コラム「持続可能な交通」
“持続可能な交通”とはOECD(経済協力開発機構)が提案した「交通による環境負荷を低減するための新たな政策ビジョン」のことです。排ガスや燃費の抑制など既存の取組みだけでは,地球規模での環境負荷の増大を抑えることができないとの認識から,交通体系そのものにメスを入れ,自動車に過度に依存しない社会への変革をめざしています。
このプロジェクトは,「EST: Environmentally Sustainable Transport (環境に配慮した持続可能な交通)プロジェクト」)と呼ばれ,1994年にOECD環境政策委員会の中に設置されました。同プロジェクトでは,9つの加盟国などで6つのケーススタディを行いながら段階的に調査・検討を行い,1998年にはガイドラインを取りまとめました。
ガイドラインでは,以下の6つの項目について25〜35年先までに達成する目標を設定しました。
1.CO2=1990年レベルの20%以下にする
2.NOx=1990年レベルの10%以下にする
3.VOC=1990年レベルの10%以下(とくに毒性の強い物質についてはさらに削減を進める)にする
4.PM=地域の状況に応じ1990年レベルに対し55〜99%削減する
5.騒音=地域の状況に応じ,日中の騒音は最大でも55デシベル以下,夜間・戸外で45デシベル以下にする
6.土地利用=交通インフラに使用される土地利用の割合を1990年レベルに比べて小さくする
このガイドラインは2001年の環境大臣会合で了承され,OECDは加盟国に対してその実施に向けて取組みを開始するよう求めました。
こうした流れを受けて欧州では,公共交通機関の利用を促進するためのインフラやシステムの整備,自転車利用の優先政策の導入,特定地域に進入する車輌から料金を徴収するロードプライシングによる流入規制,路面電車の導入活用,カーシェアリング(自動車の共同所有や利用)などの取組みが本格化しています。また経済成長が著しいアジアにおいてもその実現をめざそうと,2003年3月に国際会議が名古屋で開かれ,具体的な動きが始まりました(写真)。
