- 研究課題コード
- 2525CD002
- 開始/終了年度
- 2025~2027年
- キーワード(日本語)
- メチルシロキサン,環境スペシメンバンク,多媒体モデル,濃度予測,排出推定
- キーワード(英語)
- methylsiloxanes,environmental specimen bank,multimedia model,prediction of environmental concentrations,emission estimates
研究概要
ストックホルム条約の残留性有機汚染物質(POPs)への追加が検討されているメチルシロキサンについて、日本の主な沿岸域を網羅し、1980年代から採取・保存されてきた生物アーカイブ試料(付着性二枚貝)の測定により時空間分布及び汚染の歴史的トレンドを解明する。さらに、地理的分解能を有する多媒体環境動態モデル(G-CIEMS)を用いて、排出推定及び排出シナリオに応じた過去、現在、将来の環境濃度を予測し、実測値と比較・検討する。これらの調査・解析結果を国内外のメチルシロキサンに係る化学物質管理の推移と同時間軸で比較することで、我が国の環境中濃度がどのように変動・応答しているか定量的に解析する。
研究の性格
- 主たるもの:応用科学研究
- 従たるもの:基礎科学研究
全体計画
メチルシロキサンの環境中濃度及び組成の歴史的変遷の解明、および将来予測を目的とし、以下のサブテーマ(1)〜(3)を実施する。
(1) 生物アーカイブ試料を用いる環境変化の実測: 国立環境研究所が所有する1980年代から現在までの生物アーカイブ試料(付着性二枚貝)の測定により、対象シロキサンの時空間分布を解明する。対象シロキサンの分析法として、オンライン固相抽出-GC-MSを用いる高感度化を検証する(前処理用固相カートリッジや大量注入条件の最適化)。この分析法を用いて1980年代以降の各年代(5期間に区分)について代表地点を抽出し、生物アーカイブ試料とコントロール試料をセットで対象シロキサンについて測定する。東京湾等において海水と付着性二枚貝をセットで採取・測定し、得られた生物蓄積係数をモデル予測へ提供する。モデル予測の排出源寄与率を用いて各排出源が環境変化に与える影響を定量的に評価する。既往研究との比較により、Legacy POPsやPFAS等の時空間分布と比較する。
(2) 過去・現在・将来の排出推定: 産業系及び生活系について排出原単位を作成する。 環状シロキサン(D4/D5/D6)の排出源には日用品の使用及び産業活動を想定する。環状シロキサンの排出源データを収集・整理し、人口一人あたり排出係数やシリコーン製造工場からの排出量を推定し、(3)の多媒体モデルへ組み込む。排出推定を含む多媒体モデル予測値と実測値の比較・照合から得られた排出原単位について検証する。化粧品用途シロキサンの置換や欧州の規制を参考に、さらに将来ストックホルム条約に登録された場合を仮定して、過去、現在、将来における排出シナリオを作成して多媒体モデルへ組み込む。
(3) 多媒体モデル予測(G-CIEMS):実測試料に対応する環境中濃度をモデル予測し、実測値と比較するための数値をサブテーマ(1)に提供する。沿岸域でのモデル計算の諸設定、汽水域での脱吸着や粒子沈降をモデルで再現するための基本的な検討を行い、全国沿岸域を対象に現在のD4, D5, D6について多媒体挙動をモデル計算により示す。G-CIEMSを用いた全国沿岸域を含む化学物質の動態解析の初の試みとして、モデル予測と実測濃度を比較し、両者の合致あるいは乖離に影響を与える要因を検討する。さらに、(2)で作成する排出シナリオに応じて、過去及び将来の空間分布・多媒体挙動を解析する。
今年度の研究概要
サブテーマ(1)、(2)、(3)をそれぞれ分担する。(1)では、東京湾及びタイムカプセル事業と同地点(佐渡島・大洗海岸)において海水と付着性二枚貝をセットで採取し、対象シロキサンを測定して得られた生物蓄積係数を(3)のモデル予測へ提供する。(2)(3)では今年度はまず現在についての推定に取り組む。(2)では環状シロキサン(D4/D5/D6)について諸統計等に基づき面源及び点源の排出量を推定する。(3)では沿岸域でのモデル計算の諸設定、汽水域での脱吸着や粒子沈降をモデルで再現するための基本的な検討を行い、全国沿岸域を対象にD4, D5, D6について多媒体挙動および生物中濃度をモデル計算により推定する。
外部との連携
研究代表者:埼玉県環境科学国際センター、堀井 勇一
埼玉県環境科学国際センター、富山県立大学、公益財団法人東京都環境公社(東京都環境科学研究所)
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