- 研究課題コード
- 2125SP030
- 開始/終了年度
- 2021~2025年
- キーワード(日本語)
- 化学物質,有害性,曝露,環境動態,リスク指標
- キーワード(英語)
- chemicals,hazard,exposure,environmental fate and transport,risk index
研究概要
推進戦略に基づき、化学物質等の包括的なリスク評価・管理の推進に係る研究に取り組む。
具体的には、人間活動に起因する化学物質の大部分を評価・管理するため、対象物質を製造・使用されている全懸念化学物質に広げることを目指すとともに、脆弱な集団や生活史の考慮、包括的計測・数理モデル群の高度化等により、これまで定量化が困難であった影響・リスクの評価を行う。
これらの取組により、包括的な健康リスク指標及び生態リスク指標の構築に貢献するとともに、リスク評価に関する事業等を通じて環境省等が実施する化学物質等の汚染要因の管理方策の策定・改正に貢献する。
研究の性格
- 主たるもの:応用科学研究
- 従たるもの:基礎科学研究
全体計画
人間活動に起因する化学物質の大部分を評価・管理するため、対象物質を製造・使用されている全懸念化学物質に広げることを目指すとともに、脆弱な集団や生活史、これまで定量化が困難であった影響の評価に取り組む。
本研究プログラムでは、以下の 5つの課題に取り組む。
1.実環境および脆弱性を考慮した評価・予測法による、化学物質等に起因する健康影響の有害性評価。
2.高感受性の種や生活史等の脆弱性を勘案した評価・予測手法による、化学物質やその他の環境要因に起因する生態系影響の有害性評価と要因解析。
3.全懸念化学物質の多重・複合曝露の把握を目指した、少量多品種化問題への対応も見据えた包括的な計測手法の開発。
4.全懸念化学物質のヒト・生態系への曝露量の把握を目指した、数理モデル的手法による排出および環境動態の推計手法の開発。
5.包括健康リスク指標と包括生態リスク指標の例示、ならびにリスク評価事業を通じた国内の化学物質管理や国際社会の指標構築への貢献。
1については、実環境および脆弱性を考慮した評価・予測法により、化学物質をはじめとする環境要因に起因する健康影響の有害性評価を実施する。具体的には、3年目までに、疾患等をエンドポイントとし、実環境での曝露や脆弱性(基礎疾患や年齢等)を考慮した健康有害性評価手法を確立する。また、メカニズムを解析し、健康有害性を反映する影響指標の探索を行う。5年目までに、確立した評価法を用いて、化学物質の生涯・将来世代に与える健康有害性およびそれを予測しうる影響指標に関する新たな知見を見出し、包括健康リスク指標の開発や疫学研究への活用に貢献する。
2については、脆弱性を勘案した評価・予測手法により、化学物質をはじめとする環境要因に起因する生態系影響の有害性評価と要因解析を実施する。具体的には、3年目までにフィールドでの群集構造変化などの調査や記録に基づき、生態系への有害影響を確認し、現地でのかく乱要因(化学物質や環境要因)の抽出を目指す。また、実験室内での複合要因解析、かく乱要因によって影響を受けやすい生活史や種を評価する手法を開発する。5年目までに、実験室内での評価や、フィールド調査の知見、数理・統計モデルにより、影響を受けやすい種や生活史等の脆弱性を勘案した生態系有害性の評価を行う。さらに、野外の群集構造変化を的確に表す、及び影響を受けやすい種や生活史を考慮した包括生態リスク指標の開発に貢献する。
3については、化学物質の多重・複合曝露による懸念の把握対象を拡大することを目指して、少量多品種化問題への対応も見据えた包括的な計測手法を開発する。具体的には、3年目を目途に、親水性物質分析法の高度化、測定困難物(高極性物質や高分子型添加剤、分離困難物等)の前処理・機器測定法開発に取り組む。5年目までに、開発した分析手法を応用し、生理活性共通基本骨格を有する物質の包括分析法を併用したMulti-target/Wide-range analysisを提案し、エコチル調査や、包括健康・生態リスク指標において活用可能な計測手法として貢献する。
4については、全懸念化学物質の環境動態の把握を目指した数理モデル的手法を開発することで、ヒト・生態系への曝露量の推計に貢献する。具体的には、3年目までに用途情報に着目して代替物群も含めた健康・生態リスクを評価するための排出・環境動態予測手法を構築する。5年目までに、同一用途物質やイオン性化学物質などへの拡張により新規化学物質も含めた大部分の化学物質に対して適用可能な、人工圏からの排出および包括的な環境動態、生物移行・生物蓄積を把握する手法を提示し、包括健康・生態リスク指標において活用可能な手法として貢献する。
