ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

お寄せいただいたご質問への回答

  • いただいたご質問の趣旨を踏まえ、ご質問内容を一部修正させていただいている場合があります。
    また、類似のご質問をまとめて回答している場合があります。ご了承ください。
  • 吉川圭子
  • 西廣淳
  • 花崎直太
  • 増冨祐司

ご質問への回答①

  • 【質問】
    今年も線状降水帯発生により日本各地で洪水・土砂災害が起きています。この環境変化に適応するということは、「床上げの家に変える」、「住む場所をハザードマップの危険地域外に変える」、「ハザードマップ上の危険地域を居住禁止地域に宣言する」、「自宅を水害対応の家に変える」。
    人間活動により世界の平均気温上昇が、気候変動原因であり、今後気候変動緩和をしたとしてもさらに発生頻度が高くなるというのであれば、国策として適応策を打ち出すべきと思います。CO2排出低減化公共住宅の国民への提供とそこへの移住策推進などは、適応策になるでしょうか。
    冷暖房設備による環境負荷を低くする高断熱住宅の普及推進が日本の住居では遅れていると思いませんか。
  • 【回答】
    御指摘いただいたとおり、高リスクな地域からの移転促進を含めたより安全な土地利用の促進、住宅を被害を受けにくい住宅にしていくことは重要な適応策だと思います。
    政府が定めた気候変動適応法に基づく気候変動適応計画(H30.11閣議決定)においても、御指摘の点は以下のように記載されているところです。
    【気候変動適応計画】
    ○ 災害リスクを考慮した土地利用、住まい方
    ・土砂災害警戒区域の指定や基礎調査結果の公表を推進することで、より安全な土地利用を促していく。特に、要配慮者利用施設や防災拠点の安全確保を促進する。<国土交通省>
    ・災害リスクが特に高い地域について、土砂災害特別警戒区域の指定による建築物の構造規制や宅地開発等の抑制、がけ地近接等危険住宅移転事業等により当該区域から安全な地域への移転を促進する。<国土交通省>
    ○ 人間活動から排出される人工排熱の低減
    ・建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(平成 27 年法律第 53 号)(建築物省エネ法)等に基づき住宅・建築物の省エネルギー化を推進するほか、自動車からの排熱減少に資する環境性能に優れた自動車の普及拡大、都市鉄道・都市モノレール・新交通システム・路面電車等の整備による公共交通機関の利用促進、自転車交通の役割拡大による良好な都市環境の形成、エネルギー消費機器等の効率化に取り組む。<国土交通省>

    また、環境負荷を低くする高断熱住宅の普及推進についても、以下のように政府内で取組・検討が進められているところです。
    〇脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会
    https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000188.html
    〇住宅の省エネ・脱炭素化推進
    https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/jutaku/
    このほか、先進的な自治体の取り組み例や、研究機関連携の中で共有されている他機関の取組については以下のとおりです。

    【自治体や研究機関の取組事例等】
    〇自治体の取組事例:埼玉県のヒートアイランド対策街区
    https://adaptation-platform.nies.go.jp/db/measures/report_024.html
    〇自治体インタビュー 適応策 Vol.25 滋賀県
    内水氾濫の浸水リスクも見える化した、滋賀県独自の「地先の安全度マップ」
    https://adaptation-platform.nies.go.jp/articles/case_study/vol25_shiga.html
    〇建築研究所:水害に強い住宅づくり
    https://www.kenken.go.jp/japanese/information/information/press/2020/7.pdf
    〇防災科学技術研究所:耐水害住宅の大型実験
    https://www.bosai.go.jp/info/press/2020/20200925.html

