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酸化ストレスを誘導する遺伝毒性物質の低用量における量反応関係の解析(平成 25年度)
Low dose-response analysis of oxidative stress inducing genotoxic substance

予算区分
KZ その他公募
研究課題コード
1213KZ002
開始/終了年度
2012~2013年
キーワード(日本語)
発がん性,閾値,遺伝毒性物質,酸化ストレス,リスク評価
キーワード(英語)
carcinogenesis, threshold, genotoxic substance, oxidative stress, risk assessment

研究概要

臭素酸カリウム等の酸化ストレスを誘導する化学物質をモデル化合物として用い、弱い遺伝毒性発がん物質の低用量での「用量−発がん率」の量反応関係、および「用量と標的臓器で発生する突然変異」の量反応関係から実質的閾値の有無を解析する。さらに、酸化DNA損傷の代表である8-oxoGの生成や除去・修復に関与する遺伝子のノックアウト・マウスやヒト培養細胞を用い、閾値の形成機序の解明を目指す。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:行政支援調査・研究

全体計画

本研究では、8-oxoG生成量を規定あるいはその影響を減弱する代表的な因子(Nrf2, Mutyh, Pol zeta)の機能欠損条件下で、低用量での想定される発がん性や突然変異発生の感受性を増大させて実質的閾値形成とその機序を解析する。具体的には、ノックアウトマウスで臭素酸カリウム等の酸化ストレス誘導剤の投与により高頻度に誘発される消化管の腫瘍が、どのくらいの低用量域まで検出され、野生型マウスに比べて腫瘍発生の実質的閾値がどの程度低下するかを明らかにする。さらに、ノックアウトマウスから作出したin vivo試験系を用いて、実質的閾値あるいはそれ以下の用量で誘発された突然変異のスペクトラム等を詳細に解析する。また、ラットの場合と異なり、マウスで腎臓腫瘍の発生を示す知見は少ないが、本研究では、腎臓の突然変異頻度の解析と病理学的変化の観察を実施し、標的臓器としてマウスの腎臓を用いて閾値の有無を解析できるかどうかを検討する。また、Pol zeta遺伝子の機能変異細胞を用いて、酸化ストレスを誘導する化学物質に対して感受性がどの程度増大するか明らかにする。

今年度の研究概要

小腸や腎臓を標的臓器とした発がんや突然変異頻度をエンドポイントとしたとき、Nrf2の欠損により臭素酸カリウムへの感受性がどの程度増加するか、さらに、発がんの閾値がどの程度低下するかを明らかにしていく。
 Mutyh遺伝子欠損マウスへのこれまでの投与実験で消化管腫瘍の発生を認めていない0.05%を含め、0.1%、0.15%および0.2%の臭素酸カリウム飲水投与に関して、それぞれの用量についてのマウス個体(♂、♀それぞれ約10匹)での発がん実験で得られた結果を踏まえて、Mutyh遺伝子欠損マウスにおける酸化ストレス誘発の突然変異の解析を行う。
 DNAポリメラーゼζのDNA合成活性が減弱したD2781N細胞、DNA複製の忠実度が低下したL2618M細胞、および野生型ヒト細胞の3細胞を用いて、重クロム酸誘発突然変異の用量効果曲線を広い用量域において比較し、酸化損傷に基づく遺伝毒性(突然変異、小核、姉妹染色分体交換(SCE))誘発の閾値形成におけるDNAポリメラーゼζの役割について検討する。
 これらを総合して、酸化ストレスを誘導する弱い遺伝毒性発がん物質の低用量での「用量−発がん率」の量反応関係、および「用量と標的臓器で発生する突然変異」等発がんを規定する要因の量反応関係から実質的閾値の有無を解析する。

外部との連携

九州大学と国立医薬品食品衛生研究所との共同研究

課題代表者

青木 康展