- 予算区分
- CD 文科-科研費
- 研究課題コード
- 1518CD005
- 開始/終了年度
- 2015~2018年
- キーワード(日本語)
- 森林生態系,炭素循環,バイオチャー
- キーワード(英語)
- Forest ecosystem, Carbon cycle, Biochar
研究概要
近年、温暖化防止に向けた炭素隔離技術の一つとして、「バイオチャー(Biochar)」の活用が注目されている。バイオチャーは植物の成長促進の他に、炭化することで元の状態よりも有機物の分解が遅くなるため、炭素を長期に大気から隔離することを可能にする。本研究では、バイオチャーを森林生態系に投入することにより、森林生態系の植物(樹木)および土壌微生物の炭素吸収・放出量の変化と、それらを引き起こす土壌環境の相互作用を科学的に検証し、生態系全体の炭素固定能がどのように変化するのかを明らかにする。またバイオチャーの作出技術や散布方法の最適化、さらには単純な植物栽培実験系を用いて、バイオチャーの効果の検証を行う。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:
全体計画
本課題では、森林生態系に投入するバイオチャーの量を変化させることにより、1)生態系の応答機構と、2)炭素隔離効果がどの様に変化するかを、野外操作実験と室内実験を用いて統合的に解析する。また、投入された3)バイオチャーの化学特性の変化や、投入により変化する4)養分などの物質動態も明らかにする。さらにこれらの結果を統合して5)生態系応答モデルを構築する。これらの調査は常に生物と環境との相互作用系として研究に位置付けると同時に、時間的変動(日〜月〜年)を考慮しながら進める。
今年度の研究概要
1. バイオチャーに対する森林生態系の応答性解析
木炭を粉砕して均質なバイオチャーを作成し、森林生態系 (農山村地域の里山二次林) へ散布し、野外操作実験を行う。対照区とバイオチャー散布区(5段階の濃度)の計6つの実験区を設置し、実験開始前の森林構造と土壌構造調査を行う。また、地面からのCO2放出速度の測定を開始するとともに、放射性同位体(14C)計測手法を用いて有機物分解由来の呼吸の分離も行う。さらに、土壌温度・含水率・光量子等の環境条件のモニタリングを開始する。
2. バイオチャーの特性と動態解明
バイオチャー散布により土壌中に効率的な炭素隔離が行われているか、土壌からのCO2放出量と併せて、自然レベルの14Cをトレーサーにして、野外実験土壌からの有機炭素起源の測定を行う。また、土壌中におけるバイオチャーの散布直後の養分の存在形態を化学的逐次抽出法により明らかにし、各養分の全量分析データの比較から供給効率を推定する。
3. バイオチャーの作出と散布技術の開発
バイオチャーは原料によって化学組成が異なるため、森林生態系の代表的なバイオチャーの原料 (葉リター、枝リター、下草類、間伐材など) において、それぞれの炭素固定能 (微生物分解抵抗性) が最大となる作製条件 (燃焼時間、燃焼温度、通気料など) を見出し、作出技術の開発を行う。また、作成されたバイオチャーに対し、主に固体NMR分光分析装置を用いて、人工作出バイオチャーの構造化学的分析を行う。
外部との連携
研究代表者:早稲田大学・小泉博教授
その他連携先:岐阜大学、神戸大学、首都大学東京、滋賀県立大