コラム2「水をめぐる世界の環境変化」
1998年の夏に中国で起こった長江大洪水では氾濫した河水の濁流が東シナ海に流れ込み、日本の近海でも汚濁負荷の急激な上昇や異常低塩分水の増加などが観測される事態となりました。このような例を待つまでもなく、水はさまざまな面から「地球環境の変化」に大きな影響を及ぼす存在です。
地球上におよそ14億km3という総量で存在する水は、固体(氷)、液体(水)、気体(水蒸気)という三態をとりながら、さながら養分と老廃物を運搬する血液のように自然界を循環しています。
地表のおよそ7割を覆う海の水量は全体の約97.5%を占め、淡水は約2.5%です。さらにこの淡水中の約70%は極地の氷であり、湖沼、河川など私たちが日常生活に利用できる水は地球上の水のうちの0.01%にすぎません。
この貴重な水を使う私たちの水使用量は最近100年間で約9倍にも増大し、発展途上国を中心に世界各地で深刻な水不足や水質の汚濁が報告され始めています。国連の報告書によれば安全な飲み水が不足している人口は世界で10億、水に関する適切な衛生サービスを受けていない人口は25億に及ぶということです。
また世界の科学者や行政担当で構成される「世界水会議」は、2025年までに世界人口の約40%が水不足に直面するとの予測を立てています。もちろん人間による「開発」も、水をめぐる環境の変化に大きな影響を及ぼします。
森林伐採や石炭・石油の燃焼は地球の温暖化を進行させ、海や川などの水分蒸発が活発化し、水の循環が加速して台風や暴風雨などの気象状況が頻発します。さらに海温の上昇は潮流や気流にも影響を与え、熱波や暖冬が恒常的に続いて生態系の変化や生物種の減少にも及ぶ事態が懸念されています。昨今に世界各地から報告されるハリケーンや台風の増加、季節はずれの気温上昇などは、これらの水をめぐる環境変化との関連性が否定できません。