    これからも皆様の取組に役立つ情報収集・情報発信に努めてまいります。今後とも、気候変動適応への御理解、御協力をどうぞよろしくお願い申し上げます。

ご質問への回答②

  • 【質問】
    CO2などの温室効果ガスを削減する緩和が必要な一方で、CO2排出量収支をゼロにするまでの期間にも地球温暖化が進むため、これに対する適応が必要ということが良く分かりました。どうも有難うございました。一方で、地球全体の平均気温が0.5℃、1℃上昇で地球に対する影響が大きく変わるということについて、一般の方に感覚として伝わりにくい様に思います。(0.5℃くらいの温度変化であれは問題無いのではないか?と思ってしまうということ。)日々の気温変化で、1℃程度の気温変化は生じていますが、地球全体で考えると0.5℃、1.5℃がとても重大な温度上昇であること、これが何故大きな気候変動に繋がるのかについて、定性的に、あるいは感覚として、一般の方に伝えることができればと良いと思いました。
  • 【回答】
    地球全体の平均気温の変化と、日々の気温変化の違い、0.5℃、1℃上昇の影響が感覚としてとても分かりにくいということ、御指摘のとおりと思います。
    IPCCの1.5℃特別報告書によると、生態系や健康などの様々な分野において、1.5℃の気温上昇によりリスクは増加するものの、2.0℃に比べてそのリスクは低いと評価しています。このように0.5℃の違いによって地球全体における気候変動リスクに明確に差があることが科学的に明らかになっています。また、日々の生活で実感されているように、異常高温(例えば、35℃を超えるような猛暑日の日数)の出現数が大きく増加し、冬日(日最低気温0℃未満)の日数も減少しており、さらに、日降水量100 mm 以上や200 mm以上の大雨の発生頻度も増加するなど、産業革命以前から全球平均気温が1.0℃程度上昇した現在、極端な気象現象の発生頻度が増加しています。これらによる熱中症搬送者数や死亡者数の増加、洪水氾濫や土砂災害の被害の増加や激甚化、農林水産業への被害など、様々な影響が顕在化してきています。

    ○IPCC 1.5℃特別報告書
    環境省_気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)サイクル
    https://www.env.go.jp/earth/ipcc/6th/
    環境省_気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「1.5℃特別報告書(*)」の公表(第48回総会の結果)について
    http://www.env.go.jp/press/106052.html
    IPCC第48回総会に際しての勉強会資料
    https://www.env.go.jp/earth/ipcc/6th/ar6_sr1.5_overview_presentation.pdf

    ○気象庁 気候変動監視レポート
    気象庁 Japan Meteorological Agency
    https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/monitor/index.html

    ○A-PLAT プレゼンテーション資料
    プレゼンテーション資料(ガイドブック、スライド集)の提供 | 地域の適応 | 気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)
    https://adaptation-platform.nies.go.jp/local/communication/lecture/presentation.html

    このような情報をより分かりやすく科学的な情報を伝えるよう工夫に努めていきたいと思います。
    今後とも気候変動適応への御理解、御協力をどうぞよろしくお願い申し上げます。

ご質問への回答①

  • 【質問】
    最近私の住んでいる地域で「ブルーカーボン」が話題になっています。藻場(豊かな生物環境)を再生するのとあわせてCO2も吸収して緩和にもなり、また適応にも繋がると聞きました。どういうところが「適応」になるのでしょうか。海水温の上昇等で藻場が減少してきたこと(生態系影響)への対策という意味での適応でしょうか。それとも防災等その他の温暖化影響への効果もあるのでしょうか。
  • 【回答】
    藻場は、CO2の吸収以外にも、多様な海洋生物を育む生物環境としての役割があります。藻場は海水温の上昇等の影響を受けやすく、現状の気候変動影響によって既に衰退・消失が進行しています。そのような藻場の"再生"によって、藻場の生態系機能を回復させたことが、気候変動への適応という説明になっているのだと思います。なお防災・減災に関連する波浪軽減等の効果は、藻場だけでは必ずしも大きくはありませんが、藻場を含む海底・海岸地形全体としては無視できない効果を発揮することが指摘されています。

