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新規・次期フッ素化合物POPsの適正管理を目的とした廃棄物発生実態と処理分解挙動の解明(令和 3年度)
Toward the Environmentally Sound Management of Waste Containing New Fluorinated POPs: Elucidating their Occurrence and Decomposition Behavior

予算区分
3-2102
研究課題コード
2123BA004
開始/終了年度
2021~2023年
キーワード(日本語)
残留性有機汚染物質,新規・次期フッ素化合物POPs,廃棄物処理・資源化,物質挙動,モニタリング
キーワード(英語)
Persistent Organic Pollutants,New Fluorinated POPs,Material cycles and waste management,Behavior,Monitoring

研究概要

残留性有機汚染物質(POPs)は、難分解性や高蓄積性、長距離移動性、人や高次捕食動物への長期毒性が懸念される有害物質であり、その廃棄の段階では、廃棄物から環境中に放出されるPOPsにより人の健康や生活環境に被害が生ずるおそれがある。そのため、POPsを含有する廃棄物を特定し、POPsの環境排出を抑制して処理を行い、POPsを分解することが不可欠である。しかしながら、近年、新たにPOPsに追加登録されたペルフルオロオクタン酸(PFOA)とその塩及びPFOA関連物質、及び次期POPsとして検討段階にあるペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)とその塩及びPFHxS関連物質(以下、総称して「新規・次期フッ素化合物POPs」という。)については、撥水撥油剤や合成繊維・繊維処理剤、泡消火薬剤としてのPFOA・PFHxSの製造・輸入・使用を把握しているが、関連物質の種類と使用量、関連物質で加工された製品の種類と生産量など、含有廃棄物の特定に資する基礎情報が極めて少ない。特に関連物質については、既存の分析法で容易に特定できないことも大きな課題となっている。また、泡消火薬剤のように製剤そのものが廃棄物である場合は特定が容易だが、撥水撥油加工が施された製品の場合は多岐にわたり特定が難しい。廃棄段階での洗浄や水分離、加熱成型、焼却等の各種処理に伴い、含有廃棄物から環境中に溶出・放散されることが懸念される。特に関連物質については、各種処理で反応が進みPFOA・PFHxSを副生することも考えられる。このような背景の下、本研究では、新規・次期フッ素化合物POPsに関して、分析法の開発と関連物質及び含有製品の特定、含有廃棄物・循環資源に関する実態把握、廃棄処理による環境排出量の推定、有害廃棄物焼却法による分解挙動の把握を行い、今後の新規・次期フッ素化合物POPsの適正管理に向けた知見を得ることを目的とする。

研究の性格

  • 主たるもの:行政支援調査・研究
  • 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備

全体計画

本研究では新規・次期フッ素化合物POPsに関して、(1)分析法の開発と関連物質及び含有製品・廃棄物の特定、(2)廃棄処理による溶出放散挙動の解明と環境排出量の推定、(3)有害廃棄物焼却法による分解挙動の把握を目的に、3つのサブグループが連携しながら以下の研究を行う。サブテーマ?では、分子構造や物性を踏まえた前処理技術、及び総有機フッ素分析法や高分解能MS法等の機器分析技術の最適化を図り、新規・次期フッ素化合物POPsの同定に特化した網羅分析法を開発する。撥水撥油剤、合成繊維・繊維処理剤、泡消火薬剤等の対象製品を選定して網羅分析を行い、新規・次期フッ素化合物POPs関連物質と含有製品を特定する。さらに、廃棄物・循環資源を対象に多成分網羅分析を行い、含有廃棄物・循環資源に関する実態把握を行う。サブテーマ?では、廃棄物処理・資源化施設調査により排出実態を把握するとともに、含有製品・廃棄物を対象とした溶出・放散試験により、新規・次期フッ素化合物POPsの溶出・放散挙動を解明し、材料分析手法を用いた材質の劣化評価により劣化が及ぼす挙動への影響を評価する。また、新規・次期フッ素化合物POPsの物性の実測・推算データを整備して処理・資源化施設における溶出・放散挙動のメカニズムと発生源を特定し、排出削減対策を実施した際の、新規・次期フッ素化合物POPsの廃棄物由来環境排出量を推定する。サブテーマ?では、純物質、含有製品・廃棄物を対象に有害廃棄物焼却法による分解試験を行い、温度・滞留時間・酸素濃度等の影響因子を解明し、新規・次期フッ素化合物POPsの分解条件の最適化と適用性評価を進めるとともに、新規・次期フッ素化合物POPsの副生メカニズムに関する検討を行う。現行のPOPs分解技術による分解除去率と副生物について把握する。終局的には、今後の新規・次期フッ素化合物POPsの適正管理のための基礎的知見として取りまとめる。

