- 予算区分
- 挑戦的研究(萌芽)
- 研究課題コード
- 2224CD023
- 開始/終了年度
- 2022~2024年
- キーワード(日本語)
- 妊娠期曝露,ヒ素,DNAメチル化,腸内細菌
- キーワード(英語)
- Gestational exposure,Arsenic,DNA methylation,Gut bacteria
研究概要
有害物質に脆弱と考えられる胎児期の化学物質曝露が、すぐには顕在化せず成長後に疾患として影響が現れる「後発的疾患」を誘導するという実験的研究成果が次々と報告されている。後発的疾患の早期診断や予防医学の確立に向けて、メカニズム解明研究が盛んに行われているが、いまだ不明な点が多い。本研究では、胎児期のヒ素曝露により成長後に肝腫瘍が増加するという実験系を用い、血液及び糞便DNAの経時的な次世代シークエンス解析から、生後の環境要因による変化を乗り越えて持続する血液DNAメチル化変化及び腸内細菌叢変化を解析し、メカニズムに基づく新規予防医学の確立に向けた情報を提供する。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:技術開発・評価
全体計画
本研究では、雄が肝腫瘍を発症しやすい系統であるC3Hマウスの母親(F0)の妊娠中にヒ素(亜ヒ酸ナトリウム)を飲水投与すると生まれた雄の仔(F1)が、74週齢で対照群と比較して肝腫瘍を高率に発症するという実験系を用いて、以下の研究を実施する。
2022-2023年度
妊娠8〜18日まで85ppmのヒ素を含む水を与えたC3Hマウス(ヒ素群)とヒ素を含まない水を与えたC3Hマウス(対照群)から生まれた仔において、個体識別後、離乳時から4か月ごとに、尾から血液、また糞便を採取し、フリーザーで保管する。74週齢での肝腫瘍の有無と対応させ、保管しておいた各週齢の血液及び糞便からDNAを抽出し、糞便中腸内細菌叢解析及びDNAメチル化解析をおこなう。DNAメチル化解析は、網羅的なメチル化解析法の1つであるReduced Representation Bisulfite Sequencing(RRBS)法で実施する。糞便中腸内細菌叢は、16S rRNAのV4領域を次世代シーケンサーでシーケンスし、QIIME2を用いた相同性検索及び系統分類解析を実施する。これらの経時的な解析から、持続したDNAメチル化変化X及び腸内細菌叢変化Yを探索する。
2024年度
持続した変化X及びYが見つかった場合、遺伝子の発現調節に関する分子や、腸内細菌産生物や代謝物の機能について、細胞増殖などがんの形成及び進行への影響に焦点をあて細胞株などを用いて解析する。
今年度の研究概要
2024年度は、妊娠8〜18日まで85ppmのヒ素を含む水を与えたC3Hマウス(ヒ素群)とヒ素を含まない水を与えたC3Hマウス(対照群)から生まれた仔や孫で検討を続ける。同一個体ごとに、離乳時から4か月ごとに、糞便及び、尾から血液を経時的に採取する。74週齢での肝がんの有無と対応させ、各週齢の糞便及び血液からDNAを抽出する。DNAメチル化解析は、網羅的なメチル化解析法の1つであるReduced Representation Bisulfite Sequencing(RRBS)法で実施する。対照群に対してヒ素群でメチル化が10%以上上昇または低下したCpGをDifferentially Methylated Cytosine (DMC)とし、各CpGのannotation の付与はHomerで行う。糞便中腸内細菌叢は、16S rRNAのV4領域を次世代シーケンサーでシーケンスし、QIIME2を用いた相同性検索及び系統分類解析を実施する。これらの経時的な解析から、持続したDNAメチル化変化X及び腸内細菌叢変化Yを探索する。
- 関連する研究課題
- 26420 : PJ1_実環境および脆弱性を考慮した健康影響の有害性評価に関する研究
- : 環境リスク・健康分野(ア先見的・先端的な基礎研究)