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木を数えて森を観る、炭素循環可視化システム開発(令和 6年度)
Counting Trees and Watching Forests, Development of Carbon Cycle Visualization System

研究課題コード
2426CD013
開始/終了年度
2024~2026年
キーワード(日本語)
機械学習,森林価値の可視化,森林成長予測モデル
キーワード(英語)
Machine Learning,Visualizing Forest Values,Forest Growth Prediction Model

研究概要

本提案は、取得が容易になった林分レベルの空中撮影画像やレーザー計測データから、森林炭素循環を毎木レベルでにおいて、成長も含めて推定し、可視化するシステムを開発する。バイオマス素材の需要増と森林環境税一律課税など新しい局面において、関係者と国民がより理解しやすい森林における現状と開発の「見える化」が求められている。国内における、より進んだ循環型社会への移行には、地域資源として国内森林を利活用することが不可欠である。本研究で開発するシステムには三次元点群に対する機械学習を応用し、樹木個体の部位ごとサイズを推定する。開発済みの個体レベル森林モデルを改良し、機械学習推定したデータにより、将来成長を予測する。モデルは間伐などの森林施業シナリオを推定でき、人為的かく乱も考慮した森林全体の炭素循環について評価を可能とする。社会実装だけでなく、社会的コンセンサスも目指し、このシステムは林業関係者や研究者だけでなく、森林に関心がない地域住民にもアピールするよう可視化にも重点を置く。そのために森林資源のモニタリングや可視化へのニーズを、ヒアリング調査やイベント時のアンケート調査などを通じて行う。これらの結果を可視化システムにフィードバックした上で、システムを広く提供することも研究の特徴の一つである。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

(1) 森林点群データを直接扱う森林モデルの開発
森林点群データから個体分割(樹冠分割)し、Google Mapで可視化することを目的として開発済みのフリーソフトlas2treeをベースとして、以下の研究開発を実施する。

a. 機械学習による部位セグメンテーションと部位バイオマス量推定
樹木点群の三次元自動解析システムを開発するため、国内森林(人工林、里山林)において、部位セグメンテーションと部位バイオマス量推定を、前述のlas2treeに組み込む。PointNet++(Qi et al., 2017b)を使った部位セグメンテーションについては開発を終えている(大場ら, 2023b)が、精度に改良の余地があることと、セグメンテーションからバイオマス量推定につなげるサブモデル開発が課題として残されている。精度改良についてはPointNet++のメタパラメーターの改善だけでなく、ViT系機械学習の応用を試行する。サブモデル開発は、必要な文献調査を行った上で、プログラム開発を行う。

b. 現地測定を交えたモデルパラメタリゼーション、炭素循環推定のチューニング
a.で出力される個体のデータ(座標、樹種、胸高直径など)がBGC-ESモデルのロジックと整合するか確認し、追加的な毎木調査とも確認を行う。その上で樹種、地域(あるいは林分ごと)BGC-ESのパラメーターを決定する。また後述の可視化コンポーネントを念頭に、毎木の炭素量変化を林分にスケールアップするサブモデルを開発する。土壌呼吸などの本提案には含まれていない炭素循環については、複数地域の実測データなどを取り入れ、精度を高める予定である。

c. 可視化他インターフェイスの改良
las2treeは、単一植生の人工林の分析しか行えず、必要最小限の機能とインターフェイスしか設けていない。これを以下の方針によって、林業関係者には動作できるように、一般の方には理解が可能なような可視化インターフェイスの導入を検討する。
・森林モデル内のパラメーターを自由に操作できる入力パレットの追加
・点群ビューアーを追加し、セグメンテーションを目視確認可能
・毎木にポップアップコメントを表示可能に
・林分の炭素循環の表示
これらの導入は、(2)のサイエンスコミュニケーションフェーズと双方向的に実施予定である。

(2)森林モデルの実用化と市民向けサイエンスコミュニケーションツールとしての活用

a. 林業者へのニーズ分析
森林計測の分野では、レーザー計測による標高推定や樹頂点推定などは広く知られ、現場に応用されているものの、本研究が実施する成長量予測などについては未だ研究段階といえる。過去に開発したlas2treeを用いて林業事業体デモを行った際も実用化には繋がりづらいく、何らかの障壁が存在することが示唆された。本パートでは、(1)で開発した技術を現場に適用するにあたっての課題や求められる機能に関するインタビュー調査を実施し、課題やニーズの整理を行う。

b. サイエンスコミュニケーションツールとしての活用可能性の検討
(1)で開発したシステムを用いて、都市住民などに三次元点群による森林の現状(管理不足による森林の過密化やナラ枯れなど)や、仮想的に間伐を入れた場合の成長変化に関するシミュレーション結果を提示する等の体験イベントを企画する。本体験への参加の前後で森林の価値がどのように再評価されるかをアンケート調査による定量的な把握を行う。

今年度の研究概要

(1)では、機械学習による部位セグメンテーションと部位バイオマス量推定として、国内森林において、部位セグメンテーションと部位バイオマス量推定のlas2treeへの組み込みを試行する。合わせて(2)と連携して可視化インターフェイスの改良方針に関する情報収集を実施する。(2)では、林業者へのニーズ調査として、インタビュー調査(2社程度を想定)を実施する。また、現行バージョンを用いて都市部における環境イベントへの出展を行い、一般住民視点によるインターフェイス改良方針に関する調査を実施する。

外部との連携

東北工業大学(研究代表者)

課題代表者

中村 省吾

  • 福島地域協働研究拠点
    地域環境創生研究室
  • 主任研究員
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