- 予算区分
- サブテーマ1
- 研究課題コード
- 2527BA008
- 開始/終了年度
- 2025~2027年
- キーワード(日本語)
- 外来ネズミ,小笠原,根絶
- キーワード(英語)
- invasive rodent,Ogasawara,eradication
研究概要
小笠原地域では外来ネズミによる生態系への甚大な被害が大問題となっている。具体的には、クマネズミによる父島列島の陸産貝類の食害、ドブネズミによる母島列島のオガサワラカワラヒワの食害等により、これらの種が存続の危機に陥り、世界自然遺産としての価値の損失の恐れが生じている。本問題の抜本的解決には外来ネズミの根絶が必要である。国際的にネズミ対策に殺鼠剤が利用され、様々な地域で根絶を達成している。父島列島や聟島列島など小笠原地域でも殺鼠剤が利用され、聟島など面積が小さく、かつ近隣の島と一定の距離が離れた一部の島では根絶が達成・維持されているが、兄島など面積が大きな島や近隣の島と隣接した島では根絶が達成できておらず、殺鼠剤による低密度管理が続いている。継続的に殺鼠剤が使用されている本州などの都市部では、特定遺伝子に変異が入った殺鼠剤耐性個体が出現し、管理が困難になっている。幸い小笠原地域では殺鼠剤抵抗性変異個体は確認されていないが、変異個体が出現した場合、外来ネズミの根絶はおろか低密度管理も困難になる。したがって世界遺産小笠原地域において、外来ネズミ類の根絶手法の開発が急務となっている。本研究では、外来ネズミ類の根絶手法の開発が急務となっている小笠原地域における外来ネズミ類の根絶手法の開発を目指す。
研究の性格
- 主たるもの:技術開発・評価
- 従たるもの:行政支援調査・研究
全体計画
本研究では、外来ネズミ類の根絶手法の開発が急務となっている小笠原地域における外来ネズミ類の根絶手法の開発を目指す。サブテーマ1では、小笠原に生息する外来ネズミの根絶手法の開発に取り組む。具体的には、父島列島と母島列島に生息するネズミの特性を正確に解明するため、ゲノム情報を用いて、ネズミの種の判別、殺鼠剤標的遺伝子の変異の有無の解明、島間の移動の解明に取り組む。さらに、父島列島のネズミの根絶可能性が高い殺鼠剤の探索や、ネズミへの殺鼠剤の蓄積量の推定を通じた上位捕食者への曝露量の検討などに取り組む。サブテーマ2では、小笠原に生息する非標的種への殺鼠剤の影響解明に関する研究に取り組む。具体的には、希少種・固有種であり評価の優先度が特に高いアカガシラカラスバト、オガサワラノスリ、陸産貝類、オガサワラカワラヒワに対する殺鼠剤の毒性影響を実験的に評価する。他種に関しては、ゲノム情報を利用し影響を予測する。サブテーマ3では、小笠原地域における外来ネズミ対策の根絶戦略策定と地域理解の促進に取り組む。具体的には、兄島で実施済みの殺鼠剤駆除の効果を推定するプログラムを開発し、同プログラムを使用し駆除手法ごとの効果とコストを推定する。外来ネズミ根絶計画案(ゼロドラフト)を作成するため、殺鼠剤先進国ニュージーランドでの非標的種への対応等に関してヒヤリング調査をする。さらに、合意形成に向けたリスクコミュニケーションのため、小笠原住民の意識調査や、ニュージーランドの専門家を招いての小笠原住民との双方向型ワークショップや、ステークホルダー勉強会を開催する。
今年度の研究概要
サブテーマ1では、母島列島に生息するネズミの遺伝的解析等を進める。サブテーマ2では特に優先順位が高い非標的種への殺鼠剤の影響の評価を進める。サブテーマ3では個体群動態モデルの構築や海外ヒヤリング調査などを進める。
外部との連携
中山翔太(北海道大学准教授), 橋本琢磨(自然環境研究センター主席研究員), 川合佑典(帯広畜産大学准教授), 武田一貴(北里大学講師), 水川薫子(東京農工大学講師), 江口哲史(千葉大学講師), 諸澤崇裕(東京農工大学講師), 織朱實(上智大学教授), 港隆一(自然環境研究センター上席研究員), 菊池しゅき(自然環境研究センター研究員)
課題代表者
片山 雅史
- 生物多様性領域
生物多様性資源保全研究推進室 - 主任研究員
- 博士(農学)
- 農学,生物工学,生化学