今年度の研究概要

サブテーマ?では、新規・次期フッ素化合物POPsの分子構造や物性を踏まえた前処理技術、及び総有機フッ素分析法や高分解能MS法等の機器分析技術の最適化を図り、新規・次期フッ素化合物POPsの同定に特化した網羅分析法を開発する。撥水撥油剤、合成繊維・繊維処理剤、泡消火薬剤等の対象製品を選定して網羅分析を行い、分子構造のC7F15基及びC6F13基の有無を判定し、新規・次期フッ素化合物POPs関連物質を特定する。網羅分析により特定された新規・次期フッ素化合物POPsの関連物質、過去の推進費研究(下水処理場・最終処分場)や欧州の製品調査研究での検出物質、USEPA指定物質等を対象に多成分網羅分析法を確立する。繊維製品・皮革製品・食品接触素材等の撥水撥油加工製品を対象に網羅分析を行い、含有製品を特定する。サブテーマ?と連携して廃棄物処理施設調査を行い、廃棄物試料を採取する。
サブテーマ?では、サブテーマ?と連携し、廃棄物処理・資源化施設を対象に新規・次期フッ素化合物POPsの物質動態や環境排出等に関する実態調査を行う。サブテーマ?の製品・廃棄物等に対して国内標準法に準拠して溶出及び放散試験を実施し、溶出・放散量及び速度を測定する。電子顕微鏡等による表面分析から材表面の劣化等が溶出・放散に与える影響も検討する。溶出・放散挙動を把握するため、関連する物性指標である蒸気圧やLC及びGC保持時間の測定を行う。物性測定の対象物質には新規・次期POPs、サブテーマ?で特定の物質を含め入手可能なフッ素化合物を幅広く採用する。また測定が困難な物質の物性を把握するため、量子化学計算に基づくCOSMOtherm等の物性推算プログラムによる推算も行う。
サブテーマ?では、有害廃棄物の焼却処理の運転条件、効果、実験方法について、バーゼル条約の技術ガイドライン、環境省の指針、および国内外における学術発表の知見を整理し、基本となる研究方法を確立する。初期検討として純物質ベースでの焼却試験を実施し、分解効果および試験結果の再現性を評価する。運転結果の安定性が見込めた段階で、分解に関係する温度、滞留時間、酸素濃度等の影響因子を変化させた条件での焼却試験を計画する。焼却試験で発生する残渣、付着物、排ガスの捕集液等のサンプルはサブテーマ?により機器分析を依頼・実施する。サブテーマ?で決定した含有製品・廃棄物に対して、基本となる運転条件での焼却を実施する。

外部との連携

横浜国立大学 三宅祐一准教授、龍谷大学 藤森崇准教授

備考

関連する研究課題
・資源循環分野(政策対応研究)
・環境リスク・健康分野(政策対応研究)
・物質フロー革新研究プログラム 2 物質フローの転換と調和する化学物質・環境汚染物管理手法の開発
・物質フロー革新研究プログラム 3 物質フローの転換に順応可能な循環・隔離技術システムの開発
・包括環境リスク研究プログラム 3 全懸念化学物質の多重・複合曝露の把握を目指した包括的計測手法の開発に関する研究
・包括環境リスク研究プログラム 4 全懸念化学物質の環境動態の把握を目指した数理モデル的手法の開発に関する研究

関連する研究課題

課題代表者

松神 秀徳

  • 資源循環領域
    試験評価・適正管理研究室
  • 主任研究員
  • 環境学博士
  • 化学
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担当者