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気候変動に対する生態系機能のレジリエンス評価手法の開発(令和 7年度)
Developing methodologies to assess the resilience of ecosystem functions to climate change

予算区分
2MF-2502
研究課題コード
2527BA005
開始/終了年度
2025~2027年
キーワード(日本語)
気候変動,生態系機能
キーワード(英語)
Climate change,Ecosystem function

研究概要

日本の代表的な自然生態系である森林は、気候変動緩和や気候調整等の重要な生態系サービスを提供するとともに、生物生息環境の形成を通じ生物多様性の維持に大きな役割を果たす。過去50年間で国内では生態系サービスの劣化と生物多様性の損失とが進行しており、その主な原因のひとつが気候変動である。気候変動適応策において自然生態系の健全性(integrity)を高めることが重要だとされ、特に重要な要素は攪乱要因に対する生態系のレジリエンス(安定性と回復力)である。レジリエンスは、「生態系を活用した気候変動適応策」の中心的な概念であるが、その評価法はいまだ確立されていない。本課題は、日本の森林生態系に適合したレジリエンスの評価及びモニタリング手法の開発を目的とする。研究対象は、森林タイプの中でも、近年気候変動影響の顕在化が報告されている落葉広葉樹林とし、長期にわたる地上観測データや多角的な生態学的データと知見が蓄積している国内の3カ所のサイトで実施する。長期地上観測データや衛星データや新規の観測、さらにはモデルによる解析を行い、過去20-30年間での気象条件変化に対し、生態系の構造(種組成と林冠構造)と機能(炭素貯留と水循環)の安定性/変化の鍵となった要因を、植物生態学的・生理生態学的なプロセスに基づき解明する。これにより、「レジリエンスの高い生態系」の特徴となる指標を具体的に抽出する。さらにレジリエンス評価に適した指標の観測手法を標準化する。
本課題が開発する日本の森林生態系のレジリエンス評価手法は、国内森林についての気候変動に対する脆弱性/堅牢性の評価、モニタリングを可能にする。その成果は、気候変動適応策だけでなく、緩和策、生物多様性保全策に貢献するとともに、これらの政策のコベネフィットを最大化する政策の実現に寄与する他、IPCCやIPBES、GEO BON等の国際的な取り組みにも貢献する。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

本課題の実施期間の3年は、日本国内の代表的な森林タイプのうち、近年顕著な変化がみられる落葉広葉樹林に対象を絞り、効率的な検証を行う。
第一に、過去数十年間の気候変動下での生態系の構造および一次生産・水循環機能の変化と、その変化をもたらすメカニズムを、蓄積した長期観測データおよび新たに実施する観測データから明らかにする。その成果をもとに、生態系のレジリエンスの鍵となる生態学的・生物地球物理学的要因を特定して、国内の森林生態系について気候変動に対するレジリエンスを評価する上で有効な項目の具体的なリストを作成する。さらに、それらの各項目について、生態系レジリエンス評価の観点から標準的な観測手法を確立する。特に、リモートセンシング観測が可能な項目については、将来的に広域の生態系評価への適用を目指すために、人工衛星による観測手法の確立にも重点的に取り組む。

今年度の研究概要

•ドローンによる森林のLiDAR計測を実施する(高山サイト)。
•全国の長期観測データ(Yoshikawa et al. 2024等)を用いて、樹木の多様性指標(種数、種組成、個体数、機能的多様性)を算出する。経時的な変化量について地点ごとに比較し、安定性や回復力に関するパラメータについて検討する。
•高山・苫小牧サイトについて長期観測データから開葉・落葉フェノロジーの年変動の解析を行う。
•高山・小川・苫小牧の各サイトについて放射伝達モデルの入力パラメータとなる葉の角度分布、葉面積指数、個葉の分光特性等のデータを収集する。

外部との連携

大阪公立大学
東京大学

関連する研究課題

課題代表者

野田 響

  • 地球システム領域
    衛星観測研究室
  • 主任研究員
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担当者