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グリーンインフラの利用による汚濁負荷削減を目的とした耕作放棄地の再生システム(平成 28年度)
The Restoration System of Abandoned Farmland aimed at Pollution Load Reduction using Green Infrastructure

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1518CD004
開始/終了年度
2015~2018年
キーワード(日本語)
耕作放棄地,牧草地,栄養塩,緩衝帯,水文環境
キーワード(英語)
Abandoned meadow, Grassland, Nutrient, Buffer zone, Hydrological environment

研究概要

 酪農草地は栄養塩や農薬などの水質汚濁物質の負荷源となっており、下流の湿原や閉鎖性水域への影響が懸念されている。本研究では、河畔緩衝域にある湿潤環境の耕作放棄地を水質浄化機能を備えたグリーンインフラとして積極的に利用することによって、耕作放棄地の抑制と汚濁負荷削減を同時に達成するシステムの構築を目指す。
具体的には、北海道東部の酪農草地流域を対象に、(?)耕作放棄地による汚濁負荷削減効果を調べ、(?)負荷削減に効果的な水文・植生条件を明らかにする。さらに、(?)緩衝帯として期待できる湿潤な耕作放棄地の空間分布を広域的に推定し、(?)緩衝帯として利用した際の流域全体での汚濁負荷削減量を試算する。これらを踏まえ、汚濁負荷削減を目的とした耕作放棄地の有効性と利用可能性をまとめる。 

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

 研究対象地域は、北海道阿寒郡鶴居村とする。本対象地は一級河川釧路川水系の久著呂川・チルワツナイ川流域、雪裡川・芦別川流域、幌呂川流域下流域の3 流域で構成され、下流部に釧路湿原国立公園が位置する。基幹産業は酪農であり典型的な大規模酪農が営まれている。村独自で家畜糞尿処理施設の整備を進めるなど環境保全型農業への意識は高い。一方、湿原や河川に隣接した草地で耕作放棄が目立ってきており、耕作放棄地の有効利用が大きな課題となっている。
 本研究目的の遂行のために、次に示す4 課題を設定した。1)GIS データベースの構築と耕作放棄地の現状把握。2) 栄養塩浄化機能の評価システムの構築。3) 耕作放棄地における栄養塩浄化量の解明。4) 緩衝帯の分布推定手法の開発と栄養塩負荷削減量の広域評価。

今年度の研究概要

緩衝帯として期待できる耕作放棄地の空間分布推定を行う(課題3)。研究開始当初、鶴居村の複数箇所の耕作放棄地を対象に植生・水文環境調査を行い、湿潤条件の耕作放棄地の空間分布を推定する手法の開発を予定していたが、先に、既存データが豊富な標茶町で手法開発を試みる。そのためにまず、昨年度標茶町農業委員会から入手した耕作放棄地及び遊休農地に関する情報のGISデータ化を行う。また、これら未利用地の現地調査や聞き取り調査を行い、湿潤条件の耕作放棄地の分布を特定する。航空写真、河川データ、過去の土地利用データ等から湿潤条件の耕作放棄地の分布を推定する手法を検討する。また、鶴居村における耕作放棄地に関する情報収集を進める。課題3は小野、亀山、木塚が担当する。
一方、耕作放棄地における栄養塩浄化量の観測・評価も進める(課題4)。当初は、定期観測を毎月1回程度、出水や施肥前後等のイベント時に連続観測を行う予定だったが、1圃場内の詳細な空間分布を調べる手法に変え、定期観測を春(5月)、夏(8月)、秋(11月)の3回とし、加えて出水時の調査を1回程度行う。圃場内における窒素とリンの収支を評価するために、地下水観測用井戸とピエゾメータの水位測定と採水を行う。また、圃場内や水路の地表水、河川水、降水の採水も行う。採取した試料水は、形態別の窒素・リン濃度を分析する。また、水収支の評価に必要な地盤の透水性を把握するために単孔式透水試験を行う。さらに、地表水が生じる範囲と発生頻度を把握するために自記水位計と雨量計を設置する。課題4は木塚、三上、亀山が担当する。
上記2課題に加えて、耕作放棄地を緩衝帯として実際に活用するための圃場管理のあり方や制度面での課題等について、国内外の事例を参考に情報の収集・整理を行う。

外部との連携

本研究課題は、課題代表者(木塚俊和)の下、以下の研究者が共同して研究を推進する。
研究代表者:木塚俊和・北海道立総合研究機構・環境科学研究センター
研究分担者:亀山哲・国立環境研究所・生物生態系環境研究センター
研究分担者:小野理・北海道立総合研究機構・環境科学研究センター
研究分担者:三上英敏・北海道立総合研究機構・環境科学研究センター

課題代表者

亀山 哲

  • 生物多様性領域
    生態系機能評価研究室
  • 主幹研究員
  • 農学博士
  • 生物学,情報学,農学
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