- 予算区分
- CD 文科-科研費
- 研究課題コード
- 1618CD018
- 開始/終了年度
- 2016~2018年
- キーワード(日本語)
- 原子力災害,環境回復,環境管理,環境動態
- キーワード(英語)
- nuclear disaster,environmental recovery,environmental management,environmental behavior
研究概要
東京電力福島第一原子力発電所(以下、福島第一原発)の発生から4年が経過し、放射性物質に関する数多くの環境モニタリングが行われている。被災地における今後の長期的なモニタリングのあり方を示し、さらに今後同様な原子力災害が生じた際の汚染拡大を最小限に抑えるためには、今回の事故で不十分であった事故直後のデータ収集のあり方を示すとともに、これまでに得られたデータを元にした中期・長期の効率的かつ的確な環境モニタリングの指針を示す必要がある。本研究では、放射性物質の環境挙動に関する知見の集約化および体系化を通じて、福島県等の被災地における今後の長期的な環境モニタリングのあり方を示すとともに、今後の原子力災害発生時における環境モニタリング、および初期環境管理に関する技術的な指針の作成を行う。
研究の性格
- 主たるもの:応用科学研究
- 従たるもの:行政支援調査・研究
全体計画
放射性セシウムの主要移行過程を対象とした戦略的な環境モニタリングの実施と過去の原子力災害時の知見も含めた現存データの収集・整理を行い、福島第一原発事故後の環境モニタリングに関する知見の体系化を図る。これにより、土地利用や事故後の経過日数等の影響因子の抽出を可能とする放射性物質の環境動態データベースを構築する。次いで、本データベースを基に放射性物質の挙動の実態と将来的な推移について整理、検討した結果を踏まえ、今後の中長期的な動態モニタリングに対する戦略を確立する。最後に、本データベースを基に、試料分析や数値シミュレーションによる初期動態推定、対策シナリオ効果評価から、今後の原子力災害に備えた原発事故後のモニタリングおよび初期環境管理に関する技術的な指針の作成を行う。
今年度の研究概要
1.戦略的環境モニタリングの実施
森林河川水やダム湖水を対象に生物利用性セシウムモニタリングの継続実施とセシウム溶出フラックス評価システムを用いたダム湖表層底泥からの溶出における、鉱物組成や有機物含有量等底質組成の影響に関する詳細解析を行う。農地、ため池においては、連続的なモニタリングと栽培試験の結果から、水稲への放射性セシウムの移行実態に係る経年的な変化を明らかにしてモニタリングプランへ反映させる。
2.既存モニタリングデータの収集・整理
継続的な環境モニタリングによって観測データを随時更新する。既存データの収集・整理、重点的モニタリング調査研究の実施により、放射性物質の環境動態に関する統合的データベースを構築する。
3.中長期的なモニタリングプランの提案
土地利用・地形・汚染密度を考慮した中長期的に重要なモニタリングポイント・項目・手法を整理し、今後の30年に必要な中長期的なモニタリングプランを複数提案するとともに、それら費用と効果を算定し、外部有識者を交えた検討会において、妥当性や実現性等の観点から議論する。
4.適切な初動モニタリングならびに初期管理手法の提案
各河川底質試料採取地点での溶存態放射性セシウム濃度の推定作業と河川水中の溶存態放射性セシウム濃度の初期動態に対する初期沈着量や土地利用、流下過程等の影響解析を継続実施する。さらに、福島県浜通り地方北部地域を対象にした森林生態系、河川流域、ダム湖沼の各コンパートメントモデルの構築と適用により原発事故後初期の放射性物質の挙動を把握する。
5. 初期管理シナリオの構築
得られた成果をもとに、福島第一原発事故後初期において、各コンパートメントで再汚染の軽減や除染廃棄物減量化のため実施可能であった環境管理手法を、シナリオとして構築、適用し、シナリオの再汚染軽減や除染廃棄物減量に係る費用対効果分析を行う。これら成果を基に、原子力災害時の初動初期における環境管理マニュアル策定に向けて検討する。
外部との連携
国立大学法人筑波大学 恩田裕一
国立研究開発法人産業技術総合研究所 保高徹生
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構東北農業研究センター 信濃卓郎
国立大学法人福島大学 申文浩
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 舟木泰智・佐久間一幸
備考
災害環境研究