- 研究課題コード
- 2325CD110
- 開始/終了年度
- 2023~2025年
- キーワード(日本語)
- QSAR,ミジンコ,構造類似性,作用機構,慢性毒性
- キーワード(英語)
- QSAR,Daphnid,Structural similarity,Mode of action,Chronic toxicity
研究概要
化学物質の構造類似性による毒性予測の精度向上には作用機構も考慮する必要があるが、ミジンコに対する作用機構が明らかな物質は限られている。慢性毒性値と急性毒性値の比(急性慢性毒性比, ACR: Acute chronic ratio)が著しく高く(アミン類や一部殺虫剤など)、強い慢性毒性を示す可能性のある化学物質の構造類似性や作用機構の特徴が分かれば、優先的に慢性毒性試験を行うべき物質のアラートとして活用することができると考えられる。
そこで本研究では、化学物質のミジンコに対するACRを網羅的に算出して、ACRが高く(例えば>100)慢性毒性が強い物質を抽出し、定量的構造活性相関(QSAR)モデルにおける構造類似性による分類や、作用機構に基づく分類を行う。構造クラスの作用機構の推定や作用機構クラスの構造類似性の抽出など、作用機構と構造類似性の関連付けを行い、最後に慢性毒性未知の化学物質を用いて整理した構造クラス・作用機構クラスを検証する。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:応用科学研究
全体計画
(1)ミジンコに対するACRが高く、慢性毒性が強い物質の構造類似性と作用機構による分類
ミジンコに対し強い慢性毒性を示す物質を抽出するため、まず信頼性の高い生態毒性データとして、国立環境研究所の生態毒性予測システムKATEの開発に用いられた生態毒性データ(主に一般工業物質)と米国環境庁農薬プログラム部局の農薬生態毒性データ、国立医薬品食品衛生研究所のヒト用医薬品の環境毒性試験データから、最大無影響濃度(NOEC)が0.1 mg/L未満かつ急性慢性毒性比(ACR)が10以上の物質を収集する。そして収集した物質の構造類似性や作用機構の分類を行う。
(2)作用機構が不明な物質の作用機構の推定と構造類似性との関連付け
データ数が多いQSARクラスのミジンコに対する作用機構について、既存文献調査やKEGGなどのデータベースを用いて推定し、構造クラスと作用機構の紐づけを試みる。
(3)構造クラス・作用機構クラスの検証
(1)(2)によって整理した強い慢性毒性を示す構造クラス・作用機構クラスについて検証するため、これらのクラスに該当する慢性毒性未知の化学物質について慢性毒性試験を実施する。実験結果を受けて、さらにクラス分類を精査する。
今年度の研究概要
昨年度収集した、強慢性毒性(かつ高ACR)の農薬や医薬品の構造的特徴や類似性を明らかにするとともに、一級芳香族アミンなど強慢性毒性かつ高ACRの物質について、作用機構に関する情報収集を進める。
また、作用機構が明らかな農薬や医薬品から、類似する作用をターゲットとした別の物質や作用反応部位となる部分構造を持つ物質をPubChemなどの化学物質データベースから探索し、強慢性毒性を示すかどうか、必要に応じてミジンコ慢性毒性試験を行って確認する。
備考
昨年度登録忘れ
- 関連する研究課題
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- : 環境リスク・健康分野(ア先見的・先端的な基礎研究)