- 予算区分
- 基盤研究C
- 研究課題コード
- 2123CD013
- 開始/終了年度
- 2021~2023年
- キーワード(日本語)
- 生態系進化,大量絶滅,シミュレーション,一次生産の停止
- キーワード(英語)
- ecosystem evolution,mass extinction,simulation,reduction of primary production
研究概要
白亜紀末に巨大隕石が地球に衝突し、恐竜を始めとする多くの生物が絶滅した。隕石の衝突がこの大量絶滅イベントの原因となったことはほぼ疑いないが、絶滅生物の選択性(絶滅した生物と生き残った生物の違い)など、生態学的なプロセスが関与していると思われる問題が未解明のままである。その原因は当時の生態系が再現できないため、隕石の衝突による一次生産の停止が生態系内の相互作用ネットワークを介してどのように伝播し、大量絶滅をもたらしたのかが明らかにできなかったからだ。そこで本研究では、飢餓状態への生物の反応を組み込んだ新しい生態系進化モデルを開発した上で、一次生産量を停止させるコンピュータシミュレーションを行い、生態系のどの部分に位置する種が滅びるのかなどの絶滅パターンを解析し、絶滅生物の選択性が生態学的プロセスでどこまで説明できるのかを解明することを目指す。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:技術開発・評価
全体計画
2021年度は、研究の基盤となるシミュレーションモデルの作成を行う。まず以前開発した生態系進化モデル(Yoshida, 2008)に飢餓状態への生物の反応(死亡率の増加、活動性の低下、)を組み込んだ新しい生態系進化モデルの構築を行う。また、物質循環を厳密に管理した生態系モデル(Yoshida et al., 2019)に進化過程を導入した新しい進化モデルを開発し、さらにこのモデルにも飢餓状態への生物の反応を組み込んだモデルを開発する。
2022年度は、採用する仮定の組み合わせを変えて多数のシミュレーションを行う。モデルの挙動を解析し、どの構造のモデルが研究の目的に合っているのかを探索する。
2023年度は、採用したモデルを用いて一次生産量を停止させるシミュレーションを行い、一次生産量が停止してからの生態系の構造の変化を追跡し、絶滅しやすい生物の性質、生態系のネットワーク上での位置を明らかにする。その結果を実際に見られる絶滅パターンと比較し、大量絶滅イベントにおいて生態学的なプロセスがどの程度関与するのかを明らかにする。
今年度の研究概要
基盤とする二つのモデル(物質循環過程を単純な形で表現したYoshida (2008)のモデルと、初年度に完成させた生態系物質循環進化モデル)と、飢餓状態の反応に対する3つのプロセス(一定期間経過後に餓死することによる集団の消滅、個体の死亡率の上昇、体力が低下することによる捕食努力の減少)の組み合わせが12通り考えられるが、それぞれの組み合わせに基づいた数値シミュレーションを行い、一次生産量の停止が生態系に与える影響を解析するという目的に適した組み合わせを探索する。
課題代表者
吉田 勝彦
- 生物多様性領域
生物多様性保全計画研究室 - 主幹研究員
- 博士 (理学)
- 生物学,地学,コンピュータ科学