- 研究課題コード
- 2022CD005
- 開始/終了年度
- 2020~2022年
- キーワード(日本語)
- COMPADRE,個体群行列,流れ行列
- キーワード(英語)
- COMPADRE,Population matrix,Flow matrix
研究概要
約1100種の動植物にわたる個体群行列ビッグデータ(COMPADRE, COMADRE)が2014年以降公開され、「個体群統計の統計」の時代が到来した。そのビッグデータを用いて、基本個体群統計量(個体群成長率、平均寿命、流れ行列)の種間横断的比較研究を行い、「現存する動植物において基本個体群統計量はどのような統計量分布になるのか」という問いに答える。さらに、ランダム個体群行列とデータベース上の個体群行列を用いて基本個体群統計量を比較し、「各分類群間・生活史タイプや外来種の個体群行列に特徴的な特性は何か」を明らかにする。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:
全体計画
この研究課題では、主に、以下の3点について研究を行う。
解析1)個体群成長率・平均寿命・個体の流れ行列の種間横断的比較
個体群行列からは、生育段階間の個体の流れを計算することができる。また、すべての生育段階間の個体の流れを合計すると個体群成長率に等しくなることが理論的に証明されている。この個体の流れが分類群間・生活史タイプ間でどのように異なるかを明らかにする。また、平均寿命と個体群成長率の間の関係も分類群間・生活史タイプ間でどのように異なるかを明らかにする。
解析2) 在来種と外来種の基本個体群統計量の比較
上記の解析1のすべてのテーマについて、在来種と外来種それぞれの個体群行列を用いた場合の解析結果を比較し、外来種の行列に特徴的な特性を明らかにする。また、外来種に関する文献資料を合わせて利用して、外来種侵入後の経過時間と基本個体群統計量の間の関係、および気温、降水量(データベースの個体群の位置情報から推定することができる)と基本個体群統計量の間の関係を明らかにし、その生態学的意味について考察する。
解析3)ランダム個体群行列との比較
生物の個体群行列は、生物個体が徐々に成長し成熟段階に至るという特性から、物理学で用いられるランダム行列とは異なる特性を持っている。上記の解析1の解析テーマのすべてに対して、ランダム行列を用いた場合の解析結果との比較を行い、生物に固有な基本統計量の分布域を明らかにするとともに、個体群統計量の分布空間上の進化の方向を明らかにする。
今年度の研究概要
個体群レベルの生態影響指標の一つとして個体群増加率が用いられている。生命表反応テスト(Life Table Response Experiment)により、環境要因によって引き起こされる個体群増加率の変化が、どの生育段階の生存・成長・繁殖の変化によるものかを理解することができる。今年度は、生命表反応テストに個体の流れ行列を組み込んだ生態影響評価手法を開発する。個体の流れ行列は、個体群の各齢・生育段階間の個体数の流れであり、個体群増加率への寄与度を表す。この新たな手法により、環境要因による各齢・生育段階間の個体数の流れの変化が明らかになり、より詳細な影響評価が可能になる。
外部との連携
本研究は、科研費-基盤研究(C)の研究課題であり、高田壮則名誉教授(北海道大学)が研究代表者である。また、大原雅教授(北海道大学)は分担者として参画している。
- 関連する研究課題
- 25974 : PJ2_脆弱性を考慮した生態系影響の有害性評価と要因解析に関する研究
- 25566 : 環境リスク・健康分野(ア先見的・先端的な基礎研究)
課題代表者
横溝 裕行
- 環境リスク・健康領域
リスク管理戦略研究室 - 主幹研究員
- 博士 (理学)
- 生物学