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令和5年度化学物質の内分泌かく乱作用に関する試験法開発に係る業務(令和 5年度)
FY2023 Contract work on test method development for endocrine disrupting chemicals

予算区分
BY 環境-委託請負
研究課題コード
2323BY005
開始/終了年度
2023~2023年
キーワード(日本語)
環境ホルモン,試験法,メダカ,ミジンコ
キーワード(英語)
endocrine disrpting chemicals,testing methods,Japanese medaka,daphnids

研究概要

 環境省では、令和4年10月に化学物質の内分泌かく乱作用に関する今後の対応—EXTEND2022—」を取りまとめ、 EXTEND2010(平成22年7月取りまとめ)およびEXTEND2016(平成28年6月取りまとめ)における取組の成果と課題を踏まえ、作用・影響の評価及び試験法の開発や環境中濃度の実態把握及びばく露の評価、リスク評価及びリスク管理、化学物質の内分泌かく乱作用に関する知見収集ならびに国際協力及び情報発信の推進 を引き続き進めていく 方針を掲げている。このため、まだ十分確立されていない試験法について、引き続き開発を進める必要があるとともに、OECD等で進められている試験法確立に今後も積極的に協力し、国際的な貢献を行う必要がある。
 本業務は、これらを踏まえて、主に魚類、及び無脊椎動物を対象とした各種試験の実施や情報収集、必要な検討を通して、試験法の確立及び影響を評価するため必要な基礎的知見の集積を行い、試験の開発・適正化に向けた取組みを進めるととともに、併せて OECD 、日英 ・日米二国間協等の国際的な取組への貢献に資することを目的として実施するものである。

研究の性格

  • 主たるもの:行政支援調査・研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

(1)魚類及び無脊椎動物を用いた試験法開発に係る業務
1)魚類試験法開発に係る業務
・抗男性ホルモン様化学物質検出のための試験法開発
 化学物質の抗男性ホルモン様作用の検出を目的とする幼若メダカ試験について 、OECDガイダンスドキュメントとしての承認 に向けて、環境省が別途発注する予定の「日英・日米二国間協力及び OECD 等への国際協力推進に係る業務」を請け負う機関と ともに、検証レポートおよび試験法案への 各国からのコメントへの対応や修正を行う。また、EXTEND 2022 の試験管内試験において抗男性ホルモン様作用が疑われる1物質について、試験を実施することで検証を進める。さらに、これまで 幼若メダカ試験の検証で利用されているメダカの系統とは異なる系統での試験実施の可能性について
引き続き検討を行う。
・MEOGRT 試験(OECD TG240)の 円滑な実施に向けた指導・支援、改訂に関する検討
 環境省が別途実施する「令和5年度及び令和6年度化学物質の内分泌かく乱作用に関する第二段階生物試験 」において メダカ拡張一世代繁殖毒性試験(MEOGRT、OECD TG240)を実施する機関に対し、当該機関による試験の準備及び実施の進捗状況に即して、試験の具体的な実施方法、試験結果の整理・解釈の方法等について技術的な指導、支援、実施における留意事項の整理等を行う。
また、OECD に改訂提案をおこなっていることから、引き続き 米国環境保護庁USEPA の担当者と改訂案について協議を行い、 改訂案の承認に向けて意見収集やコメントへの対応・修正を行う 。
・ゼブラフィッシュ拡張一世代繁殖試験の検証に関する検討
 欧州の提案により OECD において ゼブラフィッシュを用いた拡張一世代繁殖試験の試験法の検討が進めら れており、Phase 2での検証機関の募集を行っている。メダカ拡張一世代繁殖試験 MEOGRT) の開発・検証の実績 を踏まえ 、魚種間の感受性比較などの基礎的情報を得るため、 前年度は 提案国の提示した手順案に基づいて標準物質1物質 用いて 検証を実施した。本年度は、引き続き 別の標準物質 1 物質を用いて検証を実施する。
・魚類胚を用いた内分泌かく乱化学物質検出試験法の検討
 欧州などでは、試験法の合理化や動物愛護の観点から、魚類の生体ではなく、胚を用いた試験法の利用が進んでおり、OECD TG251として承認されたRADARアッセイ(Rapid Androgen Disruption Activity ReporterRapid Androgen Disruption Activity Reporter:イトヨのスピギン-GFP遺伝子を導入したメダカ胚を用いた迅速アンドロゲン活性試験)のほか、REACTIVアッセイ(Rapid Estrogen Activity Tests In VivoRapid Estrogen Activity Tests In Vivo:卵膜タンパク前駆物質コリオジェニン-GFP遺伝子を導入したメダカ胚を用いた生体を用いた迅速エストロゲン活性検出試験)がOECDテストガイドラインとして承認予定である。今年度は、これらのアッセイ系のEXTEND2022の枠組みにおけるWeight of Evidenceのデータの1つとしての利用可能性について検証を行う。専門家の意見も踏まえて選定した陽性候補物の試験を行う。
・メダカを用いた甲状腺ホルモン様作用検出手法に関する検討メダカを用いた甲状腺ホルモン様作用検出手法に関する検討
 欧州などでは、試験法の合理化や動物愛護の観点から、同一試験生物種を用いて内分泌かく乱作用を網羅的に検出するために、魚類を用いた甲状腺ホルモンの検出のための試験法開発が求められている。魚類では、欧州でゼブラフィッシュを用いた甲状腺ホルモン作用を検出するための試験法が提案されているものの、わが国で内分泌かく乱化学物質の化学物質の魚類魚類試験法試験法(OECD TG229、TG240など)として主に用いられているメダカについては、甲状腺ホルモン作用を検出するための試験法はないことから、専門家の意見も踏まえて、当該試験法についての文献調査による情報、収集ならびに実験的検討を行う。
2)無脊椎動物試験法開発に係る業務
・幼若ホルモン作用のスクリーニング試験法の開発
 過年度業務において、幼若ホルモン作用のスクリーニング試験法のプロトコール案を作成し、OECD テストガイドライン化に向け、ノンケミカルストレスの影響を評価する検証実験と、複数試験機関での国内外リングテスト、専門家から意見があった殺虫剤などの農薬を含めた候補物質について、in silico解析やin vitro試験結果との関係性を考慮しながら試験や、統計解析手法の妥当性の検討をしてきた。今年度はこれらの結果について、過年度業務の検証実験結果も含めて取りまとめた検証レポートを作成し、OECD VMG-ecoの専門家へのコメント対応を行う。これをOECDのVMG-ecoに提出し、ガイドライン承認会議での承認を目指す。また、EXTEND2022 の枠組みにおいて抗幼若ホルモン様作用物質の検出法がないことから、これまで開発したスクリーニング試験法などを参考にして、幼若ホルモンの生合成阻害作用ならびに幼若ホルモン受容体阻害作用を検出するため手法について引き続き検討を進める。また、過年度業務の検証実験結果については、契約後提示する。
・脱皮ホルモン作用のスクリーニング試験法の開発
 化学物質の脱皮ホルモン様作用の確認のための第二段階のin vivo 試験法としては、OECD TG211 においてミジンコの脱皮数をエンドポイントとすることが有効であるが、第一段階のスクリーニングを目的とする試験法の確立は定まっていない。化学物質の脱皮ホルモン様作用のスクリーニングを目的とする試験法の確立に向けて、化学物質(2物質程度)を用いて引き続き検証試験を実施する。なお、試験物質については、請負者が、既存知見等を踏まえて脱皮ホルモン様作用が懸念される物質を選定し、専門家の意見を確認した上で、環境省担当官の指示に従い確定する。
3)最新情報の調査収集
 内分泌かく乱化学物質に関する最新の国際動向を調査するため、請負者が、欧米において開催される国際学会等に参加し、現地において必要な情報の収集等を行う。

