- 研究課題コード
- 2325CD101
- 開始/終了年度
- 2023~2025年
- キーワード(日本語)
- 微小粒子状物質,二次有機エアロゾル,人為起源揮発性有機化合物,分子トレーサ,スモッグチャンバー
- キーワード(英語)
- Fine particulate matter,Secondary organic aerosol,Anthropogenic volatile organic compound,Molecular tracer,Smog chamber
研究概要
大気中に放出された揮発性有機化合物(VOC)の光化学反応により生成され、健康や気候に影響を及ぼす二次有機エアロゾル(SOA)のうち、人為起源SOAの発生量を大気観測から評価するために利用できるトレーサの数は不足している。本研究では、人間活動から排出される芳香族化合物およびアルカンを前駆VOCとしてチャンバ内およびフロー反応器内でSOAを発生させ、芳香族化合物由来の多官能基性分子(highly oxygenated molecule; HOM)を新規SOAトレーサの候補としてその化学構造とトレーサ/SOAの濃度比( fSOA)を決定するとともに、未知のアルカン由来SOAトレーサを探索する。さらに名古屋、長崎および福江島で大気PM2.5試料の捕集を行い、大気中でのSOAトレーサの挙動を調べ、新規SOAトレーサを用いた発生源解析の結果に基づいて大気モデルの検証を行う。一連の研究から実用的な新規人為起源SOAトレーサを提案することによって、人為起源SOA発生量の評価やVOC排出削減の監視を大気観測に基づいて精度よく実施できるようにする。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:応用科学研究
全体計画
本研究では、特定の前駆VOCからのSOAの発生量を推定するためのfSOA比を室内実験から決定し、トレーサの化学構造を解析する。また、SOAトレーサの発生源や化学的安定性を大気観測から評価する。さらに、室内実験と大気観測により推定されるSOA濃度を用いて大気モデルを検証することにより、新規人為起源SOAトレーサを提案しようとしている。
今年度の研究概要
2025年度には、実験及び観測によって得られたPM2.5フィルター試料の化学分析を進めて実用可能な新規トレーサについて検討するとともに、PM2.5観測結果のPMF解析に基づく発生源推定の結果によって大気化学輸送モデルの結果を検証し、大気化学輸送モデル精緻化に資する基盤的情報を提供する。
化学分析においては、誘導体化GC/MS分析、イオン分析、イオン移動度分析を引き続き行うとともに、炭素分析とLC/MS分析も試みる。チャンバー実験の分析結果から新規のトレーサ候補を絞り込み、新規トレーサが大気観測で検出されるかを調べると共に、検出された場合新規トレーサと従来人為起源SOAトレーサとの相関について調べることによって新規トレーサの発生源の検討を行う。また、同時に、フロー実験の化学分析の結果や、名古屋・長崎・福江での大気観測の化学分析の結果に基づいて長距離輸送中における有機エアロゾルの光化学的エイジング過程が有機トレーサに及ぼす影響に関して詳細を調べる。従来及び新規のトレーサを活用したPMF解析によって、名古屋・長崎・福江で観測されたPM2.5の発生源推定を実施するとともに、PMFの発生源推定の結果に基づいて大気化学輸送モデルの結果を検証することによって、大気化学輸送モデルの精緻化に資する基盤的情報を提供する。
外部との連携
飯沼賢輝(沖縄科学技術大学院大学)、中山智喜、池盛文数(長崎大学)
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