- 予算区分
- AQ センター調査研究
- 研究課題コード
- 1115AQ025
- 開始/終了年度
- 2011~2015年
- キーワード(日本語)
- 化学物質,毒性予測,生態毒性,QSAR,ベイズ法
- キーワード(英語)
- chemical, predection of toxicity, ecotoxicity, QSAR, Bayesian methodology
研究概要
化学物質の生態毒性に関する情報は、化審法等の下での化学物質の審査やリスク評価を実施するに必須である。また同時に、REACH制度などの化学物質のリスク評価の推進が国際的に進む中で、極めて多種多様の化学物質について生態毒性情報の取得が求められている。数多くの化学物質の試験実施は時間・コストの両面で困難であり、既存の試験データを有効に活用した毒性予測が必要である。
本課題では第一に、化学物質の構造から毒性を予測する手法を開発し、急性毒性を中心に化学物質の審査やリスク評価に必要な生態毒性情報の取得の加速化を図る。一方、野外環境中の実際の生物を守るという観点からは、急性毒性よりも、長期間の曝露による影響を知ることも重要である。しかし現実には、長期曝露による影響のデータの数は急性毒性データの数に比べて非常に少なく、急性毒性データから外挿的に推定することが日常的に行われている。そこで、現行の方法を検証し、さらに既存毒性データから統計的外挿により毒性を予測する手法を開発する。
研究の性格
- 主たるもの:応用科学研究
- 従たるもの:行政支援調査・研究
全体計画
(1)化学物質の構造に基づく毒性予測手法の開発
1)化学物質の構造から生態毒性等を予測する[定量的]構造活性相関([Q]SAR)モデル等の開発を継続しつつ、OECDにおける活用に向けた検討・改善を実施する。
2)化審法に対応したQSARモデル「KATE」について、魚類致死毒性および甲殻類遊泳阻害に関する急性毒性予測のための部分構造フラグメント・分類ルール・記述子の改善等を検討し、ツールとしての精緻化を進める。更にQSARモデルの信頼範囲を定義する部分構造フラグメントの精査を進めることで、信頼性を担保し、行政の場での実用に即した毒性予測モデル構築を目指す。
3)藻類生長阻害について過剰毒性を示す化学物質の部分構造に注目しながら、クラス分類を行い、QSARモデルの構築を進め「KATE」における公開を目指す。
(2)既存毒性データからの外挿的推定による毒性予測手法の開発
1)既存のTG202、TG203等より得られた急性毒性データ、およびTG201、TG211等より得られた慢性毒性データの網羅的な統計解析を行い、現行の急性毒性/慢性毒性比を用いた外挿的推定手法の問題点を整理する。その結果を基に、それらの問題点を解決する新たな推定手法として、ベイズ統計を利用した急性毒性から慢性毒性への統計的外挿手法を開発する。
2)一般に、ある生物種における毒性の強さと他の生物種における毒性の強さの関係は、化学物質が毒性を発現する際の作用機序や毒性径路に依存することが知られている。そこで、作用機序や毒性径路の違いを踏まえて戦略的に化学物質の選定を行った上で、検討の対象とする化学物質の生態毒性試験を行い、それらの新規データを用いて作用機序や毒性径路などのカテゴリー的情報を積極的に利用した新たな慢性毒性の統計的種間外挿手法の開発を行う
今年度の研究概要
(1)化学物質の構造に基づく毒性予測手法の開発
OECDテストガイドラインに準拠して得られた生態影響試験での化学物質の急性毒性値について、構造記述子と共に物理化学的性状を考慮に入れた毒性予測法の提案を行い。また、魚類・甲殻類とは明らかに傾向の異なる藻類に対してどのように毒性予測を進めればよいか明らかにし、総括する。
(2)既存毒性データからの外挿的推定による毒性予測手法の開発
既存のOECD TG202、TG203等より得られた急性毒性データ、およびTG201、TG211等より得られた慢性毒性データを用いて、現行化審法の初期スクリーニングにおける急性-慢性および種間外挿に伴う誤判定率と毒性試験にかかる費用のバランスを最適化する毒性外挿法(外挿係数の値とその使い方)を開発する。また、水中や土壌中での全量濃度からの毒性予測が難しい化学物質について、それらの野外での存在形態についての基礎的な知見を収集する。
- 関連する研究課題
課題代表者
古濱 彩子
担当者
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林 岳彦社会システム領域
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鑪迫 典久
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青木 康展
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白石 寛明