- 研究課題コード
- 2325CD111
- 開始/終了年度
- 2023~2025年
- キーワード(日本語)
- 自閉スペクトラム症,炎症性腸疾患,脳腸相関,代謝疾患
- キーワード(英語)
- autistic spectrum disorder,inflammatory bowel disease,gut-brain axis,metabolic syndrome
研究概要
自閉スペクトラム症(autistic spectrum disorder: ASD)はコミュニケーション能力の低下や固執性の増加を伴う疾患であるが、炎症性腸疾患などの消化系疾患を併発する頻度が高いことも知られている。ASDの発症に関連する遺伝子がこれまで多く同定され、中でもヒストン修飾関連タンパク質などのエピゲノム調節因子をコードする遺伝子の関与が指摘されている。しかし、エピゲノム調節因子の遺伝子異常が消化系疾患を引き起こすメカニズムは不明である。消化系臓器は食生活、腸内細菌叢などの外部環境変化の影響を強く受ける部位であり、代謝プロファイルにも深く関連している。本研究では、近年ASDとの関連が示されたヒストン修飾因子であるKmt2c遺伝子の変異マウスを用い、エピゲノム異常が消化系、代謝系臓器にもたらす病態のメカニズム解明を目指す。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:応用科学研究
全体計画
(1)Kmt2c変異マウスの組織病理レベルの解析
小腸、大腸、肝臓、脂肪組織、骨格筋などの臓器について、組織化学染色により野生型マウスと比較して変化が生じているか解析する。またグルコース耐性テストを行い、糖代謝の変化の有無も調べる。
(2)Kmt2c変異マウスのメタゲノム、メタボロームの解析
糞便及び血液を採取し、糞便中の細菌叢組成を16SリボソームRNAメタゲノム解析、血漿中の代謝プロファイルをCE-MSおよびLC-MS解析により網羅的に調査する。
(3)Kmt2c変異マウスの脳腸相関異常の解析
脳と腸がホルモンや自律神経の機能を介して密接に相互作用している、という脳腸相関が近年提唱されている。Kmt2c変異マウスでは行動異常が生じることが既に知られていることから、エピゲノム・メタゲノム・メタボロームに加え、脳腸相関の破綻が抹消臓器の病態に関与しているか否かを生体イメージングにより解析する。
今年度の研究概要
組織化学染色の結果から、Kmt2c変異マウスでは体重低下と体脂肪量の低下、肝臓の脂質蓄積の低下を見出している。そこで肝臓でRNA-seqによるトランスクリプトーム解析を行い、脂質代謝に関連した遺伝子の発現変動が起きているかを解析する。変動遺伝子が特定できた場合には、そのエピゲノム制御機構についてChIP-seq解析を行う。
外部との連携
東京大学、理化学研究所脳神経科学研究センター、昭和大学
- 関連する研究課題
- 26420 : PJ1_実環境および脆弱性を考慮した健康影響の有害性評価に関する研究
- : 環境リスク・健康分野(ア先見的・先端的な基礎研究)
- : 環境リスク・健康分野(ウ知的研究基盤整備)
課題代表者
原田 一貴
- 環境リスク・健康領域
統合化健康リスク研究室 - 研究員