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コラム「環境ホルモンとダイオキシン」その(2)

●環境ホルモンをめぐって

 1960年代頃から,ペニスのきわめて小さな雄ワニや,卵巣に似た組織を持つ雄の魚など,これまでの医学,生物学では説明が困難な現象が見られるようになってきました。さまざまな検討の結果,ある種の化学物質が性ホルモンに似た作用を起こすことが分かりました。これが環境ホルモン(内分泌撹乱化学物質)です。科学的には未解明な点が多く残されていますが,ごく微量で人や野生生物に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。

 環境ホルモン物質に関して日本では,1998年に環境庁が公表した環境ホルモン戦略計画SPEED'98で「動物の生体内に取り込まれた場合に,本来その生体内で営まれている正常なホルモン作用に影響を与える外因性の物質」と定義しています。

 環境ホルモンは,ホルモン作用を妨害したり類似の作用を行うなど,ホルモン本来の働きを乱し,その結果,生殖機能の障害などを引き起こす可能性がある物質です。ただし内分泌撹乱化学物質をどのように定義するかは,必ずしも定まっていないため,国際的にも科学的な議論が続けられています。

●内分泌系の働き

 私たちの体内にあるホルモンは,時と場面に応じて内分泌器官から血液を通して目的の組織の細胞に達します。あるものは活性化され,細胞核の中にある遺伝子を構成するDNAに直接・間接に指令を送って,体内に必要なタンパク質を必要な量だけ生成させ,役目を終えれば分解・消滅します。

●環境中におけるダイオキシン

 ダイオキシンは除草剤,殺菌剤などの有機塩素化合物の製造過程やごみの焼却で副生成物として生ずるほか,自動車の排ガスやタバコの煙の中にも存在しています。とくに日本では,ごみ処理のほとんどを焼却に依存しており,大気中へのダイオキシンの放出量が多かったため,環境を汚染し魚介類,乳製品,牛肉などへ濃縮・蓄積しています。

 ダイオキシンと一言でいっても多くの種類があり,その中でも一番毒性の強い2,3,7,8-TCDDに換算した値として毒性等価量(TEQ)で表わします。日本ではダイオキシンの耐容1日摂取量(TDI)を当面4pgTEQ/kg体重/日以下としています。これは体重1kg当たり,1日に1兆分の4グラムを摂取し続けても健康に悪影響を及ぼさないということです。

 日本における平均的な環境中での濃度は,大気中では約0.23pg/m3,土壌中では約6.5pg/gです。また私たちは食事や呼吸を通じて,毎日平均して約2.1pgTEQ/kg体重のダイオキシンを摂取しています。

図:微量物質のための重さの単位