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国内の野焼きで発生するガス状総水銀の定量・安定同位体組成キャラクタリゼーション(令和 5年度)
Quantitative and Stable Isotope Composition Characterization of Gaseous Total Mercury Generated by Open Burning in Japan

研究課題コード
2223NA001
開始/終了年度
2022~2023年
キーワード(日本語)
水銀,野焼き,安定同位体,阿蘇地方
キーワード(英語)
mercury,open burning,stable isotope,Aso region

研究概要

 本研究は、毎年地域の行事として行われている野焼きから発生・沈着するガス状総水銀(TGM:Total Gaseous Mercury)を定量、及びその安定同位体組成を評価することを通し、地球上で循環する水銀の動態に関する理解を深めると共に、基礎情報を構築する。
 具体的には1.野焼きの焼失面積を衛星画像、及びUAVによる空撮より得られた画像の解析で求め、2.野焼きが実施される前の単位面積あたりに含まれる炭素量を現場で得た植物サンプルから推定し、3.野焼きにより放出される水銀と炭素成分量、及び水銀の安定同位体比を現地での地上観測・サンプリングとサンプルを持ち帰った後の化学分析で求め、4. これらの3つ掛け合わせることでTGM放出量を推定、及び野焼き由来の水銀安定同位体組成のキャラクタリゼーションを行う。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

 現在、特定水銀使用製品(「水銀による環境の汚染の防止に関する法律施行令」第1条に定められた特定水銀使用製品及びこれらを部品として使用する製品)にのみ限定して規制する水俣条約の有効性評価が重要視されている。
 この社会的ニーズの中、環境中の水銀の動態を濃度観測のみで把握するには限界がある。この限界をブレイクスルーする可能性を秘めた手法として近年注目されているのが自然界の水銀に含まれる7種類の安定同位体(196Hg, 198Hg, 199Hg, 200Hg, 201Hg, 202Hg, 204Hg)の組成に関する研究である。この測定ではマルチコレクター型誘導プラズマ質量分析計(MC-ICP-MS)を用い、従来の水銀濃度情報に加え、最大で7つの水銀安定同位体比を同時に測定できる利点がある。この安定同位体組成の時空間的な変動から水銀動態の新たな知見獲得が期待されている。

今年度の研究概要

 阿蘇地方での野焼きは毎年春(主に3月)の日曜に実施され、各集落・牧野組合が主体となって行っている。数十箇所で実施される野焼き場所の中から車載装置によるサンプリングが実施可能な場所を選定・決定してサンプリングを行う。このサンプリングに関しては事前に自治体、及び牧野組合の承諾を得てから行う。サンプリング機材は申請者が国立水俣病総合研究センターの所内研究費で既に調達したものを用い、申請者所属先からの官用車1台、そして本申請で予定するレンタカー1台の合計2台により1箇所2サンプリングを同時に行う。車1台には水銀濃度分析用サンプリング機材、水銀安定同位体分析用サンプリング機材、そしてガス成分分析用機材一式を車載し、発生するガス(煙)の風下に常に移動しながらサンプリングを行う。もう1台の車には濃度、及び水銀安定同位体分析用の機材のみ車載しサンプリングを行う。
 また野焼きが行われる前日に現場を訪ね単位面積あたりの炭素量調査のためのサンプリングを行う。採取した植物サンプルは実験室に持ち帰り、乾燥後、重量を測定し粉砕、そして炭素量の元素分析を行う。野焼き翌日にはUAVを飛行させて上空から写真撮影を行い、サンプリングした区域の焼失面積の計測を行う。このUAVは今回、共同研究者が所有するものを用いる。この一箇所における一連のサンプリングと撮影を1パッチの実験と定義すると、1季節で3パッチの調査を行う。本申請では本年度末に行われる野焼きのそれぞれのパッチでの調査を実施するために必要な旅費と化学分析にかかる経費を計上する。

外部との連携

本研究は国立水俣病総合研究センターが中心となり、国立環境研究所に加え、木更津工業高等専門学校と連携し実施する。

課題代表者

亀山 哲

  • 生物多様性領域
    生態系機能評価研究室
  • 主幹研究員
  • 農学博士
  • 生物学,情報学,農学
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