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底生生物に対する曝露経路と生物利用性を考慮した包括的な底質リスク評価手法の構築
(平成 31年度)
Developing risk assessment methods for chemicals in sediment that consider exposure routes and bioavailability to benthic organisms

予算区分
BA 環境-推進費(委託費) 5-1902
研究課題コード
1921BA016
開始/終了年度
2019~2021年
キーワード(日本語)
底質,平衡分配法,パッシブサンプリング,底質毒性試験,曝露経路,生物利用性
キーワード(英語)
sediment, equilibrium partitioning approach, passive sampling, whole sediment toxicity test, exposure route, bioavailability

研究概要

化審法の詳細リスク評価や化学物質の環境リスク初期評価において、底質への移行が懸念される物質(log Kow > 3など)は底質リスク評価が必要とされているが、底質中化学物質の分配挙動や底生生物に対する曝露経路は複雑であり、多くの技術的課題が指摘されている。特に底質毒性試験データが限られているため、平衡分配法(化学物質は底質-水分配係数Kdに従い平衡に分配しているとし、遊泳水生生物に対する水中濃度の無影響濃度PNECから平衡分配式に基づき底質のPNECを推定する)によってPNECが算出されているが、平衡分配法の問題点として、底生生物と遊泳水生生物の感受性は同じと仮定している、難水溶性物質で遊泳水生生物に毒性がみられない場合には適用できない、水経由を主たる曝露経路としている、有機物含有量などのパラメーター設定に検討の余地がある等が挙げられる。また、底質毒性試験データがあったとしても、現行のユスリカ底質毒性試験では、人工底泥に化学物質をスパイクして試験するため、環境底泥とは底質性状(粒径分布、有機物含有量など)が大きく異なる。よって、底質固相全濃度Ctotalが同じであっても化学物質の吸着・分配挙動は異なり、底生生物への曝露量、体内に吸収される生物利用性(bioavailability)、ひいては毒性も異なると考えられ、Ctotalで毒性値と環境濃度を直接比較するのは有効ではないと多くの既存研究で指摘されている。
そこで本研究では、国内で底質リスク評価が必要とされている物質について底生生物を用いた底質毒性試験を実施し、試験中の化学物質の分配挙動や生物利用性をパッシブサンプラーなどによって評価する。これによって、複数の曝露経由や生物利用性を考慮した、人工底泥を用いた室内試験結果を底質性状の異なる環境底泥に外挿することができる影響濃度の算出方法を確立し、化審法や初期リスク評価に活用できる包括的な底質リスク評価手法を構築することを目的とする。

研究の性格

  • 主たるもの:行政支援調査・研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

底生生物に対する曝露経路と生物利用性を考慮した包括的な底質リスク評価手法の構築をすることを目的として、3つのサブグループにより以下のように研究を進める。
まず、現行の平衡分配法を主に用いて、国内で底質リスクが懸念される物質を、底層環境での挙動が異なると考えられる化学物質群から複数選定する。
選定した物質を人工底泥にスパイクし、淡水性および汽水性の底生甲殻類(ヨコエビ)を用いた底質-水曝露システムによる底質毒性試験を行う。さらに曝露経路を制御した系により毒性試験を実施し、曝露経路の差異による毒性への影響を明らかにする。これらの毒性試験と並行して、試験系での化学物質の分配挙動をパッシブサンプリング手法等を用いて測定し基礎データを蓄積する。底質試験系のような比較的小さな系での底質内化学物質挙動を詳細に検討する点は本研究の新規性の一つである。これらにより曝露経路を考慮した毒性試験結果の解釈を行い、生物利用性画分を定義し、毒性との用量反応モデルを構築する。
このモデルを検証するため、人工底泥に加えて、底質性状の異なる環境底泥を用いた同様の毒性試験及び分配挙動の解析を実施し、生物利用性画分から予測される毒性値と毒性実測値との比較を行う。また、環境底泥の物理化学的特性から化学物質分配への影響要因を抽出して従来の平衡分配式の最適化を行い、底質毒性試験による評価結果と比較する。最終的に、リスク評価体系における平衡分配法の位置づけを整理し、包括的かつ効率的な底質リスク評価手法を構築する。

今年度の研究概要

サブテーマ?「底生生物を用いた底質-水曝露による有害化学物質の毒性評価」(東京大学、国環研)
 サブテーマ3で選定する試験対象物質(10物質程度)を人工底泥にスパイクし、底生生物を用いた底質-水曝露システムによる底質毒性試験を行う。感受性が比較的高いとされる底生甲殻類(ヨコエビ)を試験生物とし、?Hyalella azteca(淡水性)を用いた14日間試験(国立環境研究所)、?Grandidierella japonica(汽水性)を用いた10日間試験(東京大学)の2つの試験法を用い、致死または成長をエンドポイントとしてNOECを求める。

サブテーマ?「底質中有害化学物質の分配挙動と生物利用性の評価」(国環研)
 サブテーマ3で選定する試験対象物質の人工底泥に対する収着実験を行い、Kd及び有機炭素・水分配係数Kocを算出する。サブテーマ1の底質毒性試験のスケールにおいて化学物質の分配挙動をパッシブサンプリングなどにより測定する手法を確立し、底質毒性試験中の分配挙動(上層水、間隙水、底質固相、餌中、体内)を測定する。既存の平衡分配モデルに基づくCfreeと実験的手法にもとづくCfreeとの比較を行う。

サブテーマ?「平衡分配法の最適化と包括的な底質リスク評価手法の構築」
 サブテーマ1、2で対象とする試験物質として、化審法の優先評価化学物質や初期リスク評価対象物質、化学物質環境実態調査や既存研究による底質測定結果を活用し、底質への移行性が懸念され、かつ底層環境での挙動が異なると考えられる?疎水性有機化合物、?アミン類、?金属から数種類ずつPEC/PNECに基づいて選定する。環境中濃度が得られない場合は、製造・排出量情報からGIS多媒体環境動態予測モデルのG-CIEMSを用いた予測値(90%値)をPECに用いる。底生生物を用いた底質毒性試験結果が報告されていない場合は、現行の平衡分配法に基づき、遊泳性甲殻類のPNEC (mg/L) を平衡分配式(欧州化学機関ECHAのガイドライン参照)によって底質中推定PNEC (mg/kg) に換算する。

外部との連携

東京大学環境安全研究センター 中島典之教授

備考

サブテーマ?分担者:渡部(代表者:東京大学 中島)
サブテーマ?代表者:遠藤
サブテーマ?代表者:渡部、分担者:山本

課題代表者

渡部 春奈

  • 環境リスク・健康領域
    生態毒性研究室
  • 主任研究員
  • 工学博士
  • 土木工学,生物学,化学
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担当者