- 研究課題コード
- 2327CD006
- 開始/終了年度
- 2023~2027年
- キーワード(日本語)
- 腸管ホルモン,グルカゴン様ペプチド-1,ミルク,生理活性物質
- キーワード(英語)
- gut hormone,glucagon-like peptide-1,milk,bioactive molecule
研究概要
消化管から分泌されるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)などの腸管ホルモンは、代謝や摂食行動の制御に深く関与するホルモンである。特にGLP-1はその分泌が食物由来の栄養素や腸内細菌叢などの環境要因によって大きく変動することが知られており、肥満や糖尿病といった代謝疾患の予防、治療に向けた創薬標的として着目されている。近年、乳幼児用の粉末ミルクをマウスに投与するとGLP-1の分泌が強力に促進されることが分かったが、その原因物質は全く不明である。そこで、粉末ミルクを生化学的に分離し、GLP-1分泌を促進する新たな物質の同定を目指す。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:応用科学研究
全体計画
(1)粉末ミルクの分画サンプル投与時のGLP-1分泌の測定
粉末ミルク懸濁液を、水溶性成分と使用性成分への分画、分子量による分画など複数のパターンで分画し、その分画サンプルをマウス腸内に投与した際のGLP-1分泌を測定する。
(2)分画サンプル中に含まれる物質の網羅的解析
上記(1)でGLP-1分泌が促進された分画サンプルを、LC-MSやGC-MSなどの質量分析によって解析し、サンプル中に含まれる成分を網羅的に検出する。サンプル間の比較により、GLP-1分泌を強く促進する物質の候補を絞り込む。
(3)GLP-1分泌促進物質の同定とマウスの健康状態への影響の解析
上記(2)で候補となった物質をマウス腸内に投与し、GLP-1分泌を促進する単一の物質、または複数の物質の組み合わせを同定する。そして糖尿病モデルや加齢モデルなど、病態を模倣したマウスにこれらの物質を投与し続けた際、代謝や行動の指標に変化が生じるか解析する。
今年度の研究概要
超遠心を用いてミルクをクリーム層、中間層、下層に分画したところ、中間層を投与したときのみミルク原液投与時と同様のGLP-1分泌促進効果が見られた。そこで中間層に含まれる水溶性タンパク質が重要ではないかと考え、イオン交換クロマトグラフィーを用いて中間層をさらに複数に分画して投与する。
外部との連携
東京大学、岩手大学
- 関連する研究課題
- 26420 : PJ1_実環境および脆弱性を考慮した健康影響の有害性評価に関する研究
- : 環境リスク・健康分野(ア先見的・先端的な基礎研究)
- : 環境リスク・健康分野(ウ知的研究基盤整備)
課題代表者
原田 一貴
- 環境リスク・健康領域
統合化健康リスク研究室 - 研究員