ご質問への回答②

  • 【質問】
    「耕作放棄田を湿地にすると気候変動適応に役に立つのか」の内容が大変興味深かったです。
    この研究について、中間結果でも結構ですのでどこかに掲載等されておりますでしょうか。
    また、この研究について、自治体等が参加して各地域で実証をしていただくようなことは可能なのでしょうか。
    ぜひ九州地域で実証していただきたいと思います。
  • 【回答】
    湿地化した耕作放棄田の機能については、以下の記事をご参照ください。自治体と連携した取り組みにも着手していますが、実証研究は不十分であり、今後充実させていきたいと考えております。
    〇解説論文
    西廣ほか(2020)里山グリーンインフラによる気候変動適応:印旛沼流域における谷津の耕作放棄田の多面的活用の可能性. 応用生態工学 22: 175-185. https://www.jstage.jst.go.jp/article/ece/22/2/22_175/_pdf
    〇書籍
    グリーンインフラ研究会ほか(編)「実践版!グリーンインフラ」日経BP社.
    ISBN 978-4-296-10675-2
    〇一般向けのパンフレット
    北総地域における里山グリーンインフラの手引き【谷津編】 https://wetlands.info/library/

ご質問への回答③

  • 【質問】
    GHGインベントリオフィスが発表している「日本の温室効果ガス排出量データ(速報値/確報値)」のExcel表の見方を今回の企画の中でなくても、どこかで解説して頂けないでしょうか?

    例えば、

    1. sheet「2.CO2-Sector」の「事業用発電」について、電力会社として販売していない自家発事業者が化石燃料を使った発電で自家消費した場合、排出されたCO2は「事業用発電」ではなく、自分が属する「エネルギー起源」の他の事業分野(「石油製品製造(石油精製)」「ガス製造」「鉄鋼」など)に計上されているのでしょうか?

    2. 日本の吸収量についてはsheet「18.【Annex】CRF-CO2」に記載されているようですが、そもそも「UNFCCCに提出されたCRF及びNIR」とはどういったものなのか、sheet「2.CO2-Sector」の排出量とどう対応しているのでしょうか?

    3. UNFCCCに各国の「人為的排出量」が提出された後、この中に含まれていない永久凍土からのメタン排出量や山火事でのCO2排出量などをどこの国際機関がどういう頻度で加味してカーボンバジェット等を予測しているのでしょうか?
    (結果は最終的にIPCCのAR等に反映されるにしても、その途中のプロセスがよく分からない)

    等を知りたいです。
  • 【回答】
    ご質問について、講演者の西廣はこの分野の専門家ではありません。正確を期すため温室効果ガスインベントリオフィスの専門家から回答させていただきたいと思います。お手数をおかけしますが、下記より直接温室効果ガスインベントリオフィスにご連絡ください。
    https://www.nies.go.jp/gio/contact/index.html

ご質問への回答①

  • 【質問】
    気候変動影響における適応策の効果予測、特にEco-DRRやグリーンインフラ等の災害対策・生態系適応策の効果の予想についても国立環境研究所でまとめていただくことはできないでしょうか。
  • 【回答】
    Eco-DRRやグリーンインフラの効果を予測するためには、土木・環境・社会科学など複数の分野にまたがる研究が必要です。この分野はまだ動き始めたばかりですが、国環研も大学や他研究所と連携しマングローブ林や氾濫原湿地等の機能を評価・予測する研究に着手しています。成果を使いやすく示していくことも重視して進めていきたいと思います。

ご質問への回答②

  • 【質問】
    「流域治水としての田んぼダムの活用」の箇所を大変関心を持って拝聴しました。
    こちらのデータはどこかに公表されているのでしょうか。ぜひ実証結果を活用・引用させていただきたいと思います。
  • 【回答】
    郡山市における2019年台風19号を対象とした田んぼダムの評価については、主なデータを記載した論文が採択され、2021年後半に出版される見込みです。書誌情報を記しますので、出版後にご覧ください。

    著者:竹田稔真・朝岡良浩・林誠二
    題目:田んぼダムの洪水緩和効果による将来的な水害リスク上昇の抑制効果
    掲載誌:水文・水資源学会誌 34巻6号(2021年11月発行見込み)

