- 研究課題コード
- 2527CD003
- 開始/終了年度
- 2025~2027年
- キーワード(日本語)
- エアロゾル,マルチモデル解析
- キーワード(英語)
- aerosol,multi-model analysis
研究概要
大気中の微粒子(エアロゾル)は、日傘効果や雲・降水との相互作用により、気候変動に大きく影響し得る。エアロゾルには直接大気に放出される一次エアロゾルに加えて、異なる起源からの気体成分から大気中で化学生成される二次エアロゾルがある。しかしながら、人工衛星による広域観測では、このようなエアロゾル種類に関する情報が得られないことが理解を阻んでいる。そこで本研究では、エアロゾルとその原料成分の衛星観測を、最先端の大気組成データ同化システムにより統合する。これにより、産業・農業や植物起源の原料物質の放出が二次エアロゾルがどこで、どの程度変動させてきたかを、現実に即した形で明らかにする。さらに、衛星観測データ同化と複数の全球化学気候モデルを複合した解析により、二次エアロゾルの変化が気候に及ぼす影響を領域から全球スケールで評価する。得られた知見を統合することにより、二次エアロゾルを通じた人間活動-自然システム-気候変動の間のつながりを明らかにする。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:
全体計画
本研究では、エアロゾル光学的深さ・原料気体成分の衛星観測を世界最先端の大気組成データ同化システムで統合し、二次エアロゾル生成の時空間分布を把握し、その変動要因を特定することを目的としている。衛星観測の統合により得られた情報と、海洋研究開発機構のCHASER、国立環境研究所のNICAM-Chemという2つの化学気候モデルを用いた解析から、二次エアロゾルの変化が放射収支、雲・降水に与えた影響を領域から全球スケールで評価する。海洋研究開発機構では、衛星観測データ同化システムの開発、二次エアロゾル生成の時空間分布の変動要因を特定する研究を行い、国立環境研究所では、CHASERと同等のシミュレーションが行えるようにNICAM-Chemを改良する。CHASERおよび改良したNICAM-Chemに再解析データセットから得られた排出量変化を入力し、二次エアロゾル変化に伴う気候影響を評価する。また、気候影響評価には、気候システムの二次エアロゾル変化に対する応答と内在する自然変動とを切り分ける必要があるため、わずかに異なる多数の初期条件から計算を開始するアンサンブル手法により、二次エアロゾル変化に対する応答を抽出する。
今年度の研究概要
大気組成データ同化システムの開発と衛星観測データの収集・解析を海洋研究開発機構で進める。国立環境研究所では、海洋研究開発機構のCHASERのコードを利用して、NICAM-ChemにCHASERと同等の二次エアロゾル生成プロセスを導入する。例えば、化学モデルのOHをエアロゾルモデルに受け渡したオンライン計算や、NICAM-Chemに含まれていない硝酸塩エアロゾルのプロセスを導入する。
外部との連携
海洋研究開発機構(研究代表者 関谷)
課題代表者
山下 陽介
- 地球システム領域
地球環境データ統合解析推進室 - 主任研究員
- 博士(理学)
- 地学,物理学,コンピュータ科学