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特殊パルスNMR法の活用による陸域溶存有機炭素の分子レベルでの変遷プロセスの解析(平成 27年度)
Elucidation of chemical transition process of terrestrial DOC in view of molecular level by 1H NMR spectroscopy using an unique pulse method.

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1517CD017
開始/終了年度
2015~2017年
キーワード(日本語)
炭素循環,溶存有機物,炭素ストック
キーワード(英語)
Carbon cycle, DOC, Carbon stock

研究概要

溶存有機炭素(DOC)は陸域生態系の炭素循環プロセスの要となる成分であり,気候変動や温暖化と密接な関係をもつ成分である。したがって,DOCのモニタリング研究は世界各地で盛んに行われているが,その特性解析にはUV・蛍光・FTICR-MS分析などによる特定成分をターゲットにした解析法が汎用されている。しかし,特殊なパ
ルスシーケンス(SPR-W5-WATERGATE)による1H NMR分析を用いれば、前処理なしで微量の水から希薄なDOCの分子構造情報(官能基組成など)が得られると期待できる。そこで,モニタリングレベルでの活用が困難とされてきたNMR分析法を主軸に従来法も併用して,気候変動や温暖化の影響が顕著である高緯度地域の湿地生態系を対
象に,土壌—河川—沿岸海域にまたがる分子レベルでのDOCの変遷プロセスを解明し,加えて,本手法の炭素動態解析への活用推進を提唱することを目的とした。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:

全体計画

本課題では,高緯度地域の沿岸湿地生態系において土・水試料の時空間的サンプリングをおこない,
1)現場での土壌呼吸・バイオマス量測定
2)特殊パルスシーケンスを用いた1H NMR 分析によるDOC の化学構造特性の解析
3)従来法による各種DOC 分析(UV,3D 蛍光-PARAFAC,安定同位体)のデータ収集
を実施し,DOC の時空間的な化学構造特性の変化と各種データによる情報を統合することで,陸域DOC の分子レベルでの変遷プロセスの解析をおこなう。また,4)分離濃縮した難分解性DOCの13C および 2D NMR 分析をおこない,1)で得られたデータ解析の信憑性を保証する。

今年度の研究概要

1) 特殊パルスシーケンスを用いた1H NMRの最適化:研究協力者のSimpson教授(Toronto大)から譲渡された前述のパルスシーケンスは優れた手法だが,測定時間を短縮するための前処理濃縮法を検討する。既存の水(0.6 Cppmと5 Cppm)を減圧濃縮し,無処理で得た1H NMRスペクトルと比較する。サンプル濃度の2倍濃縮で測定時間は4分の1となるので濃縮効果とスペクトルへの影響を検証して最適化をはかる。
2) 北極圏沿岸湿地における現場調査・試料採取:融雪期6月4週目〜降雪期8月3週目にかけて,ノルウェー国北極圏沿岸湿地にて現地調査と試料採取をおこなう。
3) 北極圏沿岸湿地の試料分析(9月〜12月):
 (a) 1)で最適化した手法に従って,水試料の特殊パルス1H NMR測定に供し,脂肪族性,N・O隣接脂肪族性,炭水化物性,芳香族性の各官能基プロトン比を定量的に得る 。
 (b) 水試料の全DOC量と難分解性DOC量,CDOM量を測定する。加えて,3D-EES−PARAFAC解析に供し,蛍光特性情報を得てNMR解析の結果と照合する。さらに,水試料中の無機元素を測定し,DOMの移行と関連性のある元素の情報を抽出する。
 (c) ピート土壌と浮遊懸濁物(SS)の安定同位体比(δ13Cとδ15N)を算出する。
4) 分離濃縮した難分解性DOCのNMR分析(1月〜2月):DEAEセルロースで分離濃縮した難分解性DOCを定法で精製・粉末化する。粉末試料を溶解し,3)(a)の特殊パルス1H NMR,13C NMRに供し,1H と13C NMRデータの相関の成立確認,1Hで見られるシグナルの分子レベルでの帰属保証をおこなう。
5) 北極圏沿岸湿地におけるDOCの変遷プロセスの仮解釈:1〜4)で得られた情
報をもとに,氷河〜湿地〜沿岸海域へとDOCが移行する中で化学構造の面から見た変遷プロセスの仮解釈をおこない,仮説を立案する。

外部との連携

研究代表者:神戸大学

共同研究先:極地研、岡山理科大、筑波大

課題代表者

近藤 美由紀

  • 環境リスク・健康領域
    計測化学研究室
  • 主任研究員
  • 博士(農学)
  • 化学,生物学,農学
portrait

担当者