- 予算区分
- LA 共同研究
- 研究課題コード
- 1116LA001
- 開始/終了年度
- 2011~2016年
- キーワード(日本語)
- 全球大気海洋結合モデル,北極気候再現性評価,北極気候変動メカニズム解明
- キーワード(英語)
- coupled general circulation model, validations of Arctic climate reproducibility, mechanism analysis of Arctic climate change
研究概要
北極での諸現象は北極域だけでなく、日本域や全球にも少なからぬ影響を及ぼしている。北極気候の温暖化に対する感度は高いと考えられ、温暖化に伴うと思われる長期変化も顕在化しつつある。近年では、気候モデルによる予測を上回る勢いで進行する海氷減少にともない、北極海航路の実現可能性が政治的・経済的にも注目されており、北極気候の将来予測、とりわけ近未来予測に対する需要が高まっている。このような将来予測には数値気候モデルが有効であるが、既存の気候モデルにおける北極の現在気候(気候値や季節変化)や年々〜十年規模の気候変動の変動特性、古環境や温暖化をはじめとする長期変化などの再現性については、必ずしも十分に調べられていない。また、北極気候の将来予測における信頼性を向上させるためには、気候モデルの高度化・精緻化が不可欠である。一方で、北極領域モデルの需要も高まっていると考えられるが、領域モデルを有効活用するためにも、その境界条件としての全球モデルの信頼性を向上させることが重要となる。
以上のことから、本研究では、現行の気候モデルによる北極気候再現性の検証、北極における気候変動・長期気候変化の原因特定・メカニズム解明、北極において重要となる要素モデルの開発・改良、さまざまな感度実験などを通して、全球気候モデルを高度化・精緻化し、同モデルにおける北極気候の信頼性向上に資するとともに、北極域における温暖化増幅メカニズムの解明、全球の気候変動及び将来予測における北極域の役割の解明といった戦略目標の達成に貢献する。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:
全体計画
本研究課題では、(1)現行の気候モデルによる北極気候再現性の検証、(2)北極における気候変動・長期気候変化の原因特定・メカニズム解明、(3)北極において重要となる要素モデルの開発・改良を通して、全球気候モデルを高度化・精緻化し、同モデルにおける北極気候の信頼性向上に資するとともに、全球の気候変動及び将来予測における北極域の役割を解明することを目的とする。北極気候再現性評価においては、世界各国の気候モデルによる既存のシミュレーション結果を北極域データアーカイブのさまざまな観測データと比較解析し、北極域における現在気候(気候値や季節変化)や年々〜十年規模の気候変動の変動特性、温暖化などの長期気候変化傾向の再現性を評価するとともに、モデルバイアスの要因特定およびその解消に資する。北極気候変動・変化のメカニズム解明においては、既存の過去再現実験や温暖化予測実験だけでなく、さまざまな感度実験なども行い、20世紀の温暖化や近年の海氷急減、過去の気候や氷床変化など北極における気候変動・長期気候変化の原因特定・メカニズム解明に関する研究を実施するとともに、北極域における温暖化増幅メカニズムの解明を目指す。要素モデルの開発・改良においては、北極気候再現性評価や北極気候変動・変化のメカニズム解明で得られた結果や、他課題における最新の観測結果などを参考にしつつ、海氷や積雪をはじめとする北極域において重要となる各種要素モデルの開発・改良を進めるとともに、氷床・氷河など未結合コンポーネントの追加やパラメタリゼーションの差し替えなども含めたさまざまな感度実験を行い、全球気候モデルを高度化・精緻化するとともに、同モデルにおける北極気候の信頼性向上を目指す。
今年度の研究概要
北極気候再現性評価においては、さまざまな観測・衛星・再解析データを用いて、気候モデルシミュレーションにおける基本的な気候変数の現在気候や季節変化、長期気候変動・変化の再現性評価を継続する。また、検証データとしての観測・解析プロダクトの妥当性や気候湿潤度などの新指標を用いた再現性評価についても継続して検討する。北極気候変動・変化のメカニズム解明においては、北極域温暖化増幅メカニズムに関する各種感度実験などを継続して実施するとともに、現在気候のバイアス評価結果も参考にしながら、気候フィードバックを中心とした解析を進める。要素モデルの開発・改良においては、国内の主要な全球大気海洋結合モデル(CGCM)の要素モデルを取り出したオフライン実験や、より詳細なプロセスモデルによる感度実験なども行いながら開発・改良を進める。また、雪氷・陸域・海洋等に関する観測的研究で用いられる詳細なプロセスモデルによる研究成果も参照して、CGCMの開発・改良の方法を検討する。国立環境研究所では、20世紀後半から現在までの気候値や季節変化、自然気候変動、長期トレンドについて、様々な観点からのモデル再現性評価を継続して実施する。特に、気温や降水量、海氷、積雪などの基本的な気候変数についてバイアスを評価するとともに、その原因についての検討を継続する。また、大陸上や北極海氷域での北極域温暖化増幅メカニズムに着目し、既存の長期数値シミュレーション結果を多角的に解析する。
外部との連携
研究代表者:野沢徹(岡山大学)、共同研究機関:情報・システム研究機構国立極地研究所、東京大学大気海洋研究所、海洋研究開発機構地球環境変動領域、気象庁気象研究所、岡山大学大学院自然科学研究科
備考
研究代表者:野沢徹(岡山大学)
共同研究機関:情報・システム研究機構国立極地研究所、東京大学大気海洋研究所、海洋研究開発機構地球環境変動領域、気象庁気象研究所、岡山大学大学院自然科学研究科
本研究は大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立極地研究所が文部科学省から受託したグリーン・ネットワーク・オブ・エクセレンス(GRENE)事業北極気候変動分野「急変する北極気候システム及び、その全球的な影響の総合的解明」の研究課題公募に応募し採択された研究課題である。