- 予算区分
- CD 文科-科研費
- 研究課題コード
- 1114AQ001
- 開始/終了年度
- 2011~2015年
- キーワード(日本語)
- 絶滅危惧植物,外来植物,交雑
- キーワード(英語)
- Endangered plant, Alien plants, hybridization
研究概要
外来侵入種の在来種や在来生態系への影響は、生物多様性保全の観点から深刻な問題となっている。外来侵入種と在来種の間に十分な生殖的隔離がない場合、両者間で交雑が繰り返し起こることによって、在来種の遺伝子プールが汚染される可能性がある。雑草性のタデ科ギシギシ属では、ヨーロッパ原産のエゾノギシギシやナガバギシギシが在来のギシギシ属植物との間で繰り返し交雑を起こしていると推察される。本研究では、外来侵入種による、在来種の遺伝子プールの汚染がどれくらい進行しているかを明らかにし、外来侵入種から在来種を遺伝汚染から守るための方策を考案することを目的とする。広域に分布する雑草性植物を材料として扱うことによって、単に外来侵入種における在来種の遺伝子汚染のメカニズムを解明するにとどまらず、より普遍性の高い対策指針の提言を目指す。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:
全体計画
1.交雑パターンの解析
本研究の材料である在来2種と外来2種は倍数性が異なっており、交雑個体は親の組み合わせの間の染色体数を持つことになる。プロイディアナライザーを用いて交雑集団の個体の倍数性について推定し、集団の構成を明らかにする。これにより、ある個体が交雑由来であることやF1個体であること(両親種間のほぼ中央のゲノムサイズを示す場合)について大まかに推定することができる。さらに、マイクロサテライトマーカーによる遺伝解析により、戻し交雑やF2以降の交雑など交雑個体の由来を明らかにする。
2. 生育環境の違いの定量化と季節的消長の解析
対象種間では生育環境の選好性にそれぞれ違いがあると推測されている。対象4種の典型的な集団と交雑集団の、光環境、水分環境、温度環境を解析し、混生と交雑を助長している環境要因を明らかにする。また、交雑が起こるためには、開花が同時に起こらなければならない。各種の典型的な集団と交雑集団について、各個体の季節消長を追跡調査し、開花季節消長の種間差と個体差を明らかにすることで、交雑の潜在的危険性を評価する。
3. 交雑個体の適応度に関する解析
交雑によって生じた雑種個体の適応度は、交雑集団の遺伝子プールの構成に大きな影響を与える。そこで、受精、結実、発芽、生長、開花の各生育段階について、交雑個体と両親種個体の適応度の違いを比較する。この結果は、雑種個体の侵略性やリスク評価のシミュレーションに用いる.
今年度の研究概要
在来種・外来種・雑種では、生育する微環境によって適応度が異なり、そのために出現頻度の差が生じる可能性が高い。光・土壌水分・攪乱頻度の異なる野外条件で、遺伝解析に基づいて種の判別を行い、環境条件と出現頻度の関係を明らかにする。
外部との連携
研究代表者:牧雅之(東北大学)、研究分担者:藤井伸二(人間環境大学)、酒井聡樹(東北大学)
備考
本課題は2011年度までは経常研究として行った。2012年度より科学研究費により実施する。
- 関連する研究課題
- 0 : 生物・生態系環境研究分野における研究課題
課題代表者
石濱 史子
- 生物多様性領域
生物多様性評価・予測研究室 - 主幹研究員
- 博士(学術)
- 生物学