- 予算区分
- S-20-3
- 研究課題コード
- 2125BA003
- 開始/終了年度
- 2021~2025年
- キーワード(日本語)
- 短寿命気候強制因子,脱炭素シナリオ,早期大幅削減,アジア域排出インベントリ
- キーワード(英語)
- Short-Lived Climate Forcers,decarbonization scenarios,drastic early mitigation,emissions inventory in Asia regions
研究概要
パリ協定とキガリ改正を同時に実現し、また2℃/1.5℃目標の達成にむけてSLCFsの早期大幅削減に注目し、持続可能で脱炭素な社会にむけた世界の発展経路、およびその目標に向けたアジア域における技術的・政策的な実現性や有効な緩和策について評価する。SLCFsであるBC・CH4・対流圏O3・HFCsは、早期大幅削減による2℃/1.5℃目標への貢献が期待されるが、一方で対策技術の組み合わせによっては同時に冷却効果のある大気汚染物質も削減されて温暖化を促進し、地域的な影響を及ぼす可能性がある。そこで本課題では、以下の内容を実施する。
(1) エネルギー部門・非エネルギー部門の主要な排出源を網羅し、SLCFs・長寿命温室効果ガス(GHGs)・大気汚染物質の緩和策が分析可能な統合評価モデルを用いて、気候変動および環境影響の双方を考慮した世界・アジア域における2℃/1.5℃目標に資する最適な緩和シナリオを策定する。また、シナリオ分析結果をテーマ1およびテーマ2と共有する。
(2) サブテーマ3が拡張・拡充するアジア域排出インベントリREASのSLCFs・GHGs・大気汚染物質の排出インベントリ?に基づいて、サブテーマ1・サブテーマ2が連携して統合評価モデルを用いてアジア諸国におけるSLCFsおよびGHGsの早期大幅排出削減の可能性や地域別・ガス種別の技術的な潜在削減量や経済影響などの定量的の評価を行い、脱炭素対策とSLCFs緩和策の相乗効果・相殺効果を評価する。
(3) 制度的、技術的、社会的な障壁を鑑みてサブテーマ4が開発するSLCFs緩和策の実現可能性フレームワークに基づいて、サブテーマ1・サブテーマ2と連携して2℃/1.5℃目標に資するアジア域における排出シナリオとパリ協定下でのアジア域の国別削減目標とのギャップを埋めるために有効なSLCFs緩和策を検討し、主要なSLCFs排出源の地域偏在性を踏まえた2℃/1.5℃目標の実現に向けた対策ロードマップを作成する。
研究の性格
- 主たるもの:政策研究
- 従たるもの:行政支援調査・研究
全体計画
テーマ3全体では、2℃/1.5℃目標および環境影響の低減を考慮した短寿命気候強制因子(SLCFs)と長寿命温室効果ガス(GHGs)の最適緩和シナリオを探索し、地域別・ガス種別の技術的な潜在削減量や経済影響などの定量的の評価を行い、緩和策の技術的・経済的・制度的な課題を明らかにすることを目標とする。具体的には、以下の研究目標を掲げる。
・脱炭素社会の実現と環境影響の軽減に向けた持続可能な世界・アジア域のSLCFs・GHGs最適緩和シナリオを探索し、SLCFs・GHGs排出削減経路における対策費用や経済影響等を定量的に評価する。
・1.5℃目標に資するSLCFs・GHGsの早期大幅削減シナリオを探索し、脱炭素対策とSLCFs緩和策の組み合わせによる相乗効果・相殺効果を定量的に評価する。
・パリ協定下のアジア諸国の排出削減目標の大幅な引き上げにむけた対策強化策、対策技術導入による潜在的削減量や技術的・経済的・制度的な課題の下における実現可能性、および主要な排出源の地域偏在性を踏まえた2℃/1.5℃目標の実現に向けた対策ロードマップを作成する
・テーマ1による気候影響評価およびテーマ2による環境影響評価を踏まえ、テーマ3による緩和策による社会経済評価と合わせて、S20独自のSLCFs・GHGs最適緩和シナリオを策定する。
テーマ3全体の年度計画として、以下を示す。
[2021年度] SLCFsを網羅した緩和策を評価できるように、テーマ3で用いる各モデルの拡張やSLCFs削減に効果的な対策技術データを拡充する。また、テーマ3で共有するSLCFs関連物質インベントリシステムを拡張・拡充し、基準年値の原型を作成する。また主要なSLCFs緩和策の普及への障壁を技術・経済・制度・社会の観点で整理する。
[2022年度] 各モデル・データベース・インベントリを拡張・拡充し、過去から基準年までのSLCFs関連物質インベントリの作成や、2℃/1.5℃目標に資するSLCFs・GHGsの早期大幅削減シナリオを探索する。また、主要なSLCFs緩和策の技術・経済・制度・社会的な課題を考慮した実現可能性フレームワークの原型を作成する。