5については、1〜4の課題から提案された科学的知見と情報を取りまとめて、包括健康リスク指標と包括生態リスク指標を例示することで、リスク評価事業を通じて国内の化学物質管理や、国際社会の指標構築に貢献する。具体的には、3年目までに各課題の中間報告をとりまとめて、包括健康リスク指標および包括生態リスク指標への活用可能性を検討する。5年目までに、各課題からの科学的知見や情報をとりまとめて包括健康リスク指標と包括生態リスク指標を例示し、得られた成果と評価可能範囲を明確にするとともに、国際機関等で活用可能な指標の提案を目指す。
これらの取組により、対象とする化学物質の範囲を懸念される化学物質の大部分に広げるとともに、脆弱な集団や生活史、これまで定量化が困難であった影響の評価に拡張する。また、実環境や脆弱性集団を勘案した健康影響の有害性評価、脆弱性を勘案した生態系影響の有害性評価と要因解析、多重・複合曝露実態把握のための測定困難物質や包括的計測手法の確立、化学物質群の環境挙動や濃度分布を把握するための数理モデル構築、包括健康リスク指標と包括生態リスク指標など、包括的環境リスクの評価・管理を目指す。さらに、得られた成果については、リスク評価事業等を通じて環境省等が実施する化学物質等の汚染要因の現実的な管理方策の策定・改正に貢献するほか、包括的な健康リスク指標及び生態リスク指標の構築に必要不可欠であり、Post-SAICM等において重要となっている指標(Indicator)構築に貢献する。
今年度の研究概要
人間活動に起因する化学物質の大部分を評価・管理するため、対象物質を製造・使用されている全懸念化学物質に広げることを目指すとともに、脆弱な集団や生活史、これまで定量化が困難であった影響の評価に取り組む。
本研究プログラムでは、以下の 5つの課題に取り組む。
1. 実環境及び脆弱性を考慮した評価・予測法による、化学物質等に起因する健康影響の有害性評価。
2. 高感受性の種や生活史等の脆弱性を勘案した評価・予測手法による、化学物質やその他の環境要因に起因する生態系影響の有害性評価と要因解析。
3. 全懸念化学物質の多重・複合曝露の把握を目指した、少量多品種化問題への対応も見据えた包括的な計測手法の開発。
4. 全懸念化学物質のヒト・生態系への曝露量の把握を目指した、数理モデル的手法による排出及び環境動態の推計手法の開発。
5. 包括健康リスク指標と包括生態リスク指標の例示並びにリスク評価事業を通じた国内の化学物質管理や国際社会の指標構築への貢献。
1については、免疫や脳神経、生殖毒性等に関連する疾患等をエンドポイントに、実環境での曝露や脆弱性を考慮した化学物質の健康有害性評価手法の確立を進める。また、前年度収集したビスフェノール類の健康有害性情報を整理し、5とともに包括健康リスク指標に関する検討に取り組む。
2については、人間活動に起因する化学物質やその他の環境要因に起因する生態系影響を把握するために、沿岸域や河川流域における生物調査や採取した試料の有害性調査を引き続き実施し、その要因解析に取り組む。また、河川の水生生物の採集記録,及び河川水質を含む環境要因の計測値についての複数の広域データベースを統合して作成したデータセットを解析し,群集レベルでの化学物質の生態影響の評価を行う。 さらに、これらの要因となり得る化学物質等の有害影響を解析するために、高感受性の種や生活史に着目した分子レベルないし個体レベルでの評価手法の確立や複数の化学物質による生態影響評価及び生態系影響評価のための新たな数理モデル開発に取り組む。
3については、懸念化学物質の多重・複合曝露の把握を目指し、類似構造物質群の GC/MS測定データからの選定法、分子鋳型等を用いた選択的捕集法の開発、LC/ESI-MSの高感度化の検討を進めるとともに、試料前処理の困難な高揮発性及び両イオン性物質を含む有機フッ素化合物(PFAS)の水底質及び生物分析法、及び機器測定の困難な縮合型及び重合型添加剤を含むプラスチック含有化学物質の網羅分析法を検討する。
4については、人間活動に起因する化学物質の排出や環境動態を推定するため、用途情報の分類方法および関連する排出推定方法の検討、水銀を中心にヒト・生態系への曝露を過去-将来に亘って長期的に推計するための数理モデル的手法の構築およびそのモデル検証とパラメーター取得のための実験的な検討、イオン性界面活性物質について物性測定・推定及び生物移行実験とその動力学解析を行う。
5については、各課題のプロジェクトリーダーを含む本課題研究メンバーによるワークショップを開催し、包括健康リスク指標と包括生態リスク指標の提案に向けた検討を進める。人健康有害影響評価について1と連携して免疫や脳神経、生殖毒性等に関する疾患等をエンドポイントとした評価指標についての検討を進める。生態影響評価に関しては、2と連携し群集レベルでの化学物質の生態影響の評価を基にした指標化の検討を進める。また、包括的分析手法、環境動態モデル手法をもとに、包括的な曝露評価に関する実現可能な手法の研究を3、4のグループと共に取り組む。また、リスク評価事業を通じた化学物質リスク管理への貢献を行う。
課題代表者
山本 裕史
- 環境リスク・健康領域
- 領域長
- Ph.D.
- 化学,生物学,土木工学