- 予算区分
- 学術変革領域研究(A)
- 研究課題コード
- 2226CD001
- 開始/終了年度
- 2022~2026年
- キーワード(日本語)
- 海洋循環,河川流出,土砂,栄養塩
- キーワード(英語)
- ocean circulation,river discharge,sediment,nutrient
研究概要
日本の河川は平常時と大量出水時で淡水・土砂・栄養塩類の流出量が大きく変動する。大量出水の観測は限られるため、それが海洋の水動態と生態系に及ぼす影響は未知といえる。本研究は、広域河川モデルCaMa-Flood を基盤として、水文地形データや地理情報データを活用し、土砂および栄養塩類の広域生産・輸送モデルを開発する。出水時水質観測や衛星海色観測で検証較正を行い、日本全域を対象とした淡水・土砂・栄養塩類の流出量シミュレーションを実現し、海洋マルチスケールモデルと組み合わせることで、河川大量出水が沿岸域と外洋に及ぼす短期的/長期的な影響を評価する。
研究の性格
- 主たるもの:応用科学研究
- 従たるもの:基礎科学研究
全体計画
北西太平洋域に注ぐ日本の河川は平常時と大量出水時で淡水・土砂・栄養塩類の流出量が大きく変動する。本研究では、「陸域からの大量出水イベントは、淡水・土砂・栄養塩類の供給を通して沿岸海洋の水動態と生態系にどのような影響を及ぼしているか?」という問いに答えるために、以下の3項目の実現を目的とする。
[A] 日本の全河川流域から海洋への淡水・土砂・栄養塩類の流出量を、地理情報データと数値モデルによる広域シミュレーションで推定し、広域流出量プロダクトを整備する。
[B] 大量出水時の河川観測や衛星観測を用いて、推定した流出量の検証と高度化を行い、また陸域からの土砂や栄養塩類の流出総量に占める大量出水イベントの寄与率を明らかにする。
[C] 大量出水イベントが海洋循環と海洋生態系に及ぼす影響を、沿岸モデルおよび海洋モデルを用いて解明する。また、気候モデル出力を用いて大量出水影響の将来変化を議論する。
今年度の研究概要
上記の研究目的を達成するため、[1]陸域からの各種流出量データ構築、[2]流出量データの精度検証と大量出水の寄与割合推定、[3]海洋モデルを用いた陸域影響評価と大量出水イベントの将来推計、の3つの研究課題を実施する。
2022年度は、領域全体の研究をスムーズに開始するため、陸域から海洋への淡水流出量データの構築に先駆けて取り組む。日本全域の過去気象データを用いた河川流量シミュレーションの結果を、現地観測流量データと比較することで精度を検証する。さらに大規模アンサンブル気候データd4PDFを用いて大規模河川シミュレーションを実施し、大量出水イベントを抽出する。さらに、日本域河川シミュレーションの出力を沿岸・海洋モデルの境界条件とするための、モデル/データの結合方法について検討し、次年度以降の陸域影響評価実験の準備を進める。
土砂流出については、全国の過去の豪雨イベント時の広域土砂崩壊量についてRUSLEモデルを用いて推定し、実測データと比較を行う。これに必要とされる全国の降雨(2006〜2021年)・地形・土地利用等のデータベースの構築を行う。ダム堆砂データを用いて土砂供給率SDR式を構築し、土砂生産量を算定する。加えて、出水時の土砂動態の観測手法・観測体制を確立する。これに向けて、阿武隈川の岩沼地点における平常時の河川流量および土砂輸送量を測定する。また、河川水を採水し、浮遊物質濃度および浮遊土砂濃度の横断面内分布や粒径分布を室内実験で測定する。その後、出水イベントがあれば、上述の観測・測定を行う。これらに基づいて、2023年度内の出水時観測計画を立てる。
陸域から海域への栄養塩類の流出予測に向けて、日本全国を対象とした人為由来の発生負荷量データベース構築に着手する。環境省の水質汚濁物質排出量総合調査の原簿データ等を収集し、全国の下水処理場や工場など特定事業場の位置情報と栄養塩類の排出量データの整備を進める。
外部との連携
東京大学(代表:山崎大)・東北大学・福島大学との共同研究
課題代表者
東 博紀
- 地域環境保全領域
海域環境研究室 - 上級主幹研究員
- 博士(工学)
- 土木工学,農学,水産学