[2023年度] 拡張・拡充した各モデル・データベース・インベントリを用いて、2℃/1.5℃目標に資するSLCFs・GHGsの早期大幅削減シナリオの原案を作成し、主要な対策や特徴を定量的に評価するとともに、シナリオ原案をテーマ1およびテーマ2へ共有する。また実現可能性フレームワークを用いて早期大幅削減シナリオを評価し、アジア諸国の排出削減目標の大幅な引き上げに向けた対策ロードマップを検討する。
[2024年度] テーマ1による気候影響およびテーマ2による環境影響の結果をシナリオに組み込めるように、テーマ3で用いる各モデル・データベース・インベントリを改良し、SLCFs・GHGs早期大幅削減を実現する最適緩和シナリオを策定し、テーマ1およびテーマ2へ共有する。また、実現可能性フレームワークを改良し、最適緩和シナリオとアジア諸国の排出削減目標のギャップを埋める対策ロードマップを策定する。
[2025年度] 策定したSLCFs・GHGs最適緩和シナリオに対して、アジア諸国における主要な排出源や削減潜在量などの地域偏在性や不確実性を分析し、対策費用、経済影響等を考慮した実現可能性を評価する。また、有効な国際・国内の制度・政策を検討する。
今年度の研究概要
策定したSLCFs・GHGs最適緩和シナリオに対して、アジア諸国における主要な排出源や削減潜在量などの地域偏在性や不確実性を分析し、対策費用、経済影響等を考慮した実現可能性を評価する。また、有効な国際・国内の制度・政策を検討する。
[サブテーマ1]
• 改良した各モデルを用いて、優先的に早期対策が必須な国・部門や大幅導入が期待される対策技術などを特定し、発生源の地域偏在性や対策技術の不確実性などを分析し、対策費用、経済影響等を考慮した実現可能性を評価する。
[サブテーマ2]
• 4年度目までの排出シナリオ分析の成果をもとに、特に重点的に早期な対策が必要な国・部門や、効率や導入量の潜在性の大きな技術の特定の上、主要な国・部門に特化した対策技術の導入時期の感度分析(早期に行われた場合/遅れた場合など)、あるいはインベーションの進展度合いによる感度分析(技術の効率や普及率、コストの増減)を行い、SLCFs・GHGsの早期大幅排出削減の可能性について不確実性の幅を持って分析を行う
[サブテーマ3]
• シナリオ基準年以降から2024年度までに作成された最新年までのデータについて、最終検証及び修正を行い、確定する。確定したデータを外部公開する。
• 本研究において開発・確定した全期間のアジア域SLCFs関連物質排出インベントリを用い、アジア域SLCFs関連物質の現況排出量及び近年のトレンドの変動要因の解析を行う。その結果及びサブテーマ1によって策定されるSLCFs関連物質将来排出削減シナリオをもとに、排出削減対象優先国・地域及び発生源の検討を行う。結果をS-20-3間で共有する。
[サブテーマ4]
• 複数の緩和シナリオの中で、SLCFs・GHGs「最適」緩和シナリオについてテーマ3全体で検討する際に、最適緩和シナリオに向けた有効な国際・国内の制度・政策を検討する。
• また、UNEPの「アジア太平洋地域の大気汚染・科学に基づくソリューションレポート」で提示された25の手段について、情報を系統的に整理し第3章の対策実施箇所について補完する。
• 開発した実現可能性フレームワークによる成果をまとめ、アジア地域及びCCACなど国際的な気候と大気環境に取組むイニシアチブに向けて成果を発信する。
外部との連携
サブテーマ(1) 東京大学
サブテーマ(2) みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
サブテーマ(3)一般財団法人日本環境衛生センターアジア大気汚染研究センター
サブテーマ(4) 公益財団法人地球環境戦略研究機関
課題代表者
花岡 達也
- 社会システム領域
地球持続性統合評価研究室 - 室長(研究)
- 博士(工学)
- 工学,システム工学,経済学
担当者
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金森 有子社会システム領域
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Silva Herran Diego社会システム領域
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日比野 剛