- 研究課題コード
- 2426BY001
- 開始/終了年度
- 2024~2026年
- キーワード(日本語)
- ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物,有害性評価,免疫疾患,免疫抑制,免疫促進
- キーワード(英語)
- Per- and polyfluoroalkyl substances,hazard assessment,immune diseases,immunosuppression,immunopromotion
研究概要
有機フッ素化合物の一種であるペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物(PFAS)はコーティング剤や塗料等に含まれている化学物質であるが、毒性と難分解性という特性から現在では規制が強化されている。PFASの毒性については、発がん性のみならず免疫毒性も注目されており、特にワクチン効果の低下に関わる「免疫抑制」やアレルギーの悪化等に関わる「免疫促進」の作用が実験的研究および疫学研究で指摘されている。その一方で、相反する知見も報告されており、現状では免疫毒性に関する一定の見解は得られていない。この要因として、動物実験においてはほとんどが高用量曝露での評価であり実環境を反映していないこと、またワクチン効果に関しては適切な実験手法で評価されていないことなどが挙げられる。そこで本研究では、健康リスク評価に向けたPFASの有害性評価の問題点を解消し、PFASの免疫毒性について、ワクチン効果、アレルギー疾患、自己免疫疾患への影響に着目して評価することを目的とした。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:行政支援調査・研究
全体計画
本研究では、代表的なPFASであるペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)、ペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)を対象とする。実験動物はマウスを使用し、PFASは実環境レベル(日本の暫定目標値)を中心とした用量で飲水による経口曝露を行い、主に次の3つの課題について検討する。(1). 免疫抑制(PFASのワクチン効果への影響):PFAS曝露期間中にヒトのワクチンのモデル(主にmRNAワクチン)を投与し、抗体産生と細胞性免疫の変化を中心に解析する。(2). 免疫促進(PFASのアレルギー疾患への影響):PFAS曝露期間中にアレルゲン感作と惹起(吸入)によりアレルギー性喘息を誘導し、T細胞/B細胞応答、IgE抗体産生、肺の病理組織学変化等、アレルギー性炎症病態を解析する。(3). 免疫促進(PFASの自己免疫性関節炎症への影響):PFAS曝露期間中にコラーゲンの免疫または抗コラーゲン抗体投与により自己免疫性関節炎を誘導し、T細胞応答、炎症部位の病理組織学変化等、自己免疫性関節炎の病態を解析する。さらに、上記3つの病態モデルに加えて、ヒト由来株化細胞等を用いたin vitro実験により、PFAS曝露による細胞応答の変化について、遺伝子発現変動を中心に解析を進める。国環研では、主に(2)の実験とin vitro実験による評価、遺伝子発現の網羅的解析を担当する。
本研究は3年計画で、1年目にPFOA、2年目にPFOS、3年目にPFHxSを対象とした動物実験を行う。1〜2年目に飲水投与実験手法の検討を行った後、(1)〜(3)の実験を開始する。また、3年間を通じ、上記3物質以外の未規制のPFASも対象に含めたin vitro実験を実施し、免疫毒性に関わる遺伝子発現変動を中心に評価する。
以上のように、実環境を考慮した曝露用量を設定し、適切な実験手法にてPFASの有害性評価を行うことで、PFASの健康リスク評価の高度化に貢献する。
今年度の研究概要
2025年度は、前年度に明らかとなったPFAS汚染の原因解明のため、動物飼料等の分析も含めて検討する。曝露用量の設定を見直した上で、PFOAに加えてPFOSを対象とし、病態モデルを用いた評価を進める。国環研では、アレルギー性喘息に与える影響と関連する免疫機能や炎症性因子の解析、組織中PFAS含有量の分析等を実施する。また、PFOA曝露マウスの脾臓の遺伝子発現解析から、曝露の指標となる変動が観察された免疫関連遺伝子を抽出し、in vitro実験にも反映して評価を進める。
外部との連携
兵庫医科大学(研究代表者:黒田悦史教授)
備考
PFAS に関する総合研究(環境省委託)
- 関連する研究課題
- 27216 : PJ1_実環境および脆弱性を考慮した健康影響の有害性評価に関する研究
- : 環境リスク・健康分野(ア先見的・先端的な基礎研究)