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衛生リスク低減を見据えた病原細菌の消長の評価と適地型排水処理技術の開発と実装支援(令和 3年度)
Evaluation of the fate of pathogenic bacteria with a view to reducing hygiene risk and development and implementation of appropriate wastewater treatment technology

研究課題コード
2123AO001
開始/終了年度
2021~2023年
キーワード(日本語)
生活排水,病原性細菌,排水処理技術,衛生リスク,技術実装
キーワード(英語)
domestic wastewatwer,pathogenic bacteria,wastewater treatment technology,hygiene risk,technology implementation

研究概要

本研究では、生活排水に由来する病原性細菌の網羅的、特異的検出技術(系統、活性を評価し得る検出・定量手法)の開発、それらを用いた環境中や排水処理システムにおける病原性細菌の消長と水質との関係性評価を行う。それにより、衛生指標である大腸菌等の有用性を検証すると共に、東南アジア都市水路等における適切な水質管理手法や基準の検討を行う。またバンコク都等と連携し、衛生リスク低減に繋がる適地型排水処理技術(好気性ろ床)の仕上げ処理(処理水再利用)分野および水供給分野への適用に必要な性能(窒素、病原性細菌の除去能)の評価、水需要に基づく処理水再利用の有効性の解析を行う。さらに生活排水処理分野での当該技術の公的設備としての実装を促すため、海外向け技術確認や技術基準書作成を行う。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:基礎科学研究

全体計画

本研究では、生活排水に由来する病原性細菌を網羅的に検出・定量する手法の開発を行い(1年目)、実際の排水や汚染環境水を用いて大腸菌の指標としての有効性評価、及び環境中での生残性の確認と水質パラメーターとの関係性評価を行う(2, 3年目)。既存の排水処理設備における病原性細菌の消長を調査し、装置構成との関係性を評価する(2年目)。バンコク都、カセサート大学などと連携し、処理水質の不十分な既存処理設備の処理水に対して好気性ろ床による後処理試験を行い、特に大腸菌と病原性細菌、窒素の除去に関する知見を収集する(1, 2年目)と共に、適切な前処理・後処理法(ろ過、消毒など)との組み合わせを検討する(3年目)。スポンジ担体サイズの異なる(酸素供給状態の異なる)ラボスケールの好気性ろ床装置を用いた排水処理試験により、大腸菌やArcobacter spp.の除去機構を明らかにし(1, 2年目)、装置構造の最適化を図る(2, 3年目)。バンコクにおいて、排水(窒素、病原性細菌)、上水に関するインベントリーを構築し(1, 2年目)、水需要と下水処理水の再利用に関するデータの収集を行い、インベントリー解析結果に基づいて適切な排水処理計画を提案する(3年目)。水質保全、衛生環境確保のための適切排水処理システムの途上国への実装を支援するために、民間企業との連携により、処理技術のユニット化の検討を行うとともに、技術確認、技術基準書案作成を行う(1〜3年目)。

今年度の研究概要

本研究では研究目的達成のために以下の3つのサブテーマをもうけて研究を実施する。
サブ1. 水質基準設定に向けた病原性細菌の検出手法の開発と、水環境における消長の解析
 生活排水に由来する病原性細菌のBio Safety Level(1, 2, 3)に応じた16S rRNA遺伝子データベースを構築する。また、次世代シーケンサーによる生活排水中の細菌遺伝子の網羅的な解析を行い、開発したデータベースにより出現頻度の高い主要な病原細菌を特定すると共に、それらの遺伝子の定量系を構築する。

サブ2. 処理水質の確保と再利用を見据えた技術の開発と実証
 タイ、バンコク都、カセサート大学と連携し、処理水質が十分でない既存の生活排水処理設備において、その処理水のスポンジ担体を用いる好気性ろ床法による連続処理試験を開始し、特に、窒素、大腸菌、病原性細菌(Arcobacter spp.他)の基本的な除去特性について評価を行う。また、好気性ろ床における大腸菌の除去機構をラボスケール装置におけるトレーサー試験などを通じて評価する。
 マレーシア、マラヤ大学と連携し、クアラルンプール近郊の水源河川の窒素汚染に関するデータの取りまとめを行うと共に、ラボスケール試験による低濃度窒素汚染水の処理試験を実施する。

サブ3. インベントリーに基づく水処理インフラの評価と、適切排水処理技術の社会実装支援
 バンコクを対象として、人口分布データ(Land Scanなど)と地区別一人あたりの排水係数および排水中の窒素・大腸菌濃度に基づいてインベントリーの整備を行う。
 民間企業と連携し、スポンジ担体を用いる好気性ろ床(DHS)のタイでの生活排水処理技術としての展開を図るため、日本下水道事業団(JS)による技術確認(対象国:タイ)に向けたデータ提供を行う。

外部との連携

タイ、バンコク都、カセサート大学、マレーシア、マラヤ大学、金沢大学、新潟薬科大学

課題代表者

珠坪 一晃

  • 地域環境保全領域
  • 副領域長
  • 博士(工学) エネルギー・環境工学
  • 工学,土木工学,生物学
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担当者