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河川水温変動シミュレーションを用いた全国の淡水魚類に関する自然再生支援システム(平成 26年度)
Restoration support system of freshwater fish habitat using river water temperature modeling in Japan

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1115CD001
開始/終了年度
2011~2015年
キーワード(日本語)
自然再生,淡水魚類,生息地評価,河川水温,水文モデル
キーワード(英語)
nature restoration, fresh watrer fish , evaluation, river water temperature, hydrological model

研究概要

気候変動や人為的な開発に対し,特に脆弱とされる流域生態系の効果的な保全・再生事業計画の策定を目的とし,絶滅危惧種を含む全国の淡水魚を対象とした生息地解析を行い,その現状分析と過去から現在までの地空間変化抽出,およびシナリオ分析による将来予測を行う。
 特に本研究では,流域の歴史的変遷が河川水温の変動に与える影響に注目し,流域の熱収支モデルを開発して広域かつ長期的な生態影響を解析する。さらにその水温変動を生息地パラメータとした生息地環境評価モデルを活用し,水温変化が淡水魚類の生息地ポテンシャルおよび季節的行動パターンに与える影響の解明を行う。
 最終的に,一連の研究フローを一元化し,効率的な自然再生支援システム(対象種・事業区間の選定,生息場の制限要因と環境改善項目の特定,事業前後の評価手法の提示等)として実用化を図る。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備

全体計画

本研究は主に三つの段階((1)GISデータベース構築,(2)水温変動シミュレーションと生息地評価モデル作成,(3)全国デジタルマッピングと流域再生シナリオ分析)に分けられ,それらを開始年度より順次達成しつつ遂行される。(1)のデータベースはその後に用いる物理・統計モデルの両方に活用可能な形式とする。また,物理・統計モデルを統合して得られた生息地評価モデルの広域的な出力結果が(3)の全国規模のマッピングであり,入力条件を適宜変更することによって具体的な自然再生を対象としたシナリオ分析を行う。
(1)GISデータベース構築
主に平成23年を中心に実施し、平成24年後半までに主要部分を完成させる。整備データは以下のとおりとする。魚類の生息地情報・流域構造基盤データ・河川水温データに関して水温ロガーを設置し,得られた観測データをGISデータとして整理する。
(2)水温変動シミュレーションと生息地評価モデル作成
平成24年から26年では水温変動シミュレーションと生息地評価モデルを用いた淡水魚類の生息地解析を行う。水温変動モデルでは一次元モデルをベースに改良を加え,これに熱収支モデルを組み合わせて流域全体での河川水温の変換変動を再現する。
 魚類の生息地評価のためには一般化線形回帰モデルを用い,独立変数には生息地環境情報として1.のデータベース情報を与え,統計的に有意な環境パラメータを対象種別に取捨選択し,その寄与率を基に環境制限要因を決定する。これにより,保全または再生すべき対象種に応じた具体的な環境改善項目とその優先順位が決定される。
(3)全国デジタルマッピングと流域再生シナリオ分析
デジタルマッピングでは,生息地評価モデルから計算された個々の種の生息地適性指数(HIS;Habitat Suitability Index)を全国の評価地点に拡大し,潜在的な自然再生可能地域をより広範囲から絞り込む。また過去と現在との比較を行うために,入力条件として過去の環境属性をデータベースから導入し過去の潜在生息地を描きこれと現状との差を抽出することによって,生息地の空間的変化と生息条件の劣化要因を特定する。
 最終段階のシナリオ分析においては,生態系の再生を行う「対象種」と「再生可能な地域(流域)」を全国の生息地ポテンシャルマップを基に選定し,その候補地域における採択可能な自然再生シナリオをモデル条件として与え, HSIを個別に提示する。

今年度の研究概要

H26年度以降は水温変動シミュレーションにおいて現状の解析を継続する。特にモデルに関して流域全体を対象とするなど空間的な拡大を進める予定である。具体的には水温変動モデルについて改良を加え,1次元水文モデルと熱収支モデルを組み合わせ、流域全体での河川水温の変換変動を再現する。また継続中の水温データの長期モニタリングについては今年度も解析と並行して行い、最長で4年以上の連続データの取得を目指す。また研究成果については順次成果に応じて、口頭発表・誌上発表を目指す方向である。生物生息情報の整理の面では専門家らによる聞き取りに加え、水産業関連機関等からも情報を収集し、特に経年的な定量性のあるデータの入手を行う。
 特に今後の推進方策としては、流域の土地利用条件により生態系サービスを高められる形での変化シナリオを与え、それらを基にしたモデルの再計算を行い、水環境にどのような変化が現れるのかを予測する予定である。

関連する研究課題

課題代表者

亀山 哲

  • 生物多様性領域
    生態系機能評価研究室
  • 主幹研究員
  • 農学博士
  • 生物学,情報学,農学
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