(2)試験法の確立等に関する検討班会議への報告に係る作業
 別途環境省が実施する「令和5年度化学物質の内分泌かく乱作用に関する日英・日米二国間協力及び OECD等への国際協力推進に係る業務」(以下「令和5年度二国間業務」という。)において、魚類、及び無脊椎動物を用いた試験法に関する専門家検討班会議を設置し、上記(1)の結果、及び今後のスクリーニング・試験法開発について検討するとともに、成果を評価することを予定している。この会議に提出するための資料を作成の上、 同会議に請負者が出席し、必要に応じて資料に関する説明、質疑応答を行う。

(3)OECD 関連会議 への報告事項に係る打合せの実施
 (1)、1)及び2)の取組みについては、別途環境省が実施する「令和5年度二国間業務」において、OECD関連 会議への報告を予定している。 請負者は、業務の進捗状況等を踏まえて、上記業務において開催する OECD関連会議 に係る国内専門家会議に必要な資料を作成し、参加する。

(4)化学物質の内分泌かく乱作用に関する検討会、国際会議等への報告に係る作業
 上記(1)〜(3)について報告を行うため、環境省が別途開催する「化学物質の内分泌かく乱作用に関する検討会に提出するための資料を作成の上、同検討会に出席し、必要に応じて資料に関する説明、質疑応答を行う。また、(1)の1)及び2)については、別途環境省が実施する「令和 5 年度二国間業務」において、OECD の関連会議((3)の OECD の関連会議と同一)及び日英二国間会議で環境省が別途指定した専門家が報告することを想定しているため、本業務の請負者は環境省担当官と調整の上、必要な資料の準備・作成等、報告に係る補助作業を行う。

(5)報告書の作成
 上記(1)〜(4)の結果を取りまとめた報告書(A4版、150 頁程度)を3部作成する。

今年度の研究概要

同上

関連する研究課題

課題代表者

山本 裕史

  • 環境リスク・健康領域
  • 領域長
  • Ph.D.
  • 化学,生物学,土木工学
portrait

担当者