- 予算区分
- BA 環境-推進費(委託費) 2-1303
- 研究課題コード
- 1315BA005
- 開始/終了年度
- 2013~2015年
- キーワード(日本語)
- 環境変動,気候変動,オゾン層,フロン対策,地球温暖化
- キーワード(英語)
- environment change, climate change, ozone layer, CFC regulation, global warming
研究概要
本研究は、IPCCの温暖化予測モデルをベースにした最新の化学気候モデルの開発と精緻化を行い、今後予想されるオゾン層破壊物質および温室効果ガス濃度の組み合わせを複数組想定して温暖化が進行する中でのオゾン層の変動予測計算を行い、極端なオゾン破壊を回避しつつオゾン層の安定化を着実に進めるための対策立案にとって必要な科学的知見を提供するものである。
北極域のオゾン破壊量はその年々変動が激しく、同じ実験設定に対して異なる化学モデル間で結果のばらつきも大きく、北極域で時々起こる極端なオゾン破壊に対して信頼性のある予測ができない状況にある。これを改善するため、気候特性の異なる複数モデルによって、複数のオゾン層破壊物質濃度と温室効果ガス濃度の組み合わせを想定し数十年程度の定常計算を行う。また、オゾン破壊に重要な成層圏大気の脱窒に関係する極成層圏雲のパラメータに関する感度実験も行う。これによって、北極オゾン層破壊の年々変動幅および2011年春季に観測されたような深刻な北極オゾン層破壊の発生頻度について、統計的有意性を考慮して評価する。また、オゾン破壊の年々変動の原因となる気象要素の年々変動に関する詳細な解析、ODS放出削減による放射強制力変化の評価を行う。想定したODS・GHG濃度の組み合わせのそれぞれについて、結果のモデル依存性や極成層圏雲パラメータ依存性を考慮した総合的な評価を行う。
具体的な達成目標は、以下のとおりである。
(1)今後10〜20年の北極オゾン層破壊の年々変動幅の評価
(2)2011年の春季に観測されたような深刻な北極オゾン層破壊の発生頻度の評価
(3)オゾン破壊の年々変動の原因となる気象要素の年々変動とODS濃度、GHG濃度、オゾン破壊の大きさとの関係
(4)今後期待されるODS放出抑制による放射強制力の変化の評価
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:行政支援調査・研究
全体計画
2013年度:
CCSR/NIES化学気候モデルを使った、複数個のODS濃度レベルとGHG濃度レベルの組み合わせによる計算を行う。また、極成層圏雲に関するパラメータを変化させた感度実験も同時に行う。さらに、IPCC-AR5の温暖化予測で使われたMIROC3.2モデルをベースにした新化学気候モデルの開発を行う。
2014年度:
MIROC3.2化学気候モデルによる複数個のODS濃度レベルとGHG濃度レベルの組み合わせによる計算を行う。結果を解析し、CCSR/NIES化学気候モデルによる結果との比較を行い、結果のモデル依存性について考察する。また、IPCC-AR5で使われたMIROC5モデルをベースにした化学気候モデルの開発を行う。
2015年度:
MIROC5化学気候モデルによる複数個のODS濃度レベルとGHG濃度レベルの組み合わせによる計算を行う。結果を解析し、CCSR/NIES化学気候モデルや、MIROC3.2化学気候モデルによる結果との比較を行う。気候特性の異なる3つの化学モデルによる結果を総合して、今後10〜20年の間に北極域や北半球中緯度域で極端なオゾン破壊の起こる可能性について検討する。
今年度の研究概要
(1)CCSR/NIES化学気候モデルを使った、複数個のODS濃度レベルとGHG濃度レベルの組み合わせによる計算を行う。
(2)さらに極成層圏雲パラメータを変化させた実験を行う。
(3)の実験結果から以下の項目の解析を行う。
1)北極オゾン層破壊の年々変動幅
2)2011年の春季に観測されたような深刻な北極オゾン層破壊の発生頻度
3)オゾン破壊の年々変動の原因となる気象要素の年々変動とオゾン破壊との関係
4)今後期待されるODS濃度低下による放射強制力の変化
5)成層圏オゾン層変動の対流圏オゾン量への影響
6)成層圏オゾン層変動の対流圏気候への影響
7)地表紫外線への影響
(4)IPCC-AR4およびAR5の温暖化予測で使われたMIROC3.2モデルをベースにした新化学気候モデルの開発を行う。
- 関連する研究課題
課題代表者
秋吉 英治
- 地球システム領域
気候モデリング・解析研究室 - シニア研究員
- 博士 (理学)
- 物理学,地学,コンピュータ科学
担当者
-
今村 隆史