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安全なプラスチック循環利用に向けた統合的枠組みの開発:日本をケーススタディとして(令和 7年度)
Developing an integrated framework for transitioning to a safe circular plastic economy: a use case study of Japan (CIRPLUS)

研究課題コード
2225KZ001
開始/終了年度
2022~2025年
キーワード(日本語)
プラスチック循環,樹脂添加剤,循環経済,マテリアルフロー分析
キーワード(英語)
plastic recycling,plastic additive,circular economy,material flow analysis

研究概要

 近年、プラスチック廃棄物対策が国際的に喫緊の課題となっており、プラスチック汚染対策に関する国際条約の策定に向けた政府間交渉委員会が開催されるなど、国内外でその動きがかつてなく活発化している。循環経済への転換に向けたプラスチック循環の促進は世界共通の課題であり、多くの政策や規制の枠組みで推し進めているものの、化学物質管理の観点でプラスチック資源を安全に循環させるための科学的知見は不足しているのが現状である。プラスチックの製造には加工助剤や添加剤など様々な化学物質が使用されており、その種類は添加剤だけでも400種にも及ぶ。樹脂添加剤には有害性が懸念されるものも含まれ、添加剤の再生プラスチックへの混入は、プラスチック循環の促進を阻害する要因の一つと指摘されている。
 本研究は、スイス連邦材料試験研究所(Empa-ERAM)と共同で実施するもので、化学物質管理と両立した安全なプラスチック循環システムの設計に資する科学的知見の提供を目的とし、プラスチックを介した樹脂添加剤のフロー・ストックを推定・分析するための手法とデータを含む統合的な枠組みを開発する。日本をケーススタディとして開発した枠組みの適用を行い、その妥当性を検証する。

研究の性格

  • 主たるもの:モニタリング・研究基盤整備
  • 従たるもの:行政支援調査・研究

全体計画

 本共同研究では、スイス連邦材料試験研究所(Empa-ERAM)と国立環境研究所(NIES)の研究グループが協力分担し、プラスチックフローのマテリアルフロー分析(MFA)モデル開発(Empa-ERAMが担当)、プラスチック中の化学物質に関する情報整理(Empa-ERAMが担当)、プラスチック中添加剤の化学分析(NIESが担当)、日本の廃棄物管理システムへの適用(NIESが担当)、リサイクル過程での化学物質の分配と挙動の調査(NIESが担当)、曝露とリスク評価(Empa-ERAMとNIESで担当)など、異なるが相互補完の専門知識を結集させて研究を遂行する。若手研究者の国際感覚や研究能力の向上、ならびに新たな視点の獲得につながる機会の提供を重視し、相手国の化学物質規制やプラスチック再生品の利用・管理に関する最新情報や研究手法を共有するため、毎年、若手研究者を相互の研究機関に派遣し、カウンターパートと議論しつつ実務を進めるとともに、研究セミナー等で進捗を報告する。

今年度の研究概要

1)化学分析に基づくプラスチック中の特定化学物質含有量の検証
家電製品や自動車、容器包装等に由来するプラスチック再資源化物を対象に可塑剤や紫外線吸収剤、難燃剤等の定量分析を継続し、可能な場合は、含有添加剤の種類や含有量等について経年的な変化を把握する。とくに、ストックホルム条約の新規対象物質や候補物質に着目して分析を進める。また、優先度が高いと判断された試料についてノンターゲット分析を試み、これまで見過ごしていた添加剤の含有データを取得する。取得した実測データを以下の添加剤フローモデリングに提供する。これまでの成果を国際学会で発表するとともに、プラスチック循環における化学物質管理について参加者と意見交換する。

2)新しい統合MFAモデルの適用によるプラスチック中の特定化学物質のフロー推定と再生品における潜在的な特定化学物質の存在量の定量化
Empa-ERAMと共同で、令和6年度までに開発した統合MFAモデルを適用し、プラスチック中の樹脂添加剤のフロー分析を行う。開発した統合MFAモデルに対して、文献やヒアリングによって得られた製品カテゴリおよび樹脂種による樹脂添加剤含有レベルのデータを反映し、再生プロセスを通じた樹脂添加剤のフローを推定するとともに、それによる再生品への潜在的な樹脂添加剤の移行と再生品における存在量を定量化する。その結果を、1)で得られる由来製品ごとの再生プラスチック材の化学分析結果によって検証し、統合MFAモデルにおけるプラスチックの収集・処理・再資源化フローや樹脂添加剤含有レベルのデータの調整を行い、最終的な結果を得る。

3)資源効率と特定化学物質による潜在的な影響のトレードオフ評価
2)の結果をもとに、Empa-ERAMと共同で、プラスチック循環における化学物質問題のホットスポット/ブラインドスポットの事例を特定し、資源効率と化学物質による潜在的な影響のトレードオフを評価する。この事例分析結果をもとに、プラスチックのリサイクルと安全の確保の両立のために制御が必要となるフローを特定する枠組みを議論し、将来のプラスチックリサイクルに関する最適な戦略の方向性を政策立案者および関連業界へ情報提供する。

外部との連携

スイス連邦材料試験研究所(Empa-ERAM)

関連する研究課題

課題代表者

梶原 夏子

  • 資源循環領域
    試験評価・適正管理研究室
  • 上級主幹研究員
  • 博士 (学術)
  • 化学
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担当者