- 研究課題コード
- 2527CD019
- 開始/終了年度
- 2025~2027年
- キーワード(日本語)
- 福島原発事故,全町村避難地域,地域住民組織
- キーワード(英語)
- the Fukushima nuclear accident,Evacuation-ordered areas,Neighborhood organization
研究概要
福島原発事故から14年余りが経過したいま、長期に渡る放射性物質の環境汚染、除染・インフラ整備、住民避難および住民帰還の停滞による影響をうけて、被災地域におけるコミュニティの維持・存続が困難になっている。福島原発事故前の被災地域において、コミュニティの中核を担っていたのは行政区と呼ばれる地域住民組織であり、集落など特定の空間的範域に居住する世帯の全戸加入を原則として、地域住民の日常生活を支える基盤、地域社会における政治的基盤としての役割を担っていた。本研究では、福島原発事故後に全町村避難を実施した5自治体(大熊町・双葉町・浪江町・富岡町・飯舘村)において、活動の危機・困難に直面している行政区を対象として、定性的手法による社会調査およびアクションリサーチを実施することを通じて、福島原発事故前の被災地域におけるコミュニティおよび地域住民組織の存続条件を解明することを目的とする。
研究の性格
- 主たるもの:政策研究
- 従たるもの:行政支援調査・研究
全体計画
本研究では、福島原発事故後に全町村避難を実施した対象5自治体の行政区に関するデータを、以下(1)〜(3)のアプローチを適用して取得する。なお、(1)〜(3)の準備作業として、あらかじめ全町村避難を経験した対象5自治体の全行政区リストを作成する。リストの情報源は?復興計画、?自治体広報・議会報、?新聞記事(福島民友デジタルアーカイブ)として、項目は暫定的に行政区名・行政区長名・組織の運営状況・活動内容・外部組織との連携状況(自治体行政・支援団体等)とする。そして、(1)〜(3)で得られた情報をもとに、順次、リストの項目・内容を追記していく。
(1)行政—地域住民組織の連携に関する自治体の制度・政策の分析
被災地域の災害復興過程における自治体行政と地域住民組織の連携体制は地域ごとに異なり、この差異は災害前後の自治体の制度・政策に規定される。本研究では、全町村避難を実施した5自治体における地域住民組織存続の規定要因となる?制度(条例・規則、連携組織等)?政策方針(行政区再編の検討状況等)?政策実施状況(行政区長会および町(村)政懇談会の開催状況・協議事項、行政区の活動支援施策等)を分析する。
(2)避難指示区域の設定状況に応じた地域住民組織の存立基盤と機能の分析
福島原発事故被災地域の多勢を占める農山漁村のコミュニティには集合表象(祭礼)、準則・行動規範(規約等)、資源管理(共有地)の三層からなる?存立基盤がみられる。そして、被災は存立基盤の喪失、復興は回復の過程であるといえる。さらに、被災地域の地域住民組織は災害前から住民生活を支える様々な?機能を担っており、それは親睦、共同防衛、環境整備、行政補完、圧力団体、統合・調整に大別される。本研究では避難指示区域の設定状況が異なる大熊町・飯舘村を対象として、両町の全行政区長へのインタビュー調査を実施して、行政区の?存立基盤と?機能を分析する。
(3)地域住民組織の今後を考えるための自治体担当者と地域住民による「対話の場」構築
福島原発事故後の被災地域において、地域住民組織の中長期的な運営方策を検討するため、本研究では大熊町総務課、大熊町行政区長会等の関係機関と協働して、「大熊町における行政区の今後を考える住民ワークショップ」を開催して、彼ら自身が認識する地域住民組織運営の課題とニーズを分析する。
今年度の研究概要
2025年度は全町村避難を経験した対象5自治体(大熊町・双葉町・浪江町・富岡町・飯舘村)の全行政区リストを作成する。そのうえで、(1)行政—地域住民組織の連携に関する自治体の制度・政策の分析を進める。具体的には、?地域住民組織を所管する自治体部局(総務部局・企画部局等)に対するインタビュー調査、?行政区長会会長に対するインタビュー調査を実施する。
外部との連携
福島大学地域未来デザインセンター
- 関連する研究課題
- 27229 : PJ4_避難指示解除区域における地域資源・システムの創生研究
- : 災害環境分野(イ政策対応研究)
課題代表者
辻 岳史
- 福島地域協働研究拠点
地域環境創生研究室 - 主任研究員
- 博士(社会学)
- 社会学,政策学