    また、須賀川市の気候シナリオの降雨を用いた適応効果については、現時点で論文等に公表されておりません。こちらについてのお問い合わせについては、上記論文の連絡先までお願いいたします。

ご質問への回答③

  • 【質問】
    気候シナリオから影響モデルまでわかりやすく説明して頂きありがとうございました。身近なこととして考えることができました。影響モデルの例として河川モデルと種分布モデルが示されていましたが、他にはどのようなモデルがあるのでしょうか。
  • 【回答】
    直接のお答えとしては、影響評価をする対象の数だけ、影響モデルがあります。例えば、国立環境研究所の気候変動適応プログラムでは、二つの他に、農業生産性モデル、陸域生態系モデル、高潮・波浪モデル、水稲成長モデル、湖沼の水温・水質モデル、閉鎖性水域の水温・水質・生態系モデル、海洋の生態系モデル、太陽光・風力発電モデル、熱中症搬送者数予測モデルなどが開発・利用されています。それぞれ、扱う内容や計算の進め方は異なりますが、大きく分けると、河川モデルのような、実際に起きている現象(降雨や流下など)をコンピュータシミュレーションで表現しようとする「プロセス(過程)モデル」と、種分布モデルのような、対象と周辺環境の統計学的な関係を解明しようとする「統計モデル」のどちらかに分けられます。

ご質問への回答①

  • 【質問】
    水稲の適応策について、水の管理も一つ適応になるというお話がありました。一方で、温暖化による雪の減少等により、次期によっては水不足も懸念されると思うのですが、農業用水の利用に関する適応策とのトレードオフ等については検討されているのでしょうか。
  • 【回答】
    私の研究ではまだ検討していないのですが、今後検討する必要があると考えております。また温暖化による河川流量の変化に関する研究はこれまでも数多くありますが、それが例えば水稲生産にどのくらい影響するかという定量的な研究はこれまでありません。しかしながら、このような研究が現在進められていますので、今後研究成果に期待して頂ければと思います。

ご質問への回答②

  • 【質問】
    温暖化により気温だけではなく、降水の変化により水稲品質や収量に影響は出ているのでしょうか(または出る予測があるのでしょうか。)
    他の施策(田んぼダムや、災害に備えた農業水路・ダムの事前排水)による影響はいかがでしょうか。
  • 【回答】
    私の知る限り日本においては降水の変化による水稲生産への影響は観測されていません。また今後も大きな影響はないと考えています。これは日本ではほぼ100%の水田で川から水を引く灌漑による水稲生産がおこなわれており、また降水量も比較的多いためです。
    挙げられている施策による影響に関しての定量的な評価は存じ上げませんが、例えば田んぼダムやダムの事前排水によって、多くの人命が救われるのであれば必要な施策(優先すべき施策)と思います。

ご質問への回答③

  • 【質問】
    気候変動が水稲に与える影響とその予測。そして将来への適応策をわかりやすく説明いただきありがとうございました。
    今後、20年、30年を見据えて適応策が示されたと感じました。高温耐性品種の導入を阻害する要因は何がありますでしょうか。
    農業担い手の高齢化・後継者不足、日本のお米消費量の減少。西日本の生産量・品質が悪くなっても東北・北海道の適応でバランスが取れるということもあるのでしょうか。
  • 【回答】
    生産者さんは消費者に好まない売れない品種や価格が安い品種は作りたがらないので、消費者選好の固定化は大きな阻害要因と考えています。
    産地の変化によって日本全体としては大きな影響は受けないようにする適応は非常に重要だと考えています。ただ西日本で例えば水稲生産を続けたいと考えている方々に対するサポート、つまり適応を考えることも重要だと考えています。

ご質問への回答④

  • 【質問】
    お米がとれる時期が前倒しになるのでしょうか?
  • 【回答】
    はい、日本においては基本的に田植え日が同じであれば、収穫時期は前倒しになると考えられます。