- 予算区分
- CD 文科-科研費
- 研究課題コード
- 1921CD007
- 開始/終了年度
- 2019~2021年
- キーワード(日本語)
- 排出インベントリ,揮発性有機化合物,大気質シミュレーション,ボックスモデル,化学反応メカニズム
- キーワード(英語)
- emission inventory,volatile organic compound,air quality simulation,box model,chemical mechanism
研究概要
大気汚染物質であるオゾンの濃度低減策の検討に用いられている領域化学輸送モデルは、日本国内のオゾン濃度の過大評価とVOC濃度の大幅な過小評価という根本的な問題を抱えている。そこで、まず東京都内の複数地点において、VOCの個別成分濃度の実態を観測で明らかにする。領域化学輸送モデルによる計算値と比較し、濃度再現性の成分別・空間的・季節的・時間的特徴とボックスモデルを用いた解析により、領域化学輸送モデルに組み込まれている化学反応メカニズムと既存の排出インベントリの問題点を見出し、その改良を図る。改良された領域化学モデルと排出インベントリを用いて改めてオゾンの計算を行い、改良前に比べてオゾン濃度の再現性、さらには原因物質の排出量の変化に対するオゾン濃度の応答がどの程度変わるのかを評価する。その結果から、これまでのモデルによる計算結果に基づいて得られてきたオゾンに対する理解の問題点と、有効な濃度低減策の方向性を見出す。
研究の性格
- 主たるもの:応用科学研究
- 従たるもの:技術開発・評価
全体計画
(a) 実大気中のVOC個別成分濃度の実態把握
東京都内を対象に周辺環境が異なる地点を選定する。各地点において、昼夜の濃度変動を把握できるように、6〜8時間毎に数日間、キャニスターに大気を採取する。採取された大気に含まれる100種類以上のVOC個別成分をガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)等で同定し、濃度を明らかにする。得られたVOC個別成分濃度の絶対値や構成割合の空間的・季節的・時間的特徴から、影響が大きいと考えられる発生源などについて考察を行う。
(b) ボックスモデルを用いたVOC個別成分濃度の観測結果の解析
観測を行った地点を含む領域と期間を対象に、3次元マルチスケール大気質シミュレーションを実行する。計算されたVOC個別成分濃度を観測値と比較し、モデルによる濃度再現性の成分別・空間的・季節的・時間的特徴を明らかにする。その上で、領域化学輸送モデルから光化学反応過程のみを抜き出したボックスモデルを用い、詳細な化学反応計算を実行する。その結果に基づき、化学反応メカニズムと排出インベントリの妥当性を検証し、改良に結び付ける。
(c) 改良された化学反応メカニズムと排出インベントリを用いた領域化学輸送モデルによるオゾンの濃度と応答の評価
(b)で改良された化学反応メカニズムと排出インベントリを用いた領域化学輸送モデルで改めてオゾン濃度の計算を行い、オゾン濃度の再現性や原因物質の排出量の変化に対するオゾン濃度の応答がどの程度変わるのかを評価する。その結果を踏まえて、VOCとオゾンの濃度の再現性に問題を抱えている既存のモデルによる計算結果にどのような問題点が含まれていたのか、それが化学反応メカニズムと排出インベントリの改良によってどのように変わってくるかを明確にする。
今年度の研究概要
・計測されたVOC濃度に対して、ボックスモデルと大気質シミュレーションを用いた解析を行う。
・春と夏の2回、東京都内の数地点でVOC個別成分濃度の計測を行う。
外部との連携
東京都環境科学研究所
課題代表者
茶谷 聡
- 地域環境保全領域
大気モデリング研究室 - 主幹研究員
- 博士(理学)
- 工学,理学