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2016年3月31日

福島県新地町のスマート・ハイブリッドタウン構想

コラム1

 福島県相馬郡にある新地町は、人口約8千人、面積約47km2の小さな町です。東日本大震災では、町域の約20%が津波による浸水被害を受け、577戸の家屋が全半壊、116名もの犠牲者を出すなど、甚大な被害を受けました。

 新地町が環境未来都市に選定されたことを契機に、新地町と国立環境研究所は2013年3月に「連携・協力に関する基本協定」を締結しました。復興と環境と経済が調和した持続可能な環境都市の実現を目指して、研究連携を進めています。

 復興モデル都市としても指定された新地町では、復興計画に「スマート・ハイブリッドタウン構想」を掲げています。情報通信技術とコミュニティを支える社会の仕組みを組み合わせることで、災害による避難や移転などで失われがちな地域の「絆」を再生しようというものです。この構想では、タブレットやスマートフォンなどの端末から住民と自治体や研究機関、企業をインターネットでつなぎ、環境や、エネルギー、生活の情報を共有します。自治体は、住民の方々の要請や発信を迅速に知ることができる双方向型の地域情報基盤のプロトタイプを構築することを目指しています。

 図1の「(1)地域エネルギー行動支援ネットワーク」では、エネルギー消費モニタリングシステムを住宅や公共施設、商業施設などに設置し、省エネルギーを促します。さらに、太陽光発電などの再生可能エネルギーの発電量をリアルタイムにモニタリングします。これらの情報を、「(4)スマート・ハイブリッドセンター事業」に集約して、省エネルギーとともに災害時にも強靭な分散型のエネルギーシステムを構成する地域情報ネットワークにします。このような情報システムを用いたエネルギーシステムは一般的にスマートコミュニティなどと呼ばれますが、新地町ではエネルギーだけではなく、生活や経済、環境の情報も共有するネットワークにしたいと「スマート・ハイブリッド」と名付けました。鉄道線の復旧に伴い計画されている復興まちづくり地区にこのシステムを整備し、「社会イノベーション」としての先導的な試みを福島県から発信することを目指しています。

 「(2)高齢化コミュニティ支援ネットワーク」では、高齢化への対応など住民の生活の利便性を高めるために、クラブ活動の連絡や情報共有や他の生活支援事業へネットワークを展開します。

 「(3)地域交通行動支援ネットワーク」では、GPSシステムを搭載した車両の位置情報と利用者の希望をスマート・ハイブリッドセンターでマッチングし、コミュニティバスやオンデマンドタクシーなどの公共交通システム運行計画の高度化を検討します。

 この構想の実現のため、新地町は国立環境研究所の他、福島県、大学、環境省、経済産業省、エネルギー事業者、メーカー、IT事業者などと連携し、様々な事業に向けて議論しています。

スマート・ハイブリッドタウン構想の図(クリックで拡大表示)
図1:福島県新地町のスマート・ハイブリッドタウン構想

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