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海洋島における鳥類を介した島間種子散布の実態解明(令和 2年度)
Study of inter-island seed dispersal by birds in oceanic islands.

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1921CD011
開始/終了年度
2019~2021年
キーワード(日本語)
海洋島,鳥類,種子散布
キーワード(英語)
oceanic Island,bird,seed dispersal

研究概要

鳥類による島間の種子散布は、海洋島における固有種の進化プロセスや外来種の移動分散に影響すると考えられ、海洋島の生態系保全において考慮されるべきであるが、その実態は未解明である。本研究では、伊豆諸島八丈島と八丈小島の間を頻繁に移動するカラスバトの糞を採取し、それに含まれる種子の産地を安定同位体分析によって特定することにより、鳥類による島間種子散布を直接的に検出する。そして、植物の遺伝構造解析により、島間種子散布が植物の集団構造に与える長期的影響を評価する。これにより、島間種子散布を行う鳥類の保全価値を理解すると同時に、島間における外来生物の分布拡大や遺伝子攪乱のリスクを評価し、適切な対策を講じる上で重要な基礎情報を得る。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

研究1. 島間を散布される可能性が高い植物の特定
 平成31年度に、八丈島と八丈小島の間を移動するカラスバトの個体数と、両島における結実状況を月に一度調査し、カラスバトの島間移動が起きる時期に結実する樹種を把握する。移動個体数の調査は調査日の日の出から日没までの間行い、結実調査については、Ando et al. (2016) Ibis に基づき結実樹種と結実量の評価を行う。また、カラスバトの糞を毎月採取し、その中に完全な形で残留している種子を検出して発芽実験を行う。移動個体数の多い季節に結実し、発芽率も高い植物は、カラスバトに島間散布される可能性が高いと考えられる。

研究2. 糞から検出された種子の産地推定
研究1において特定された植物について、平成31年度中に八丈島北部及び南部、八丈小島において各30個体程度から果実を採取する。同時に、カラスバトの糞の採取も500個以上を目標に集中的に行う。平成32年度に、各島で採取した果実とカラスバトの糞に含まれる種子から発芽させた実生について、窒素安定同位体比を測定し値を比較することにより、糞に含まれていた種子の産地を推定する。親木由来の安定同位体15Nが実生に蓄積することが報告されており (Carlo et al. 2009, Ecology)、これを用いた700m程度の種子散布が実証されていることから (Carlo et al. 2013, Ecology)、本研究もこれに倣った実験を行う予定である。八丈島と八丈小島は地質が異なることから (菅ら 1998, 第四紀研究)、土壌由来の安定同位体比に基づく産地推定に適した調査地である。糞の安定同位体比の寄与率が、採取された島と異なる島の値に近かった場合、島間で種子が散布されたことの実証事例となる。

研究3. 島間種子散布が植物の遺伝構造に与える影響の評価
 カラスバトによる島間種子散布が確認された植物と、散布される可能性が低い植物を3種ずつ選定し、八丈島北部及び南部、八丈小島において、平成32年度中にそれぞれ30個体程度から葉を採取する。平成33年度に、採取した葉からDNAを抽出し、MIG-Seq法 (Suyama & Matsuki 2015, Scientific Reports) を用いた遺伝構造解析を行うことで島間の遺伝子流動の程度を推定する。カラスバトに散布される植物の方が、散布されない植物よりも島間の遺伝的分化の程度が低い場合、カラスバトの島間移動が植物の集団遺伝構造の形成に与える影響が強いことが示唆される。

今年度の研究概要

昨年度から実施してきたモニタリング調査を継続し、カラスバトの移動と結実フェノロジーとの関係、及び糞から検出される種子についての季節性と年変動を把握する。また、海外研修において島嶼に生息する鳥類の長距離種子散布に関する文献レヴューを行い、共同研究に関する議論を行う。

課題代表者

安藤 温子

  • 生物・生態系環境研究センター
    環境ゲノム科学研究推進室
  • 主任研究員
  • 博士 (農学)
  • 生物学,農学,林学
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