- 予算区分
- CD 文科-科研費
- 研究課題コード
- 1315CD017
- 開始/終了年度
- 2013~2015年
- キーワード(日本語)
- スマイルス,衛星観測,オゾン,化学輸送モデル,中層大気科学
- キーワード(英語)
- SMILES, satellite observation, ozone, Chemical Transport Model, Middle Atmosphere Science
研究概要
超伝導サブミリ波リム放射サウンダ(Superconducting Sub-millimeter-Wave Limb-Emission Sounder:SMILES)は,2009 年9 月,国際宇宙ステーションの日本実験モジュール「きぼう」の暴露部に設置され,約半年間ではあったが成層圏〜中間圏(中層大気)の超高感度大気観測をおこなった.こ
こではSMILES データと化学輸送モデル出力との整合性を詳細に検討することによってSMILES データ処理システムの持つ不確定性を明らかにし,微量成分データのさらなる精緻化を目指す.同時にモデルの持つ不確定性に対してSMILES データからも適切にフィードバックしモデルの性能向上につなげる.このようにして得た高精度なデータにもとづいてオゾン変動の要因を明らかにし,さらには地球大気質変動をもたらす詳細な化学プロセスの解明を目指す.
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:技術開発・評価
全体計画
本研究を実施するためは,大きく分けて次の3つの作業をおこなう.
1. SMILESデータと化学輸送モデル結果との比較・検討
2. SMILESデータ処理システムにおける不確定要素の把握とその改訂
3. 化学輸送モデルの持つ不確定要素の把握とその改訂
この研究で用いるSMILESデータは,取得後約3年を経て既に一般的なデータ利用に供するレベルにはあり,宇宙航空研究開発機構(JAXA)からも公開されている.しかしながら,SMILESが測定したおおもとの高精度大気分光データの実力はまだ十分には生かされていないと考えられる.比較・検討の対象として用いる化学輸送モデルとしては,国立環境研究所のMIROC3.2化学気候モデルおよびNCAR(米国大気科学研究センター)が提供するWACCM (Whole-Atmosphere Community Climate Model)大気化学モデルである.これらも,必ずしも完全な数値モデルではないが,物理・化学過程のかなりの部分について内的な整合性を持った大気状態を表現していると考えられる.SMILESデータをこれら化学輸送モデルの出力結果と詳細に比較・検討をおこなうのが最初の1. のステップである.その際特に,SMILESが太陽非同期軌道上から観測するため微量成分分布の日変化成分を捉えることができるという長所を生かして,相違点・問題点をより明瞭にすることができ,それらの要因を推論することが容易になる.このようにして抽出された問題点をSMILESのデータ処理システムあるいは化学気候モデル
の不確定要素として探索・把握し,その仮説をSMILESデータ処理システムあるいは化学輸送モデルに取り込むことによってそれぞれの改訂作業をおこなう(それがそれぞれ2. と3. に対応する).その結果を再度1. に戻って比較・検討する.この作業を繰り返すことによって,SMILESの測定から得られる微量成分データをより精緻なものとする.このようにして得られたデータにもとづいて,オゾン層変動の要因あるいは地球大気質変動のプロセスについて解明する.
今年度の研究概要
SMILESによる大気微量成分濃度の観測値との比較によって前年度抽出された化学輸送モデルの不具合(63km以上の高度でのオゾン濃度の日変動の振幅の過大評価等)を、解決すべくモデルの改良を行う。また、日食による中間圏のオゾン濃度の変動メカニズムについて、SMILES観測とボックス化学モデルの結果の解析を行う。
外部との連携
課題代表者:塩谷雅人(京都大学生存圏研究所・教授)、研究分担者:鈴木睦(独立行政法人宇宙航空研究開発機構・上席研究員)、尾関博之(東邦大学理学部・教授)、眞子直弘(千葉大学環境リモートセンシング研究センター・特任助教)
- 関連する研究課題
課題代表者
秋吉 英治
- 地球システム領域
気候モデリング・解析研究室 - シニア研究員
- 博士 (理学)
- 物理学,地学,コンピュータ科学