海洋混合層における乱流パラメタリゼーションと粒子状物質の動態（平成 26年度）
Turbulence and suspended particulate matter dynamics in the ocean boundary layers

研究概要

「Large Eddy Simulation (LES) モデルを用いた高解像度数値シミュレーション」を様々な大気外力条件や背景潮汐流条件下で実施し、乱流強度の現場観測と組み合わせることで「高解像度乱流データベース」を作成する。得られた情報をリファレンスとして海洋表層・海底混合層における流速場や密度場の鉛直混合過程、および、粒子状物質の鉛直拡散、沈降過程に関する既存の乱流パラメタリゼーション手法を抜本的に検証・改良するとともに、改良した手法を海洋の広域数値モデルに組み込み、その性能を確認する。

研究の性格

• 主たるもの：基礎科学研究
• 従たるもの：応用科学研究

全体計画

(1) Large Eddy Simulation (LES) モデルを用いて海洋表層および海底混合層応答の詳細な高解像度数値実験を行うとともに、その手法の妥当性を東シナ海や東京湾における乱流強度の現場観測との比較を通じて検証する。このようにして有効性を確認したLES実験の結果に基づき、「微視的」観点まで踏み込んで海洋物理場（流速場・密度場）の鉛直混合強度に関する既存の乱流パラメタリゼーション手法の検証・改良を行う。(2) LES実験から得られた時々刻々の流速、密度場の情報、および、海洋における植物プランクトンや粒子状有機物の文献値の情報を用いて粒子追跡の数値実験を実施し、粒子状物質の鉛直拡散・沈降過程に関する既存の乱流パラメタリゼーション手法の検証・改良を行う。 (3) 改良した乱流パラメタリゼーション手法を組み込んだ海洋環境の広域数値シミュレーションを実施し、その性能を確認する。

今年度の研究概要

LESモデルを用いて、海洋表層および海底混合層の発達に関する、海洋広域モデルよりはるかに細かい格子解像度を用いた数値実験を実施する。河川水や潮汐流の影響が顕著な沿岸域の表層・海底混合層過程に関するLES実験の有効性検証のため、東シナ海や東京湾における乱流エネルギー消散率や温度擾乱消散率の現場観測結果と該当海域を想定したLES実験結果とを比較する。LES実験の有効性を確認した後には、台風の通過や潮汐流の変動など様々な海況を想定した数値実験を重ね、得られた結果に基づき、流速・密度場の平均値のような「巨視的」観点のみならず、乱流エネルギー、乱流長さスケールなどの「微視的」観点まで踏み込んで海洋表層・海底混合層における流速場・密度場に関する既存の乱流パラメタリゼーションの検証・改良を行う。