- 予算区分
- 5-2202
- 研究課題コード
- 2224BA001
- 開始/終了年度
- 2022~2024年
- キーワード(日本語)
- 栄養塩,モニタリング,数値モデル,下水処理場季別運転,ドローン
- キーワード(英語)
- nutrient,monitoring,numerical model,seasonal operation of sewage treatment plants,UAV
研究概要
2021年の瀬戸内海環境保全特別措置法の改正により、環境保全と生物生産を両立させる「きれいで豊かな海」を目指す栄養塩類管理制度が新たに導入されたが、この制度に基づいて栄養塩管理を行うための技術的基盤が整備されていない。本研究では、広島県呉市広湾をモデル特定海域とし、下水処理場の季節別運転を具体的な栄養塩放出手段として、栄養塩類管理制度の実施において必要とされる自治体で利用可能な汎用的な評価手法を開発する。具体的には、本格的な計画策定段階に入る前のフィージビリティ評価手法、本格的な計画策定と事後評価に必要な現状把握のためのモニタリング手法、効果・影響予測のための特定海域に最適化された影響評価モデルを開発することを目標とする。
研究の性格
- 主たるもの:技術開発・評価
- 従たるもの:基礎科学研究
全体計画
本研究では、フィージビリティ評価と現状把握のためのモニタリング技術開発(サブテーマ1)と瀬戸内海全域モデルから特定海域を切り出し、特定海域に最適化させた影響評価モデル開発(サブテーマ2)を行う。
サブテーマ1(広島大学、国立環境研究所)
EMMA(End Member Mixing Approach)及びトレーサーを用いた追跡手法を組み合わせて施策の効果を予測・確認するフィージビリティ評価技術、点源から周辺に向かって急激に変化する栄養塩類等水質を把握するセンサとドローンを活用した水質モニタリング技術、動物プランクトンによる二次生産を含めた海域の生物生産性モニタリング技術を開発する。
サブテーマ2(国立環境研究所)
狭い特定海域の現象・スケールに即した高解像度化と、現場海域の環境下での植物プランクトンの増殖特性と機械学習に基づくパラメータ自動最適化手法を組み込むことにより、信頼性と汎用性を高めた影響評価モデルを開発する。
本研究を呉市が広湾で計画している令和5年10月からの季節別運転事業と連動させることで開発技術の実証と改善を図る。さらに、呉市職員と協働し、自治体における技術の利用可能性を確認しながら研究を進めることで、本開発技術を自治体職員が使用できる汎用技術にしていく。
今年度の研究概要
サブテーマ1
・EMMAによる評価に必要な栄養塩類の各起源の特定と水質を把握し、EMMAを実施すると共に、放流水のトレーサーを選定し、栄養塩類とともに海域で実測する。
・観測船によるライン調査とドローン空撮を行い、水域の水質の時空間分布を把握すると同時に、Chl.a濃度推定のアルゴリズムを開発する。
・採水定点で動物プランクトンをネット採取するとともに同定済みの現有動物プランクトン試料を用いて、DNAメタバーコーディングの定量手法について検討する。
サブテーマ2
・2016〜2022年の瀬戸内海全域の再現計算を追加実施するとともにネスティング海域モデルを構築する。
・パラメータ最適化手順の階層と損失関数を検討し、それに適した学習アルゴリズムを仮想空間の数値実験などを通じて選定する。
・植物プランクトンデータベースの構築に向けて文献データの収集・整理を行うとともに、広湾及び周辺海域の代表的な優占種を選定して培養実験を開始する。
外部との連携
広島大学(代表:西嶋渉教授)