)

  • 粉じんの捕集法と濃度の計り方
    粉じんは大きさで分離してフィルターを計量
     粉じんは、大きさによってその成り立ちが違い、空気中での滞留時間も異なります。非常に小さな粒子は大気中に漂っている時間が長く、肺の奥まで入って付着し、有害性も高くなるため、大気粉じんを粒子の大きさに分けて捕集し、分析することが重要です。粒子は、実際には多様な形をしていますので、空気中での動きの特性による大きさ(空気動力学径)で表されます。日本ではその直径が10μm(0.01mm)以上のものを完全に除いたものをとくに浮遊粒子状物質(SPM)といい、環境基準が定められています。

     浮遊粉じんの測定にはポンプなどで大気を吸引し、遠心力や慣性衝突(空気の流れの方向を急に変えると、小さな粒子は気流と一緒に曲がっていくが、大きな粒子は曲がりきれずにまっすぐ進んで壁に衝突する)の原理を利用してフィルターに一定以上の大きさの粒子を捕集し、計量して濃度を求める方法が多く用いられています。PM10やPM2.5も、同様に10μm以上や2.5μm以上の粒子を除いた粒子のことをいいますが、10μmや2.5μmの粒子を除く効率は50%とされています。この決め方をSPMにあてはめると、SPMはPM10とPM2.5の中間(およそPM7に相当)ということになります。

     対象都市に設置した捕集装置は、ローボリュームエアサンプラー・アンダーセンタイプといい、これも慣性衝突の原理を使って8段階に分けてフィルター(衝突板)上に粉じんを大きい粒子から捕集し、一番小さな粒子はろ過捕集する仕組みになっています。また、個人曝露用の捕集器も構造は簡単ですが、衝突板で10μm以上の粉塵を除き、次に2.5μm以上(10μm未満)の粒子と2.5μm未満の粒子(PM2.5)に分けて捕集しました。

     捕集した粉じん濃度を求めるためには、あらかじめ温度と湿度を一定に保った天秤室でフィルター重量を測っておき、捕集後にも全く同じ条件に1日以上置いてから計量してその差を出して計算します。1枚のフィルターで捕集される粉塵は、少ないもので10μg程度と非常に微量なため、μg単位で正確に計量する必要があります。安定した計量値が得られるまでくりかえし測定し、平均値で捕集量を求めます。
個人曝露調査用の粉じん捕集フィルターの写真 (クリックすると拡大画像がポップアップします)
個人曝露調査用の粉じん捕集フィルター。上が2.5〜10μm、下が2.5μm以下の捕集粒子。捕集量の違いは捕集面の濃淡でも区別がつきます。
精密電子天秤による重量測定の写真 (クリックすると拡大画像がポップアップします)
精密電子天秤による重量測定(静電気除去装置を通してガラス風防のある秤量台に乗せる)

大気汚染の解決は大きな課題

孫 貴範 教授の写真
孫 貴範 教授(中国医科大学公共衛生学院院長)
  • この大気汚染をテーマにした共同研究は5年前にスタートしましたが、大気汚染問題はますます大きな中国政府の課題になっています。調査対象都市となった瀋陽や撫順でも徐々に対策は立てられていますが、首都の北京では2008年のオリンピック開催を控えて、急ピッチで大気汚染の解決策が議論されています。たとえば、大気汚染の発生原因のひとつである工場は北京地区から移転させるとか、燃料資源を石炭から天然ガスに切り替えるといったものです。

     中国でもマイカー需要が増大し、どの都市でも自動車交通量は急増していますので、自動車から排出される汚染物質の健康影響が心配ですが、科学的な研究は始まったばかりです。今後、中国でも排気ガスによる大気汚染の研究は最も重要になると思います。

     日本の環境研究や環境対応技術のレベルは非常に高く、この共同研究も中国側スタッフには大変良い経験でした。これからも両国が一緒になって共通の環境汚染の研究に取り組んでいけることを期待しています。