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ナノプラスチックの発達神経毒性影響に関する総合的研究(令和 6年度)
Comprehensive Study of the Developmental Neurotoxic Effects of Nanoplastics

予算区分
基盤C
研究課題コード
2426CD006
開始/終了年度
2024~2026年
キーワード(日本語)
ナノプラスチック,脳,細胞
キーワード(英語)
Nanoplastics,Brain,Cell

研究概要

マイクロプラスチックよりも粒径の小さいナノプラスチックは多くの細胞に取り込まれ、高い有害性を示す可能性が指摘されている。本研究では、蛍光標識体と透明化技術を用いてナノプラスチックの脳への移行を網羅的に解析するとともに、発達期曝露による動物個体レベルでの有害性検討を組み合わせることで、ナノプラスチックの発達期の脳神経系への移行量と有害性の因果関係を明らかにする。また、ヒト培養神経細胞を用いた細胞レベルの有害性評価と脳移行量解析を行い、総合的にヒト健康リスク評価に必要な情報を提供する。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

サブ1:マウス発達期の脳内移行量解析【脳移行量評価に最適な蛍光標識体と透明化技術の組み合わせの検討】マウス生後1日令の新生仔に対して緑・赤・青色蛍光標識された50 nmもしくは500 nm粒径の2.5%ナノプラスチック溶液を50μl経口投与して、24時間後に屠殺して臓器を取り出して動態解析を行う。摘出した臓器を透明化し、蛍光顕微鏡による観察に最適な透明化法を探索する。新生仔で確立した手法を胎仔期曝露にも応用し、妊娠中の母体にナノプラスチックを投与した場合の胎仔への移行量について検討を進める。透明化組織の観察法に関しては主に研究室で保有している共焦点レーザー顕微鏡を使用する。【時系列変化を定量解析する手法の開発】:組織透明化は局在分布を理解する上で極めて有効であるが、定量性において不十分な点がある。ホモジナイズした脳組織に透明化試薬を加えることで、蛍光分光光度計により高感度かつ定量的にナノプラスチックを検出し、投与後の時間経過や粒径の違いによる脳への移行量の違いを評価できる手法を開発する。
サブ2:マウス行動評価【社会的コミュニケーションへの影響評価】ナノプラスチックを曝露された個体を用いて、母子間の社会的コミュニケーション指標の1つである新生仔期の超音波発声を記録し、波形解析を行うことで行動異常を検出する。【全自動行動記録解析装置IntelliCageを用いた網羅的行動評価】基盤的活動量から空間学習能力、行動柔軟性等の高次脳機能まで、データ駆動型アプローチにより取りこぼしなく行動異常を検出する。
サブ3:In vitro影響解析【細胞質内への取込みと細胞内分布】分化誘導をかけたヒト中脳由来不死化細胞 (Lund Human Mesencephalic(LUHMES)細胞)を用いて50nm、500nmのナノプラスチックの細胞質への取り込みと細胞内分布を検討する。予備実験の結果、粒径により細胞内取り込み量や細胞内分布に大きな違いが生じることが判明しており、細胞小器官マーカーとの2重染色を行うことで、蓄積が起こる細胞小器官や蓄積量に関する情報を得る。【形態解析による毒性評価】LUHMES細胞は分化誘導をかけると神経突起伸長するため、伸長への影響を調べることで神経発達評価が可能である。共焦点レーザー顕微鏡を用いて細胞形態画像を取得し、神経突起伸長への影響を解析する。【毒性メカニズムの解明】クラスリンもしくはカベオリン依存的なエンドサイトーシスの阻害薬を投与することで、細胞内移行が毒性メカニズムの中心であることを検討する。

今年度の研究概要

本年度は標準粒子の作製・蛍光標識と、脳移行量評価に最適な蛍光標識と透明化技術の組み合わせの検討を行う。また行動評価系の確立に関してもスタートアップを行う。さらに神経細胞を用いて、細胞質内への取り込みと細胞内分布の解析を行う。

関連する研究課題

課題代表者

前川 文彦

  • 環境リスク・健康領域
    生体影響評価研究室
  • 上級主幹研究員
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担当者