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イオン性有機汚染物質の食物連鎖蓄積モデルの開発と生態リスク評価(令和 6年度)
Development of a food chain accumulation model for ionic organic pollutants and ecological risk assessment

研究課題コード
2325CD014
開始/終了年度
2023~2025年
キーワード(日本語)
生物濃縮,タンパク質結合,毒性,受容体,野外調査
キーワード(英語)
bioconcentration,protein binding,toxicity,receptor,field survey

研究概要

パーフルオロおよびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)の生物濃縮性・毒性の予測精度の向上は世界的な課題であり、新たな予測手法の開発が求められている。申請者らはタンパク結合定数がPFASの生物濃縮性予測に有効であることを明らかにしたが、PFAS の毒性影響評価、実環境中の生物への適用・検証は今後の課題であった。本研究では「PFAS の生物濃縮性・毒性はタンパク結合エネルギーで説明できるか」を学術的「問い」とし、分子レベルでの科学的根拠に基づいた予測手法を開発することを目的とする。そのために結合実験、暴露実験、ドッキングシミュレーションを統合して各生物へのPFASの濃縮性・毒性を明らかする。これらの理論研究を適用するため野外調査を実施し、食物連鎖蓄積モデルを構築して生態リスクを評価する。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:基礎科学研究

全体計画

本研究では、PFASの生物濃縮性・毒性を支配する法則を結合エネルギーの観点から分子レベルで明らかにし、実環境中の生物へ適用してリスク評価を行う。そのために濃縮性・毒性の予測手法開発、野外調査、機械学習を応用した食物連鎖の高精度予測手法の開発を行う。以下の4課題として進める。
(1) 生物濃縮性評価と種間差の解明。魚類を用いた生物濃縮試験に基づき、移行動力学パラメータや生物濃縮係数とタンパク結合定数との関係を解析する。また、野外で採取した生物を対象に、アルブミン・脂肪酸結合タンパクについてホモロジーモデリングによりタンパク立体構造を再現する。このタンパク構造に対して、PFASとのドッキングシミュレーションによる結合エネルギーに基づき生物濃縮係数の予測を行い、野外調査の結果で予測精度を検証する。
(2) 毒性評価と種間差の解明。(1)の生物濃縮実験と同様の系で用量反応関係や毒性影響値を明らかにする。また、PFASの受容体であるPPARを用いたin vitro実験を行い、受容体レベルでの毒性値(EC50)を明らかにし、これに基づきPPARと生体との毒性反応の関係を明らかにする。また、野外湾調査で採取した生物を対象に、ホモロジーモデリングにより各生物のタンパク立体構造を再現し、多数のPFASとのドッキングシミュレーションにより結合エネルギーを推定し、毒性発現する濃度を予測するとともに、種間差を明らかにする。
(3) 野外調査による実態解明。生物中の多数のPFASを一斉に測定するための分析方法を開発する。ついで野外調査(東京湾を対象)にて水・底質・生物を採取し、各媒体中のPFASの濃度を測定し、湾内の空間分布や生物中濃度、また過去に実施した調査との比較により経年変化を明らかにする。胃内容物、炭素・窒素安定同位体比から捕食-被食関係を推定し、PFASの食物連鎖蓄積の解析を行う
(4) 食物連鎖蓄積モデルの構築とリスク評価。東京湾における水理学的特徴、棲息生物、PFASの取り込み速度定数などモデルの基礎的パラメータを収集・整理する。野外調査で推定した捕食-被食関係をもとに、食物網を推定し、食物連鎖蓄積モデルを構築する。さらに、東京湾調査で得た水・底質中PFAS濃度を入力値として予備的なシミュレーションを実施し、生物中濃度の予測精度を確認する。その後、機械学習を用いて食物連鎖蓄積モデルの精度を向上させ、生物ごとのPFAS濃度分布を明らかにする。この濃度分布と(2)で得た毒性値に基づき確率論的リスク評価を実施する。

今年度の研究概要

課題(4)食物連鎖蓄積モデルの構築とリスク評価を担当し、食物網構造を推定し食物連鎖蓄積モデルを構築する。さらに、環境中濃度を入力値として予備的なシミュレーションを実施し、生物中濃度の予測精度を検証する。

外部との連携

研究代表者:熊本県立大学、小林 淳
東京農工大学、東海大学

関連する研究課題

課題代表者

櫻井 健郎

  • 環境リスク・健康領域
    リスク管理戦略研究室
  • 室長(研究)
  • 博士(工学)
  • 工学,化学
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