ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

温暖化予測に関わる北極域土壌圏の炭素収支の時空間変動(平成 25年度)
Time-Spacial variations of carbon budget of Arctic terrestrial system under globar warming climate

予算区分
BA 環境-推進費(委託費) I-1004
研究課題コード
1315BA008
開始/終了年度
2013~2015年
キーワード(日本語)
北極,永久凍土,土壌炭素,陸域生態系
キーワード(英語)
arctic, permafrost, soil carbon, terrestrial ecosystem

研究概要

温暖化を加速する正のフィードバック効果を持つ北極圏の土壌有機物分解の見積もりは、気候モデルによる温暖化予測を大きく左右する。本研究計画では、北極圏の土壌有機炭素分解を、中・長期的に予測するモデルの開発に必要な観測を行う。地上観測では、北緯60〜75°にわたる、アラスカの北方森林からツンドラの生態系に、調査区を設置する。北方森林とツンドラで、原野・森林火災を受けた調査区や最終氷期に堆積した化石炭素の露出する調査区も設置する。それぞれの調査区で、土壌呼吸速度、メタン放出速度、環境因子(地温・水分量)、土壌物理・化学特性の測定を行う。また、夏期融解層および永久凍土の深度別に、土壌有機炭素の分解基質を特定し、それぞれの基質について、炭素14年代測定を行い、有機炭素の平均滞留時間を評価する。観測による知見に基づいて、北極域土壌の組成(平均滞留時間や環境応答が異なる成分へのコンパートメント化)や、土壌有機物分解の温度・水分・化学組成への応答に関する新しいパラメタリゼーションを提案する。これらを空間的な熱・水の流れの中での生態系土壌有機物分解のモデルへ導入する。土壌有機物分解の観点から区分される生態系のそれぞれについて、モデル計算を行う。リモートセンシングによる生態系区分と合わせて、北極圏陸域全体の土壌有機物分解の時空間変動をモデル化する。この、観測とリモートセンシングに基づくモデルは、気候モデルの温暖化予測の主要部分となり、温暖化予測や、さらには、地球規模の環境保全対策、食料、水資源確保のための基礎となる。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備

全体計画

北極圏は、温暖化を含め気候変動の影響を地球上で最も強く受ける地域として広く認識されている。特に温暖化を増幅する正のフィードバック効果として、雪氷アルベドフィードバックと陸域生態系のフィードバックが知られている。北極圏の土壌中の有機炭素量は、地球全体の土壌のそれの半分を占めている。土壌有機物分解は、温度に対し指数関数的に増加するが、他の環境条件の影響も受ける。植物の光合成の増加は、土壌有機炭素の蓄積につながる。温暖化は永久凍土の融解や原野森林火災の増大ももたらす。これらは土壌有機物分解を促す。積雪の減少、土壌の乾燥化、ツンドラでの灌木の増加といった変化に対しても、土壌有機物分解は影響を受ける。気候モデル間相互比較プロジェクトでは、土壌有機物分解の環境変化への応答が不確かなため、温暖化予測が不確かになっている。
 本研究計画では、アラスカの北方森林帯からツンドラ帯を対象として、異なる生態系ごとに、分解基質の構成の同定と炭素同位体による土壌有機物分解の時系列解析を行うとともに、リモートセンシングによる土壌有機物分解の観点からの広域生態系区分を行い、これらを生態系炭素循環モデルと結合することにより、温暖化予測に関わる北極域土壌圏の炭素収支の時空間変動を解明することを目的とする。

今年度の研究概要

北緯60〜75°にわたる、アラスカの北方森林からツンドラの生態系において調査区を設置し、夏期融解層および永久凍土の深度別に、土壌有機炭素の分解基質を特定するための試料採取を実施する。炭素14年代測定を行い、有機炭素の平均滞留時間を評価するための、分析を実施する。

外部との連携

共同研究機関:日本大学、広島大学、アラスカ大学、農業環境技術研究所、筑波大学、国立極地研究所、兵庫県立大学、北海道大学

課題代表者

内田 昌男

  • 地球システム領域
    物質循環観測研究室
  • 主幹研究員
  • 博士(農学)
  • 化学,地学,理学
portrait

担当者